「加賀ゆびぬき」を知ったのは数年前。
ネットサーフィン中に、鮮やかなゆびぬきが目に飛び込んできて
おそらく、一目惚れだったのだと思います(笑)
まずこれが裁縫道具ということが信じられず、ネットを駆使して調べました。
その時の私は和裁学校を卒業して数年、細々と和裁を続けていた状況。
ゆびぬきは和裁には必要不可欠な存在で、無くては一針も進みません。
和裁学校に入学すると、どこも必ず最初は運針です。
運針をするにはゆびぬきが必要なわけで、まずゆびぬき作りから始まりました。
1.5cm×5cm位の細長く切った皮を、ペラッと渡されます。
それを自分の中指の太さに合わせて糸で留めて作るのです。
運針に慣れてくると、大体いつも同じ位置に針のお尻が当たるようになります。
速く縫えなければ、納期に間に合わず、試験にも通らないので、
普段から「早く、速く」となります。
自然右手の力が入り、ゆびぬきは数カ月もすると穴が開いてしまいます。
中指から血が出ることも。
ゆびぬきは使い捨てで、次々に新しいゆびぬきを作り、
在学中に何個使ったか覚えていません。
加賀ゆびぬきは金沢でも実用品として伝わってきたもので、
ありあわせの糸や布や紙を使って、自分用にお針子さんたちが作って使っていたもの。
実用だったから古いものが残っていることも少なく、
クローズアップされることもなかったのでしょう。
そこに着目し、研究し、そして世に広めた金沢の大西由紀子さんご家族は
加賀ゆびぬきのパイオニア的存在。
メディアに取り上げられ、著書を出版され、展示会を主宰され、愛好家が増え、
認知度が高まっています。
「加賀のお針子さんにできて、京仕込みのお針子(私)にできないはずはない!」
と意気込んで始めてみたらはまってしまった、ということです。
加賀ゆびぬきは土台に厚手の紙をぐるぐると巻きつけ、その上に真綿を巻き、
さらに表面を絹糸で覆っているため、穴が開いて針が貫通するなんてことは早々起こらず
気にしなければ、1つのゆびぬきをかなり長く使い込むことができます。
気になるのは表面の絹糸が切れてしまったり、真綿が覗いてくることでしょうか。
それでもゆびぬきとしては全く問題なく使えます。
作ることに時間がかかりますが、皮のゆびぬき何個か分だと思えばいいですし、
何より手元にかわいいゆびぬきがあるとモチベーションが上がって、
縫いの効率化に繋がります(個人的感想です)
最初こそ着物の仕立てで余っていた絹糸を使いましたが、
残り糸は着物の地色同様のぼやっとした色糸ばかり。
やはりカワイイ・キレイを目指したくなり、明るい色を買いに走りました。
加賀ゆびぬきはかわいく作れるようになりましたが、
自分用に何十年分かのゆびぬきを作っても・・・。
またゆびぬきを使う人が少ないのが現状。
そこで、帯留にアレンジを始めてみたのです。
試行錯誤を繰り返し、ゆびぬきの二倍の幅で楕円形に落ち着きました。
絹の着物に絹の帯、絹の帯締め(三分紐)に、絹糸で作られた加賀ゆびぬきは
自然なフィット感で添います。
無限にできるデザインも加賀ゆびぬきの魅力。
着物を縫うより楽しくなっています。