丸太のネコ にゃるたの旅 Story2  〜創るための店にて〜

丸太のネコ にゃるたの旅 Story2 〜創るための店にて〜

 旅に出たにゃるたが最初に訪れたのは、自分のいた森よりもっと深々とした緑に覆われている、森林の世界でした。地面を歩いていたかと思うと、いつの間にかうねる木の幹の上を歩いていて、橋のように伸びた枝の上を行くと、木の天辺まで登っていました。眩しい太陽が木々を鮮やかに照らしていて、緑葉の茂る枝の階段を進むと、また森の中へ。差し込む光に導かれるように進んでいくと、大きな木の幹にトンネルのような入口が。脇に小さな看板があるようでしたが、すっかり緑をかぶっていて読めません。  「これは、気になるね」  にゃるたは、幹にできたトンネルへ入り、中を進んでいきます。薄暗い中を少し歩くと、先に出口らしき光が。幹の中のトンネルを抜けると、高い木々の開けた隙間から光が降り、少し狭いその空間を暖かく包んでいました。見回すと、森の木々に棚が作られ、紙束や本の数々、珍しそうなペンが並べられています。ところどころ絵画も飾られていて、周辺の緑が額のように覆って今にも見えなくなりそうです。  「やあ、いらっしゃい」  声に振り向くと、茶色いマントを羽織ったような白い鳥が、看板を掛けたポールにとまっていました。この看板は少し読めそうです。  「こんにちは。ここはなんの店なの?」  「紙とペン、それに本や絵画も扱っているよ。いわば『創るための店』だね」  「創るための?」  「そう。今こうして私達の言葉が出てくるように、心は、思い描いた様々なものを創り出せるんだ。それを形にするための道具の一つさ。ペンと紙で文字を綴って本にしたり、線を重ねて絵画を描いたり、心が創ったものを形にしてくれるんだ。ここに飾ってある本や絵も、ここを訪れた旅人が書いたものだよ」  「すごいね。……これがあれば、ぼくもなにか創れるのかな?」  「これは創ることを手伝ってくれる物なんだ。創るのはいつも心……その心が君にもあるから、ペンや紙はそれを助けてくれるはずだよ。そして様々な世界を自分の力で創り出すことができる。色々な場所を旅していけば、ほかにも幾通りもの創るための仲間達に出会うだろうね」  鳥の店主の話を聞いて、ここへ来るまでに見て感じてきた様々なもの、感覚……自分もそんな感動を創ってみたい、心はそう言っているようでした。  「よかったら、それを持っておいき」  近くの木のテーブルに、枝で作られたペンとまっさらな紙が何枚か置かれています。  「森の木で作ったペンと、湧き水で漉いた紙だよ」  「いいの? ありがとう」  「君の想像が、新たな創造を生んで、それが私にも、次の想像を生んでくれるんだ」  にゃるたは店主から、見たこともない絵や、謎に満ちた様々な世界の話を聞き、それらを自分の心で創り出せることの素晴らしさに心を躍らせました。そして、新たな場所を旅して、自分もそれを創ってみたいと、強く感じたのです。  「そろそろ行くね。次の場所を旅して、なにかを創ってみたいんだ」  「また、いつでもおいで。次来たときには、木の位置が変わっているかもしれないけどね。……心とともに、良い旅を」  森の中の店を出たにゃるたは、ジャガ芋のようにホクホクとした気持ちで、次の旅へと向かいました。 〜 果てしない 〜 ◇本文の無断使用等はできません。できるのは、想像と創造です◇ このストーリーのモデルの作品、『紙とペンと本の店』は、以下の作品ページにて販売中です。タップして進めます。 https://minne.com/items/29165032

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