わたしは天然素材が好きです。
繊細な感覚を持ちあわせている植物は、環境の変化に柔軟に対応して生存することができます。力強いエネルギーを持っているからです。植物染料はその気配を含んでいます。わたしは染めるという行為は、それらを布に写し封じ込めることだと思っています。自然のうつろい変わっていく世界を、素材の肌触りや色彩で感じていただけたらうれしいです。
道具は伝統的な銅製のチャンティンを使っています。ロウが出る筒の先端部分に切れ目を入れ、定期的にきちんと手入れした物を使用することで、安定した美しい線を描くことができます。ロウの温度管理もまた、季節に応じて一定の温度に保ちながら描かなくてはなりません。これは機械のそれよりもっと繊細な感覚が求められます。苦行かも…と思ってしまうほど気を遣う作業の連続です。疲れるけれど、でもやっぱりやめられない。現代では時短をとかく言われますが、時代に逆行したこのジャワ更紗のゆったりとした時間の流れがわたしは好きです。更紗を描くことは人が生物としての本来のリズムを取り戻す、お手伝いをしてくれているように感じます。精神鍛錬の一つとしてリラックスすること、自分と向き合う時間、それら全てがBatikの魅力なのだと思います。
*写真はロウ描きの道具チャンティンの一部品。