わたしはこの小さなサーカス団の看板踊り子だ。
かすかな記憶の中に生きる麗しい母のすみれ色の瞳と、優しい父の栗色のくせ毛のおかげでわたしはすっかり美しい。
それだけが取り柄だと思わされるには、十二分の環境に今はいる。
見た目の美しさにだけ囚われて、本質を見つめようとする人はいない。
それでもわたしは、どうしても人を魅了してしまう魔の力のようなものを携えている。
今晩もきっと、観客はたくさんのチップを懐から惜しげもなく出して帰るのだろう。
生きることには一切困らないのに、ここにいること以外、自由はない。
でもわたしには行くところがない。
かといってどこかに行きたいわけでもない。
自由なんて求めたって、その自由が無限だとは限らない。
物心ついた頃から報われない人生だったから、
今更自由さなんてあってもむしろ窮屈さを味わされるだけだと、自分に言い聞かせている。
だから今夜も悠々とステージで踊って、人の目を釘付けにするしかないのだ。
きっとわたしは幸せ。
こんなにも恵まれているのに、どうして毎晩美しく泣いてしまうのだろう。
================================
🎩 制作したきっかけ
この作品を作るきっかけとなったのは、とある刺繍作品との出会です。
そのアーティストは主に人物や背景を取り扱っていましたが、驚いたのはその緻密さと再現性の高さでした。
まるで絵画のような刺繍作品に、わたしの心は震えたのです。
かねてより、自分の頭の中にある世界観をより精巧に表現したく、様々な方法とジャンルで試みましたが、どれにも限界がありました。
多色な糸でグラデーションを成して影を作り出す、2Dとは思えない立体感のある刺繍。
こんな細かい技法で作り進んでいく刺繍でなら、わたしのアートをより詳細に表現できるのではないかと思い制作に至りました。
何度も何度も試作を重ねて完成させることができた、幾年越しの珠玉の一品です。
🎩 なぜサーカスなの?
実は2年前より考案したデザインなのですが、もとはハロウィーンに向けてのリリースを目指していた為、奇々怪々なものにフォーカスを当てていました。
風変わりで非日常で、すこしこわい。
なによりも多彩なストーリーを持っていそうな界隈はどこかと模索したところ、このサーカス団というテーマに辿り着きました。
🎩さいごに
本作品では、幸の薄いかわいそうな主人公を描きましたが、ブローチの上の瞳は存外強く光っています。
落涙してもなお、なにかを伝えたいことがあるに違いありません。
心と耳を澄ませて。
目の裏が黒く揺れて、空気が流れる音が聞こえたら、あなたの耳がなにかを捉えるかもしれません。
怖がらないで、きっとそれは自由とぬくもりを求める彼女の呼び掛けでしょうから。
わたしはこの小さなサーカス団の看板踊り子だ。
かすかな記憶の中に生きる麗しい母のすみれ色の瞳と、優しい父の栗色のくせ毛のおかげでわたしはすっかり美しい。
それだけが取り柄だと思わされるには、十二分の環境に今はいる。
見た目の美しさにだけ囚われて、本質を見つめようとする人はいない。
それでもわたしは、どうしても人を魅了してしまう魔の力のようなものを携えている。
今晩もきっと、観客はたくさんのチップを懐から惜しげもなく出して帰るのだろう。
生きることには一切困らないのに、ここにいること以外、自由はない。
でもわたしには行くところがない。
かといってどこかに行きたいわけでもない。
自由なんて求めたって、その自由が無限だとは限らない。
物心ついた頃から報われない人生だったから、
今更自由さなんてあってもむしろ窮屈さを味わされるだけだと、自分に言い聞かせている。
だから今夜も悠々とステージで踊って、人の目を釘付けにするしかないのだ。
きっとわたしは幸せ。
こんなにも恵まれているのに、どうして毎晩美しく泣いてしまうのだろう。
================================
🎩 制作したきっかけ
この作品を作るきっかけとなったのは、とある刺繍作品との出会です。
そのアーティストは主に人物や背景を取り扱っていましたが、驚いたのはその緻密さと再現性の高さでした。
まるで絵画のような刺繍作品に、わたしの心は震えたのです。
かねてより、自分の頭の中にある世界観をより精巧に表現したく、様々な方法とジャンルで試みましたが、どれにも限界がありました。
多色な糸でグラデーションを成して影を作り出す、2Dとは思えない立体感のある刺繍。
こんな細かい技法で作り進んでいく刺繍でなら、わたしのアートをより詳細に表現できるのではないかと思い制作に至りました。
何度も何度も試作を重ねて完成させることができた、幾年越しの珠玉の一品です。
🎩 なぜサーカスなの?
実は2年前より考案したデザインなのですが、もとはハロウィーンに向けてのリリースを目指していた為、奇々怪々なものにフォーカスを当てていました。
風変わりで非日常で、すこしこわい。
なによりも多彩なストーリーを持っていそうな界隈はどこかと模索したところ、このサーカス団というテーマに辿り着きました。
🎩さいごに
本作品では、幸の薄いかわいそうな主人公を描きましたが、ブローチの上の瞳は存外強く光っています。
落涙してもなお、なにかを伝えたいことがあるに違いありません。
心と耳を澄ませて。
目の裏が黒く揺れて、空気が流れる音が聞こえたら、あなたの耳がなにかを捉えるかもしれません。
怖がらないで、きっとそれは自由とぬくもりを求める彼女の呼び掛けでしょうから。
サイズ
縦横6.8cm
発送までの目安
5日
配送方法・送料
ネコポス
230円(追加送料:0円)
全国一律
全国一律
購入の際の注意点
ひとつひとつ丁寧に制作しておりますが、無理に力を加えたり衝撃を与えてしまいますと破損や糸の解れに繋がる可能性がございます。
予め、ご了承くださいませ。