丸太のネコ にゃるたの旅 Story1  〜自由と想像の旅へ〜

丸太のネコ にゃるたの旅 Story1 〜自由と想像の旅へ〜

 暖かな木漏れ日の差し込む森の中、そよそよと揺れる葉達が土の上に影を踊らせています。きらきらと光が降る森の道を、ゆったりとした足取りの荷車が1台。その背中には、家を作るのに使うのか、立派な丸太が何本も積まれていました。荷台をことことと揺らしながら進む荷車は、不意にコツンと石につまずき、載っていた小さな丸太の一つが転がり落ちてしまいます。荷車は小さな丸太が一つ転がっていったことに気づかず、丸太のほうは緩やかな坂をそのまま転がっていってしまいました。  ゴロゴロと転がって、少し森が開けたところの芝の上で止まった丸太は、青い空から降り注ぐ日差しに包まれていました。そよ風が作り出すわずかな音だけの静寂の中、どこかからほたほたと歩いてくる足音が。日差しに誘われてきた1匹のネコが、ちょうどよい具合に乗れそうな丸太を見つけ、その上で丸くなると、しばしお昼寝。丸太は、日差しの暖かさと背中にぬくもりを感じながら、ひとときが過ぎていきました。  なにが乗っているんだろう? なにかやわらかい。……あ、痛! 爪研ぎしてる! 年輪に爪痕が! ネコはしばらく丸太の上でゴロゴロしたり遊んで去っていきました。丸太はなにか暖かな感覚に包まれたまま、日が暮れて、夜が過ぎ、朝を迎えていました。  ふと気づくと、丸太は目が覚めていました。……おや? 景色が。耳を澄ませると、葉の音が聞こえ、枝でできた足や尻尾もはえています。さっきまで丸太だったような気もするけど、どうだったかな? こんなふうなものに憧れて、こうなったのかもしれないし、たまたまこうなったのかな? まあ、いいか。今は、こういう形をしているんだね。  丸太は何歩か歩き、蝶が舞っているのを見たり、花の香りを嗅いだり、日差しの眩しさやぬくもりを感じて、額になにやら爪痕を感じたり、それらを感じられるようになった今の自分は、なによりも大事なものなのだと実感しました。  そして、野原を走ったり、川に浮かんだり、日向でゴロゴロしたりしているうちに、いろいろなことができ、様々な場所へ行けると知ったのです。そうだ……そこへ行って、そこでやりたいと思ったことをしてみよう。まずは、行ってみないことにはね。どこへ行こうか? ……よし、あっちへ!  にゃるたは、自分の心を道標に、ひとり、自由と想像の旅へと出発しました。 〜 果てしない 〜 ◇本文の無断使用等はできません。できるのは、想像と創造です◇

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