rakupearl&amber

真珠は貝から生まれます。

日本で初めて真珠の養殖に成功したのは、御木本幸吉です。御木本幸吉はそれまで1万個に数個しか見つからない偶然の産物だった真珠養殖の可能性を信じ、実行した人です。

御木本幸吉は、江戸末期安政5年、三重県の鳥羽に生まれました。家はうどん屋を営んでおり9人兄弟の長男、幼い頃から様々な商いを経験し、その才覚を磨いていきました。

伊勢の海では海女さんたちが、稀に貝の中から見つかる真珠を大層喜び大切にしているのを見て、理論的には真珠は養殖できるはず、男が一生を懸けて成し遂げる仕事であると信じ、真珠養殖に取り組んでいきます。

実験を始めてから3年、明治26年(1893年)、初めて現在のミキモト真珠島である相島で半円真珠の養殖に成功します。そして更に円形真珠の養殖に成功するまでに12年の歳月を必要としました。

そこに至るまでの精神的、経済的な苦労は如何程だったでしょう。

現在のあこや真珠の養殖は、このようにして始まったのでした。

現在、あこや真珠の生産高は1位が愛媛県、2位が長崎県、そして真珠養殖発祥の地、三重県は第3位です。

あこや貝を稚貝から育て、成貝までするのに2年、そこから核を挿れ7ヶ月〜2年、合計3〜4年の時間をかけて、あこや真珠は出来上がります。

しかし、そうやって苦労して育てても、全てが宝飾品になれるグレードではありません。市場に出回るのは約30%、花珠と呼ばれるものは5%程度です。

養殖とはいえ海産物である真珠は、このように手間と時間をかけられてやっと陽の目を見ることになるのです。このような貴重なあこや真珠に高値が付くのは当たり前です。

デパートに行くと必ず真珠販売店に寄ります。
新しいあこやの、目も眩むような輝きのネックレスがとても美しい。あこや真珠は日本で生まれ技術を育ててきた文化だと思います。これからも大切に守っていかなければなりません。

私は伊勢の海が大好きで何百回と通ううちに、海の育む生物や自然そのものに魅せられてしまいました。特に貝類がお気に入りで収集もしています。その繋がりから、真珠好きにもなったのでした。

一方、現在の真珠業界は沢山の課題も抱えているようです。国内消費は減少し、海外からの安い淡水真珠との競争を強いられ、業者数は減り後継者は不足しています。

ただ、香港を中心とする海外向けの輸出は堅調なようで、海外でも日本のアコヤ真珠は高く評価されています。

ここで私はふと思うのです。
出生率の減少による労働人口の減少から国内での販売が縮小するのに伴い、海外での売り上げが更に伸びていく必要があるのはその通りです。
でも国内でのあこや真珠の認識や理解があまりにも低いような気がするのです。
　
アコヤといえば、冠婚葬祭。
とても高価なもので一生に一度買えば十分。
あこやのチョーカーは普段するものではないし、ましてやあこやの指輪なんて、していた日には手も洗えない。

30万円で親に買ってもらったあこやのネックレスとイヤリングのセット、イヤリングなら普段できそうかなと思うけど、なくしちゃったら困るからやっぱりやめておこう、フェイクでいいや…

あこや真珠の希少性から高値になるのは当たり前です。しかしこのデフレの時代に、何十万、何百万とするあこやを購入できる人はごく一握り、一般の若い方からはどんどんと遠い存在になっていきます。そして、本物を見る機会や身に着ける機会も減っていく…

一方、高齢化に伴い断捨離が大流行、貴金属の買取が盛んになりました。かつて女性たちの耳元を飾っていたパールイヤリングの貴金属部分だけが外され、あこやは残されていきます。

もともとは宝飾品についていたあこやで、まだまだ綺麗な状態のものも多いのです。

真珠が好きで色々集めているうちに、そのような元宝飾品パールたちに出会いました。新しいイヤリング金具につけてあげると、かつての自分の居場所を思い出したようにイキイキと輝き出しました。

最初にも書いたように、真珠は貝から生まれてきます。人間は貝の命を頂いて、この美しい真珠を手に入れているのです。一粒も無駄にしたくありません。貝殻採集では打ち上げ以外採らない私ですが、真珠に関しては貝たちに心からありがとうと伝え、その美しさを享受したいと思います。


貝の命を無駄にしたくない、あこや真珠の美しさを知ってほしいとの思いで、イヤリング等お安くお出ししています。

真珠業者でもなければ販売店に勤めたこともありません。ただの貝好き、真珠好き、真珠養殖の未来を心配している者です。　　　　　　　

リメイクあこやアクセサリーを使ってみられて、もし、真珠っていいものだなあと思われたら、宝飾店でもっとグレードの高いものを入手されても良し、反対に良いものを持っているけれど普段使うには紛失が心配、という場合にも良いかと思います。

かつてヨーロッパの貴族たちがブラックダイヤモンドの代わりにマルカジットを身につけたように…

ただし、あこやはあこや、本物です。
私が扱っているのは金属部分がWGなどの貴金属でないためにお安くなっています。

このような値段で安く出していたら本業の真珠販売店さんから叱られそうですね。趣味でやっていますので、大目に見て頂きたいところです(笑)真珠が大好きで、文化として守りたくて、先行きも心配で、でも何もできないただの真珠好きのしていることです。

真珠は炭酸カルシウムからできているため、酸…つまり汗により経年劣化します。着用後は布で拭いて紫外線が当たらないところに保管して…それでも長い年月の間に輝きが失われていくこともあるでしょう。アンティークパールの鈍い輝きも人が歳をとっていくように素敵なものだと思います。

私がどのような思いで真珠と交わっているかを皆さんにお伝えしたく、このお話を書きました。

御木本幸吉翁と全ての真珠産業に関わる皆様、私の真珠をご購入頂き思いを共有してくださった皆様に感謝します。お読み頂き、ありがとうございました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

こんにちは。主にパールと琥珀のアクセサリーを作っています。

真珠は稚貝から数年かけて育てているため、テリ、巻き、形パーフェクトなものには数10万から世には一千万以上のネックレスもございます。その一方で、あこやのバロックなどは高値を維持するためあまり出回っていません。

しかし、あこや貝は生物です。
真珠が貝の命を頂いて成り立っていることに感謝し、普段流通しない、しても宝飾品にはなれない真珠たちに命を吹き込みたいと思います。

琥珀は世界中から直接買い付けを始めました。主にバルト海の琥珀を扱います。