ARABIA アラビア アリ（Ali）クリーマー 北欧ヴィンテージ食器 フィンランド製

フィンランドを代表する食器メーカーARABIAのアリシリーズのクリーマーです。 アリシリーズは1961年から1973年にかけて制作されました。ARABIA社の名コンビであったカイ・フランクとライヤ・ウオシッキネンの両デザイナーによって世に送り出されました。アリは20世紀のARABIA製品のなかで最後の銅版転写の作品となっています。銅版転写とはシルクスクリーン印刷の一種で、パターンデザインをくり抜いた銅版にコバルトを原料としたインクを乗せ、転写紙にインクを写します。そして無地の陶器に転写紙をかぶせブラシで刷り付けて定着させ、薄い透明の釉薬を塗り重ねて再焼成します。転写の力加減で色の濃淡やムラなどの個体差が生じます。濃淡差に個性や味わいが生まれ、職人の腕前も如実に現れます。 銅版転写は大変手間がかかるため、アリは1973年の石油危機の際に生産を終了しています。この時期はARABIAの名作パラティッシの生産も終了するなど、それまでの主要なラインナップが軒並み生産終了に追い込まれる停滞期でした。加えて安価な外国産陶器が台頭するようになった1980年代はARABIA製品もプリメイドの転写紙をそのまま貼り付けたり、シンプルなハンドペイントで装飾を施すなど工程を省略しコスト減をした食器が多く生み出されました。80年代以降の作品はそれまでの黄金期の作品に比較すると装飾が極端にシンプルで、手間暇にコストを割くことが出来なかった苦しい時代を感じさせます。こうした時代背景を考えるとアリはARABIA黄金期の最後の作品といえます。 パターンデザインを考案したライヤ・ウオシッキネンは北欧に存在しないものを描く作風があります。彼女の代表作エミリア（Emilia）の牧歌的な風景はアメリカを描いていたとされ、本作アリシリーズでは北欧らしからぬイスラム世界のアラベスク模様を取り入れています。北欧食器は寒い地域性と相反して、暖かさや鮮やかをデザインに取り入れることに特徴がありますが、アリはまさに北欧食器の脱地域的なデザインをよく表現しています。