お久しぶりになってしまいました。
そろそろ「ニット」に目が向く季節に。
作品展示の順番も入れ替えてみました。
今回は「みきこばぁばのひまつぶし」のメインである「毛糸から生まれる作品・着るモノ」について、お話してみたいと思います。
1本の毛糸(複数なこともありますが)から、針を使って「編む」を繰り返します。
それは想像するより、時間を要します。
それが「めんどくさい」かというと、無心になれること、出来上がりが楽しみなこと、使うこと、使っていただけることを想いながらなのでとても「豊かな時間」だと感じています。
昭和の中期、「編み物」は女性の習い事の一つでありました。
今でいう、お教室、ワークショップみたいなものでしょうか。
祖母(母には母)が編み物教室を営んでおり、母(みきこばぁば)は小さい頃から手伝っていたそうです。
小学校の修学旅行で自作のセーターを着ていたというのですから、大したものです。
私自身、母が「編んだモノ」で大きくなりました。
お年頃な時期にはつたない絵を描いて、それを再現してもらいました。
ビーズやリボンをつけてもらったりして、かわいらしいモノが好みでした。
着て歩いていると知らない方から「手編み?」と話しかけられたり、こっそりついて来られたり、友人たちからは「私も!」とみんなおそろいになってしまったり。
仲良しグループで旅行に出かけた時は、みんな母の作品でやって来たため「ご姉妹ですか?」と旅先で聞かれたことも。
また母がケープのようなショールとおそろいのバッグを持って電車に乗っていたところ、前の座席の方がスマホで母を撮っていました。
驚きましたが、2人で笑ってしまいました。
書ききれないほど、たくさんのエピソードがあります。
さて、そんな「毛糸」に囲まれた暮らしですが、最近では着る頻度が減っています。
気候変動でしょうか、「暑い」「寒い」がハッキリ。
「肌寒い」「涼しい」そんな時期が短いようです。
また寒さを軽減する衣類の登場、有り余るほどの既製品、通販の拡大による買い物の仕方の移り変わりはわが家にも変化をもたらしました。
母の老眼の進行もあり、みきこばぁばの作品、毛糸から生み出されなくなりました。
そんな時期もあったのです。
ところが「昔に帰る」でしょうか。
母の目は医学で劇的に回復し、「世の中が明るくなった!」と読書や編み物が復活しました。
75歳にしてミシンもはじめるという暮らしに。
80代の母と50代の娘、いろいろ知恵もつき、欲しいモノも具体的になりました。
重さ、着心地、機能性、手入れ…。
重量感のあるモノは着ていて疲れることに気づきます。軽い方がいい。
肌も弱まっていくのでしょうか、着るモノに「優しさ」まで求めたくなります。
洗い物をしたり、掃除をしたりと家事がしやすいこと。これは「着続ける」ために必須だと学びました。
日常着とするために手入れが簡単であってほしい。
「一度着てすぐ洗う」をいうものではありませんが、季節の終わりには毛糸用の洗剤で手洗いや洗濯機でゆるく洗います。
この作業がめんどうに感じられる方もいらっしゃるでしょうが、「モノ」について「手入れを含む」と考えてみれば好きなモノや気に入っているモノであれば楽しいことになるのではないかと思います。
画像作品についてのエピソードを。
これは段染めのモヘア毛糸で編んだ「チュニック」のような「ベスト」のような作品です。
モヘアは「チクチクする」と感じたり、小さなお子さんを抱っこするのには不向きであったりもします。
でも軽く、あたたかい!そしてこの作品のようにきれいな色合いの糸が多く、ついつい選んでしまいます。
単色の糸を数種類使って縞状に編んだように見えると思います。
「段染め」なので1本の糸に数種類の糸が並んでいます。
2本の同じ段染め糸を同じ色がでるように糸の調子(段染めの出方)を合わせて編んでいきました。
「胸元に明るい色がくるように」等、製作者のみきこばぁばのこだわりは細部にいたります。
冬の時期、日常着として着ていただけるようなデザインとしました。
お尻やお腹周りが気になる等の私達母娘の「悩み」も反映した丈に。
洗濯頻度も「季節の終わりに一度だけ」ですむように。他の編み物・着る作品もまた同様です。
また家事をしやすい、袖口が汚れにくいように「半袖」(他の作品では7分袖も)です。
「いくつになってもどこかかわいい」この作品は「ふんわり袖」にしてみました。
実はたくさんのこだわりをいっぱい詰め込んであります。
最後に。
製作者のみきこばぁばは自身のことを「職人さん」と言います。
より良いモノを作りたい、作ることが楽しいという気質。
そこには材料選びや、製作過程も含まれていて半世紀をゆうに超える経験からくるものなんだなぁと感じています。
また年齢を重ねたことでたくさんのモノを持つより、「ちょっとだけ、ちょっといいモノを持ちたい」と考えるようになったことから作品も具体的になってきました。
「やっぱり、手編み!」という方々がいらっしゃいます。
多くは年配の方で、編み物経験のある方々。昭和のお教室に通われた方々。
編み物文化、衰退していっているように感じる今日この頃、当時をご存じの方もそうでない方にも、「毛糸から生まれる作品」の良さをお伝えしたく作品や製作者のエピソードを交えて書いてみました。
久しぶりのレター、長文になってしまいました。
読んでいただき、本当にありがとうございました。
「毛糸から生まれる作品」についての思いが伝われば、うれしいです。
2021.9.20 「みきこばぁばのひまつぶし」管理人*まなみ