巣

実在するモノを模倣しながら人は知恵をつけてきたのですが、実在そのものにはかなわないです。クモの巣一つとっても通り過ぎてしまうにはもったいない。そんな当たり前のものに、少しこだわって、立ち止まってみたいのです。 葉脈とクモの巣。とらえられているのは私たちなのに。 制作はレジン（ポリエステル樹脂・2液性）によるもの。ＦＲＰ(強化樹脂)）研ぎ出し技法特許取得（119591号） 手づくり、一品制作。 春先のクモの巣は小さいものです。クモが大きく育っていないからなのでしょう。子どものクモが精いっぱい頑張って作っている巣はまだ小さくて、編み目も細かい。大きな虫が来たらすぐに壊れてしまう。まあ、そんな大きな獲物が来て小さなクモの餌にはならないけれど。朝、クモが巣を張り始めたころの出来立てほやほやを採取します。クモの巣学会が巣の標本を採るには白いスプレーを吹きかけ、黒い紙でそっと引っ付けるのだそうです。 この作品の巣はもう少し手が込んでいますが、基本同様な方法によって採取します。10回試みて、キレイに取れるのは2回～3回。クモには逃げてもらって、次の日は餌をあげて元気になってもらいます。 夏に向かってだんだん成長し、大きく育つクモの作る巣は立派で、大きくなります。その巣をどのように貸してもらうか思案中です。 葉脈はケヤキや楠の木で、うまく採取できるのは葉っぱが肉厚なツバキやヒイラギです。中学校の理科の授業でも経験していると思いますが、台所のパイプ洗浄液を湯煎して煮だしていきます。根気の勝負。葉脈だけ取り出せたら塩素水で脱色します。 クモの巣と葉脈…その細かい造形に驚きます。