床革(トコガワ)の作品を作る理由

床革(トコガワ)の作品を作る理由

レザークラフトをはじめたばかりの頃、革を仕入れに行った時に革の値段に驚きました。 販売員時代に扱っていた革のお財布やバックは万単位でしたし、ハイブランドのバックなんて0の桁がひとつ違う。 仕入れる時に高くて、当たり前ですよね・・・ そんな高価な革の中でもお手頃価な「床革」を見つけました。 アパレル業界に12年いましたが、床革でできた商品は見たことありません。一般的に「革製品」として作られているほとんどの商品は、革の表面(銀面ギンメン)の一層目を使用したもの。プロダクトとして流通していないものだったから、初めて目にするものでした。 革は、動物からとった皮をいくつもの工程を経て革にします。出来上がった革にはかなりの厚みがあり、革製品にしやすいように厚さを調整します。 その時革をスライスして出るのが床革です。床革は革が持つ、つるり・しっとりとしたあの表情がない部分、革の表面(銀面)の2層目です。 触ると少しザラっとした質感で、よく言えば少しかたいスエードのような肌触りです。 革の表面がない分、強度が高くありません。負荷が思いきりかかるバックのような製品にするにはかなりの工夫が必要だと思います。 ですが、革小物なら床革を生かすことができます。 初めて見た床革は栃木レザーのもので、染料が入っていて発色がきれい!床革ならではの独特な表情を持っていて美しいなと思いました。 床革はサンプル作りに使われたり、革製品の厚みや強度の調整のために芯として使ったりもします。日の当たらない存在です。革の表面をとった残り物で、価値が低く、限られた使い道しかないために捨てられてしまうこともあるそうです。 ですが「床革」はとても柔らかくしなやか、表面は起毛したような独特の質感があり、床革にしかない良さを感じました。 サステナブルの視点からも、貴重な素材が捨てられていったり、日の目を浴びないのはもったいない。 栃木レザーは高価で美しい革、その床革なら質がよくて多くの方に喜んでいただける製品を作れるのではないかと思いました。 そうして、栃木レザーの床革を使ってステーショナリーを作り始めました。 床革なら仕入れ値が高くない分、販売する時にもお安くできます。(現在価格の高騰のせいか、栃木レザーの床革の仕入れ値は2倍以上になってしまいましたが・・・涙) 強度と美しさを保たせるために、制作過程の中でも工夫をしています。 本革ほど高級感はありませんが、気軽にいろんな方に使っていただけたらと思い、ひとつひとつ丁寧にお作りをしております。

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レザークラフト作家

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