こんにちは。SHOLETTEです。
今回はスペシャルゲストを迎えて対談が実現しました!
“飾る”をテーマにハンドペイントの布雑貨などを作っていらっしゃる、CAKES&ALEさんです。
実は、「イメージアーカイブ・ラボコレクション」※ でグランプリと準グランプリを受賞した作家同士。
でも2人の交流は少し前まで遡ります。
※
https://minne.com/mag/articles/3296?srsltid=AfmBOooqmbC8J5poIk5Se70nI6gTbwyDY09GUf9reHnxdoEIpGjIkyro
─── 2人の出会い
私SHOLETTEが、minneの特集でCAKES&ALEさんのクリスマスオーナメントに一目惚れして購入したことがきっかけでした。(その後もたまにオーダーして、集めています!)
その後SNS上で交流を深め、初めてお会いしたのは、SHOLETTEのハンマケ出展時にブースに来てくださった時。
逆にお洋服をオーダーしていただいたり、今では作家仲間であり、お互いのファンでもあるような仲となりました。
対談は「イメージアーカイブ・ラボ コレクション」の受賞作品の話から始まります。
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■「イメージアーカイブ・ラボ コレクション」の受賞作品
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─── CAKES&ALEの受賞作品
https://minne.com/items/40891851
SHOLETTE(以下S): 「イメージアーカイブラボ・コレクション」では、お題となる絵画がたくさんありましたが、モネの《睡蓮》を選んだ理由、決め手は何でしたか?
CAKES&ALE(以下C): まずどのお題が自分の作品のテイストに合うのかと一通り眺めながら考えました。
私の作品のモチーフは動物が多いので、動物のイラストは入れたいなと思っていたんです。だけどそもそも絵画という元の“絵”があるから、そこに入れて違和感のないものにしたいなというのがあって。
主役の絵画を大事にしたい、尚且つ自分のテイストも入れたい、と思いながら眺めているうちパッと、ここに白鳥が浮かんでいたら…そういう構想がフワッと浮かんだというか。
多分、少し前に実際池でそういう光景を見ていて白鳥を目にしていたからというのもあるし、白鳥柄の作品も作ったことがあったんですね。なので馴染みやすいかなと思ったのと、なんとなく合わせてみたらすごくしっくりきて、これだなと思って。
あとは何羽のせたらいいかなとか、葉っぱが浮いているところと水面空いているところがあるのでどこに白鳥がいたら違和感ないかなとか、そういうバランスを考えながら。
S: それは、じゃあ合成して?
C: そうです。一番最初は白鳥の切り抜きをポットマットサイズに印刷した《睡蓮》に乗せてみることから始めたんですけど、サイズ調整となるとPC画面上の方が楽なのでそこで調整してサイズ決めしました。
S: ポットマットにするっていうのは決めてました?
C: そもそも私、オーナメントを主とした作品作りをしていて、ポットマットはそこから生活に馴染みやすい形に派生させて作ったアイテムでした。且つ、ブランドテーマである“飾る”という意味合いも含んだものです。
最初は新しいアイテムで考えようかとも思ったけど、まずあの《睡蓮》は正方形の絵なのでポットマットにもちょうど相性が良かったんですよね。違和感なく馴染む作品ができる予感がして、これでいくのが自分のできる範囲内でのベストかなと思ってポットマットにしたという感じなんです。
期日も迫っていたので、本当はもうちょっと時間をかけたかったという気持ちはあるんですけど。
S: 時間のない中で、いつも作っているものの延長で考えたりすると、いいものができたりしますよね。
C: そうそう、そうなんですよね。突然降ってくるじゃないけど、「あっこれか!」と閃く時があって。切羽詰まった時の方がそういうことがあります。
S: わかります。なるほど。
C:あとは感覚で絵の中の花がどれぐらい見えた方が綺麗かなとか、ここは隠さない方がいいかなとか、そういったバランスを微調整する感じです。
S: 正方形?ひし形なんですよね。モネの正方形の絵からひし形を切り抜いていますよね。正方形を回転したわけじゃないですよね。
C: そうですね、ひし形だから四隅はカットされますが、絵の収まりもよかったです。
─── CAKES&ALEはモネが好き?
S: ところで、モネは好きですか?好きでしたら、どのようなところが好きかとか、モネの中で好きな絵とかありますか?
C: 好きといえば好きですし。あまりそんなすごい好きだと意識したことも特にないんですけど。感動というか、ちょっと心揺さぶられたのは、直島の地中美術館に行った時に。
あそこにある大きな睡蓮の展示には照明が無くて、要は外の自然光がスポット替わりになるよう設計されています。まさに本当に外で描いてる人の目線というか、視界も広く感じるし、透明感というか奥行きというか。
こういう魅せる力があるんだなっていうのを初めて感じたかもしれないですね。
空間自体もすごく美しいというのもあるけど、こんなに綺麗だったんだなと、すごく良かった印象があります。
S: 地中美術館行ってみたいです!
─── CAKES&ALEの好きなアーティストは?
C: ここ数年で好きだなと思って見てるのはほぼ絵本で。
エルンスト・クライドルフっていう、スイスの絵本画家さんがいらっしゃって、お花の絵を描いてるんだけど、そのお花がちょっと擬人化されてて。顔があったりドレスを着たり…お花の花びらがちょっとドレスっぽくなってたりとか。
文章もご本人が考えていてすごくメルヘンな世界なんですけど。とにかくイラストがね、可愛すぎるわけでもなく、ちょっとこう大人っぽい感じで。
S: 私もそのテイスト好きそう!
C: 多分好きだと思う。ちょっと見てみてほしいな。持ってくればよかった!
S: あ、これか。なんか見たことあるかも?
C: 多分ね、どこかでは見かけたことあるかも。絵本としてあるので。
S: へえ、可愛い。
C: 昆虫とかも出てきて。バッタとか蝶々とかね。描くと気持ち悪くなりそうだけど綺麗。
S: たしかに擬人化されて人間みたいな感じですね!
C: あとはやっぱり動物作品の方がメインなので、これまで動物を見る機会が多かったです。
プロベンセンさんっていうご夫婦がいて、2人とも絵本作家さんなんですよ。
田舎に移り住んで、自分たちの農場の生き物たち〜犬、猫、鳥、羊とかいろんな生き物の日常を描いている絵本があるんだけど、物語でもなくただ四季の移り変わりの日常が描いてあるっていう感じの絵本なんですけど。
もうね、絵がかわいくて。ちょっとラフな柔らかい線で、完璧に描いているというよりは手描きの良さが出ている。
動物の愛らしさとか滑稽さとか、そういうのが上手だなって思います。
─── SHOLETTEの受賞作品
https://minne.com/items/42236360
C: 私から質問です。ルノワールの《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》を選ばれた理由は?
S: 「イメージアーカイブ・ラボ」の企画で、自分が今までに取り上げたことがない題材を見てて。
前提として“絵が生地になったらどうなるか”という目で見るんですけど、具体的なモチーフが入ってる絵だと、モチーフが繰り返しでいっぱい並んでその主張が強くなっちゃう。そういう点も含めて考えて。意外とごちゃごちゃした絵の方がモチーフが目立たず生地にしやすかったり。
そういうことを考えながら見てた時に、本当なんか一目惚れのように「あ、これ生地にしたらいいかも」みたいなインスピレーションで決めました。「本当にこれでいいのかな」と何周も見直して、でもその第一印象にどうしても戻っちゃう。やってみたいと思ったらどうしてもやってみたくて。一目惚れです。
C:私が思ったのが、あの洋服のレイヤードがすごい素敵だなと思って。それこそお洋服を勉強されてる方らしいっていうか。
その複雑な組み合わせ方とか、シンメトリーにしないところとか、そういうのはどういうイメージでできたのですか?
S:アシンメトリーはよくやるんですけど、今回は特に《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》の絵がワサっと、うじゃっとしてる、奥行きがある。透明感もあるし。これは透ける生地にしないと。ベターっとプリントすると、あの絵の光がこぼれる良さが出ないなと。
C: なんかすごいわかる。わかります。
S: でも全部透けちゃうと、特に子供用なので服としてスケスケなのは困るから。透けないコットンと、透ける生地と両方プリントして組み合わせて。
透ける生地で奥行きの表現っていうのがレイヤーにつながるというか。あの絵の喧騒みたいな。光の透過と、生地が重なってごちゃごちゃになっていく感じが、よりあの雰囲気を立体的に表現できるかなというイメージでした。
C: いつも制作のメモを書かれてるじゃないですか。あれもすごい細かくて読んでみたいな!て思って。あれは昔からやられてるんですか。
S: もともと海外の学校のやり方に憧れを持っていて。何年か前に、ヨーロッパの服飾の学校のデザインコースを受けた時の影響があります。すごい短期のオンライン授業だったんですけど。
リサーチをして、リサーチノートを作って、コンセプトを絞り、いろいろ実験してデザインするやり方を習って、学んだことを今もコンパクトにですけど1人でやっている。
C: あれはいつも一枚の紙にわーって書いているように見えますが、ノートとかではなく?
S: ノートにも書くし。ノートだと小さくて書ききれない時や資料の絵を貼りたい時は大きい紙にまとめてます。
C: すごい、そういうところがちゃんとしてる!っていつも思いながら。
やられている事がデザインの仕事と似てるなと思って。
考えを書き出すというか、たくさんイメージを膨らませるためのフレーズだったり、そのものをよく知るという観察をすごくされてる。
まずその相手をよく知って、それを最大限引き出せるように考えるっていうのが、ハンドメイドの枠を超えてやられてるなと。だからああいった作品が出来上がるんだとすごい納得です。
─── それぞれのコンセプトづくり
S: 何か書きますか?メモとか。
C: 今回みたいなテーマがある場合は思いつくことをちょこちょこ書いたり、どこが特徴かなっていうのを考えて一応相手を理解しようとします。
S: 会社員でいらっしゃった頃の仕事とかで、コンセプトがある“ものづくり”の時は結構書いてたりしました?
C: そうですね、主に商品のデザインですけど店舗を作るというところもあったから、その店舗を作る上で、じゃあどういう見せ方をしたらこのブランドの商品らしいかっていう事とかは常に考える必要がありました。
でも会社員時代はその作業が未熟だったなと思います。一人でやり始めた時の方が考えるようになったというか、会社にいた頃はどこか自分ごとじゃなかったからかなと思っています。自分の商品を作っているというより会社のブランドを作ってるから、もっと追求すべきだったと思うんだけどその頃は気づかず、今考えるともっとやれることあったなって思うことはあります。
S: 自分のことじゃないからこそ、客観的にできることとかもありますけどね。
C: ありますけどね。どうでした?
S: 私は大して会社に在籍していなかったので、全然。少しだけ私個人の裁量で作らせてもらえた時も必死で、深く考えるフェーズまでいってないです。
C: いや、私も余裕がなくてただこなすっていう感じになってたので。
自分のものを作り始めてからは、自分に全ての責任が伴うのと、作ってるものを世に出しちゃったらもうそれが “私”の創作物になっちゃうので。そこに関しては自分しかいないので失敗できないというか。まあ、会社も失敗できないんだけど。
S: そうそう、どっちもね、ありますね。
C: ありますか?そういうの。
S: 逆に自分のことだと客観的になれなくて、わからないことがあります。自分の核とかブランドらしさとか。
色々なものから影響を受けるから、こっち行ったりあっち行ったりもしちゃうし。やってみて売れないなとかなると余計わかんなくなったりとか。もっと客観的にできたらいいのかなって思うことがあります。
C: 自分が作りたいものと、求められているであろうもののせめぎ合いみたいなところは?
S: そこも、ごちゃっとしてるんですね。
よくあるじゃないですか。“自分の作りたいものと売れるものが違うから、仕方なく売れるものを作る”みたいな話って。
私は“自分の好きなものを作る=売れない”とも思ってないし、本当に好きなものを突き詰めて作ってる人って、何かしら売れてる。どんなに尖ってても。
売れないってことは尖りきれてもないし、一般受け、大衆化しきれてもないし、中途半端なところにいるんだろうなと思って。だから逆にもっともっと突き詰めることができれば売れるんじゃないかみたいなことはよく考えてます。
C: うーんなんかわかるなぁ。わかります。わかります。
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■アートとの関わりと、その影響
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C: アートを取り入れ始めたきっかけはなんですか?
S: 美術に関しては、周りが自然にみんな美術館見に行ったり、小さい頃も親も連れて行ってくれたので身近にあって。
ファッションデザイナーもアートからの着想は多いですし、インスピレーション源として自然にありました。
度々ですが、また海外のオンラインで授業を受けた時の話ですが…
授業内で、ある音楽を聞いて自分がイメージしたものを書き出していって、そこで出たキーワードについてのリサーチをとにかくする。私がイメージしたのは劇場とか操り人形とか。世界中にある操り人形を調べたり、「もっともっと調べなさい」って言われて。次は操り人形から派生するイメージも調べてっていう感じで教えてもらって。
なおかつ服は見ちゃダメ。パリコレの写真とか雑誌とか、服を最初に見ちゃうと単純なコピーになっちゃうので。
あと、ネットでイメージを調べるだけだと一方向になっちゃうから、もっと視野を広げて、美術館に行ったり、本を見たり、映画を見たり、音楽を聴いたり、いろんなとこからイメージを集めなさいって教えがあって。
それがあってから、服を見るより他のものを見てみよう…となった時に、自然にアートっていう方向性に行った。きっかけとして大きかったです。
それまでは結構ボーッと美術館で観てたんですけど、何を観たのか忘れちゃうなと思って。美術館行くときにメモをいちいち取りながら見るようにしたら結構覚えてきて。そうすると、もっと美術の流れを知りたくなって。
美術検定というのを見つけて、美術史を勉強して、受けて。美術史の全体像を把握したら、よりアートが面白くなって。…という流れの中に今います。
C: 服ってすごい歴史が深そうですもんね。その辺も考えられてるから、作品拝見しててもしっくりくるというか。時代時代でその時に着られたものとか、絵画の中で似てるお洋服から実物に落とし込むっていうのがすごく面白いなっていつも思っておりました。
コンセプトも頷けるというか。
S: でも実際に絵画コラボ作品を作れたのはminneやイメージアーカイブ・ラボの企画のおかげで!締め切りがないとできないので!!笑
C: ゴッホのもすごく素敵でしたよね。いや、なかなか場がないと着れないお洋服じゃないですか。普通に着ます!っていうと勇気のいるものだけど、やっぱりそういう場面だから作れるっていうかね。それが楽しいところかなって。
─── SHOLETTEはルノワールが好き?
C: ルノワールはお好きなんですか?
S: 実はあまり興味を持ったことなかったんです。
ひねくれてるので、ルノワールとかモネのように大人気だと、「どうせみんな好きでしょ」と思っちゃって。
でも、すごい好きになりました、ルノワール。モネより好きかも。モネに悪いけど。モネのファンの方も多いので大声で言えないですが…(笑)
ルノワールが好きな理由は、ただの“好き嫌い”のような感覚的なものかも。ルノワール、調べてたらもがいていることも多くて、そういうところが好きかも。それなのに明るい絵ばっかり描いてたりとかするのが、「ただただ何も考えずに明るい絵描いてるんじゃないんだな、人間らしい」と思ったんですよね。まぁ、モネももがいてるところはあるんですけどね。
C: 作品紹介読んだのですが、庶民の女の子たちが頑張って高級なお洋服を真似て作ってたところに魅力を感じたって書かれてて。その着眼点がなんかいいなって。
S: そうなんです。そうなんです!作品紹介読んでいただいていてありがとうございます!上流階級に向けての絵も描いてたのに、そういう庶民目線を常に持ち合わせてたり、それが親近感というか。
─── SHOLETTEの好きなアーティストは?
S: 美術系だと、若い頃、イギリスとベルギーに少し触れる機会があった影響か、中世ゴシック期から初期ルネサンス、北方ルネサンスあたりが好きです。画家だとヤン・ファン・エイク、カルロ・クリヴェッリ、ルーカス・クラーナハ。
イギリス系で、ラファエル前派も好きで、ジョン・エヴァレット・ミレイとか、ロセッティとか。日本人だと藤田嗣治が好きです。
C: お好きな系統が見えました。ちょっとミステリアスな表情というか、SHOLETTEさんの作品や雰囲気からもあぁお好きそう!ってわかる気がします。
前に好きな女性の顔についてどこかに書かれてませんでしたか?
S: 藤田嗣治、カルロ・クリヴェッリ、クラーナハ、鈴木春信、小村雪岱の、すごい中性的でクールな表情をした女性の顔が好きで。
C: なんかそれSHOLETTEさんが作ってるお洋服ともちょっと似てるなって。出てるなって思います 笑
お洋服で好きなデザイナーさんは誰ですか?
S: 洋服は、ヨウジヤマモトとコム・デ・ギャルソンはある意味当たり前のように影響受けてきました。あとアントワープ系で
アン・ドゥムルメステール、ドリス・ヴァン・ノッテン。
イギリスでアレキサンダー・マックイーン、あとたまたまイギリスにいた時にヴィヴィアン・ウエストウッドの展覧会を美術館でやってて。そのイベントの一環で美術館でヴィヴィアンのファッションショーをやったんですよ。見に行くことができて、もうすごい感動して。
古い絵に囲まれた部屋で、ヴィヴィアンも結構昔の絵画をモチーフにした服とか作ってるんですけど、あの場でそのショーを見れたこと。自分の中で、今やってる、西洋絵画とファッションの融合の原点体験みたいな感じがあります。
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グランプリと準グランプリの発表があった日、すぐに連絡を取り合って一緒に喜んだことが思い出深いです。
さて対談は「後編」へと続きます。
後編では、受賞作からは離れ、現在の制作プロセスやこれまでの背景、それぞれが今後作ってみたいものなど、さらに深い話をお届けしています。
▼「後編」は6月20日(金)、CAKES&ALEさんのページにて公開予定。引き続きお楽しみください!
CAKES&ALEさんショップページ
https://minne.com/@cakes-ale-d
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