この戦前に輸入された、
無名ながらも見事な出来ばえのスイス時計について語るまえに、
本品に用いられる「サンプラチナ」という素材について
触れておかなければなりません。
サンプラチナとは1927年(昭和2年)に、
その名も「三金研究所」なる日本法人が発売した合金です。
金や白金(プラチナ)につづく〝第三の金〟として普及するようにと、
開発者であり社長の加藤信太郎さんが名づけました。
「プラチナ」と称してはいますが、
ニッケルやクローム、銀などから生成した合金で、
じつはプラチナ(pt)とは無縁です。
貴金属としての価値はほぼゼロに等しく……。
おまけに、きわめて硬質で加工しにくかったことから、
当初は日本の市場になかなかフィットしませんでした。
しかし日清•日露戦争を経て、
関東大震災が見舞うという世情により物資が不足……。
さらに政府が貴金属の流通統制に乗りだしたことが、
サンプラチナには追い風となります。
やがて大戦を迎えますます窮乏する国情のなか、
サンプラチナは急速に普及してゆきます。
とくに戦後は、昭和天皇が
サンプラチナ製の眼鏡フレームをご愛用されたことで、
人気に拍車がかかりました。
ステンレススティールの普及にともない、
勢いを失ったサンプラチナでしたが、
今も眼鏡フレーム用や歯科技工材として重宝されています。
本品は、そんなサンプラチナの草創期に、
徹頭徹尾、手づくりによってあつらえられた素晴らしい工藝品です。
戦前、貴金属業界からも時計業界からもスルーされた三金研究所。
そこに救いの手を差しのべたのは、
浅草の小森宮金銀店(現コモキン、台東区)さんでした。
小森宮金銀店は加工が難しいとされるサンプラチナに
「模範演技」ともいえる見事な彫金をほどこし、販売。
本品のような現代ではおよそ再現不可能な、
工藝作品に昇華してみせることで、
精工舎ら大手メーカーがサンプラチナを導入するまでに至ります。
本品のケース(ボディ)については、
その時代にコモキンさんが直接手がけたものなのなのか、
メカの製作ごとスイスに依頼したものなのかは定かでありません。
ヒントは固定式のラグにありそうです。
強固ながらも少々荒っぽい「はんだづけ」によって
本体とラグが連結されています。
サンプラチナとは異なる黒っぽい鋳物による蝋(ろう)づけです。
これは当時、スイスの時計メーカーがよく用いた手法。
普段は接合部をメッキで覆い隠せますが、
「無垢材」であるサンプラチナでは
それが剥き出しになってしまったのでしょう。
また小森宮さんならもっと上手くやるはず、
との憶測も加味しています。
彫金は輸入後に小森宮金銀店が手がけたのではないでしょうか。
同じ時期に、同店が精工舎(セイコー)のためにあつらえた時計に、
ほとんど同柄の彫金細工が見られることから、
そう考えるのが自然です。
メカがまた素晴らしい。
率直にいって、
当時の日本の技術では逆立ちしてもつくれなかったレベルの、
素晴らしい角型ムーヴメントが収納されています。
通常、わたくしどもでは開閉にともなう無用な損傷や、
埃が内部へ侵入することを防ぐ意図から、
時計の内部は公開していません。
今回は幸運にもオーバーホールの実施前に、
ムーヴメントを撮影する機会を得ましたので、
ぜひ画像をご覧ください。
固定型ラグ用の素敵な革ベルトを見つけました(ブラック/カーフ)。
なんと今もバンビさんがつくりつづける現行品です。
1930年代 スイス製
15石 手巻きムーヴメント
文字盤:縦 約14mm × 横 約10mm
本体:縦:約25mm (ラグを含まず)
横約13mm(リューズを含む)
重さ:約11g(革ベルト•尾錠を含む)
材質:サンプラチナ
ベルト:牛革
腕まわり:約120mm〜約160mm強
*予備穴をあけて約175mmまで対応可能です。加工は弊店にて承りますのでご購入時にお申し付けください。
オーバーホール(分解清掃)済み
日差:±30秒前後(平置)
外箱・取説等の付属品はありません
※硝子の傷とりを施術予定のため、
納品まで約1週間を要します。
•———•———•———•———•
※数十年前に製造された骨董品(アンティーク)です。
本品も含め新品同様のまっさらで無傷な品ではありません。
性能も現代の製品には劣ります。
返品・返金は受けつけておりませんので、
「購入の際の注意点」を熟読のうえ、
慎重にご検討くださいませ。
この戦前に輸入された、
無名ながらも見事な出来ばえのスイス時計について語るまえに、
本品に用いられる「サンプラチナ」という素材について
触れておかなければなりません。
サンプラチナとは1927年(昭和2年)に、
その名も「三金研究所」なる日本法人が発売した合金です。
金や白金(プラチナ)につづく〝第三の金〟として普及するようにと、
開発者であり社長の加藤信太郎さんが名づけました。
「プラチナ」と称してはいますが、
ニッケルやクローム、銀などから生成した合金で、
じつはプラチナ(pt)とは無縁です。
貴金属としての価値はほぼゼロに等しく……。
おまけに、きわめて硬質で加工しにくかったことから、
当初は日本の市場になかなかフィットしませんでした。
しかし日清•日露戦争を経て、
関東大震災が見舞うという世情により物資が不足……。
さらに政府が貴金属の流通統制に乗りだしたことが、
サンプラチナには追い風となります。
やがて大戦を迎えますます窮乏する国情のなか、
サンプラチナは急速に普及してゆきます。
とくに戦後は、昭和天皇が
サンプラチナ製の眼鏡フレームをご愛用されたことで、
人気に拍車がかかりました。
ステンレススティールの普及にともない、
勢いを失ったサンプラチナでしたが、
今も眼鏡フレーム用や歯科技工材として重宝されています。
本品は、そんなサンプラチナの草創期に、
徹頭徹尾、手づくりによってあつらえられた素晴らしい工藝品です。
戦前、貴金属業界からも時計業界からもスルーされた三金研究所。
そこに救いの手を差しのべたのは、
浅草の小森宮金銀店(現コモキン、台東区)さんでした。
小森宮金銀店は加工が難しいとされるサンプラチナに
「模範演技」ともいえる見事な彫金をほどこし、販売。
本品のような現代ではおよそ再現不可能な、
工藝作品に昇華してみせることで、
精工舎ら大手メーカーがサンプラチナを導入するまでに至ります。
本品のケース(ボディ)については、
その時代にコモキンさんが直接手がけたものなのなのか、
メカの製作ごとスイスに依頼したものなのかは定かでありません。
ヒントは固定式のラグにありそうです。
強固ながらも少々荒っぽい「はんだづけ」によって
本体とラグが連結されています。
サンプラチナとは異なる黒っぽい鋳物による蝋(ろう)づけです。
これは当時、スイスの時計メーカーがよく用いた手法。
普段は接合部をメッキで覆い隠せますが、
「無垢材」であるサンプラチナでは
それが剥き出しになってしまったのでしょう。
また小森宮さんならもっと上手くやるはず、
との憶測も加味しています。
彫金は輸入後に小森宮金銀店が手がけたのではないでしょうか。
同じ時期に、同店が精工舎(セイコー)のためにあつらえた時計に、
ほとんど同柄の彫金細工が見られることから、
そう考えるのが自然です。
メカがまた素晴らしい。
率直にいって、
当時の日本の技術では逆立ちしてもつくれなかったレベルの、
素晴らしい角型ムーヴメントが収納されています。
通常、わたくしどもでは開閉にともなう無用な損傷や、
埃が内部へ侵入することを防ぐ意図から、
時計の内部は公開していません。
今回は幸運にもオーバーホールの実施前に、
ムーヴメントを撮影する機会を得ましたので、
ぜひ画像をご覧ください。
固定型ラグ用の素敵な革ベルトを見つけました(ブラック/カーフ)。
なんと今もバンビさんがつくりつづける現行品です。
1930年代 スイス製
15石 手巻きムーヴメント
文字盤:縦 約14mm × 横 約10mm
本体:縦:約25mm (ラグを含まず)
横約13mm(リューズを含む)
重さ:約11g(革ベルト•尾錠を含む)
材質:サンプラチナ
ベルト:牛革
腕まわり:約120mm〜約160mm強
*予備穴をあけて約175mmまで対応可能です。加工は弊店にて承りますのでご購入時にお申し付けください。
オーバーホール(分解清掃)済み
日差:±30秒前後(平置)
外箱・取説等の付属品はありません
※硝子の傷とりを施術予定のため、
納品まで約1週間を要します。
•———•———•———•———•
※数十年前に製造された骨董品(アンティーク)です。
本品も含め新品同様のまっさらで無傷な品ではありません。
性能も現代の製品には劣ります。
返品・返金は受けつけておりませんので、
「購入の際の注意点」を熟読のうえ、
慎重にご検討くださいませ。
サイズ
本文に記載
発送までの目安
7日
配送方法・送料
宅配便
0円(追加送料:0円)
全国一律
全国一律
購入の際の注意点
弊店が販売前に実施しているメインテナンスについては、
下記リンク先をご参照ください。
https://minne.com/@solent/letters/83465
•———•———•———•———•
【ヴィンテージをおすすめする理由】
懐中時計の時代から小型化や複雑化など、
めざましい発展を遂げてきた機械時計*。
クオーツ時計**の登場(1969年)により、
その様相は一変します。
(* **機械時計とクオーツ時計の違いについては後述)
それまでは職人が時間と労力を費やすことで、
はじめて実現しえた「精度」。
それがテクノロジーの力で、
いとも簡単に実現してしまう時代が到来したためです。
手づくりの精密機械から、大量生産の電化製品へーー。
それは時計の定義や概念さえも覆る大転換期でした。
ここ数年は高級品を中心に機械時計への回帰が見られますが、
メカの設計自体がだいぶ簡素化したため、
復活や復権とは言えない面があります。
かつて手作業が担っていたプロセスを、
プログラミングされた工作機が代替する場面も多く、
その違いはほぼ「別もの」といえるほど。
強度と使い勝手はやや増したものの、
手工芸品としての価値は下がってしまいました。
中世の昔から積みあげた知恵と匠みの結晶、機械時計。
またその「王位」を継承するために、
あらゆる技術を投入して開発された初期クオーツ時計。
わたくしどもがお勧めしたいのは、
そんなふたつのタイプの時計たちです。
【時計のきほん】
時計には大きく分けて、
・機械時計
・クオーツ時計
の2種類があります。
機械時計とは電源(電池)を用いない、
ぜんまい仕掛けの精密機械のことです。
クオーツ時計は水晶の電圧効果で駆動する電子機器です。
ほかにも音叉時計•電磁時計•電波時計などがあります。
【機械時計の使いかた】
機械時計は手動でぜんまいを巻く「手巻き時計」と、
内部に備わるローター(振り子)がぜんまいを巻き上げる、
「自動巻き時計」とに分かれます。
手巻きは指先でリューズを回してぜんまいを巻きあげてください。
自動巻きは人の手首の動きを利用して動力を蓄える仕組みですが、
それだけでは1日に必要なパワーを得られないので、
はじめは手巻き時計のように手で巻いて始動させます。
自動巻きとは「腕につけていれば止まらない」機能であり、
長時間放置すれば自然と停止します。
故障ではありません。
手巻き•自動巻きいずれにも共通して、
「使わない日もぜんまいを巻くべきか?」
というご質問をよくいただきます。
「どちらでもよい」が弊店の回答です。
使わない日は必ずしも巻く必要はありません。
毎日巻いて動かすほうが
機械の調子を維持しやすいとの説も耳にしますが、
たとえそうだとしても部品の消耗を考えれば五十歩百歩です。
再起動させるたびに時刻やカレンダーを合わせるのは、
たしかに少々面倒ではありますが、
「OFFの日」も無意味ではないというのが弊店の意見です。
【留意点】
機械時計は磁気に弱いという特徴があります。
テレビ・ラジオ・携帯端末・PCなど、
強い放電をともなう機器のそばに長時間放置すると、
内部が帯磁して精度が損なわれます。
磁気を帯びた時計は専門店のサービスを受ければ容易に回復しますが、
なるべく上記のような機器から離れた場所で保管することをお勧めします。
また現代の時計にくらべて防水機能は劣ります。
たとえ防水を謳う時計であっても、
経年劣化によりガラスや金属•ゴムパッキンなどの「水際」を守る部品に、
わずかな隙間が生じているかもしれません。
装着したままの遊泳や入浴は厳禁です。
極端な悪天候や本格的な洗顔のさいも念のため外すなど、
日常的に一定の配慮が必要です。
【お手入れ】
機械時計は正常に動いていても、
2〜3年に1度は専門店でオーバーホールを受けるのが理想です。
定期的に内外の汚れを落とし、メカの潤滑油を保つことで、
故障を未然に防ぎ、寿命を長持ちさせる効果があります。
クオーツ時計は2年程度のサイクルで電池交換が必要になります。
クオーツのオーバーホールは5年ごとがおおよその目安です。
【古物(ヴィンテージ)•骨董(アンティーク)のあつかいについて】
どんなによい品であっても経年変化をまぬかれることはありません。
どんなに美しい人も加齢をまぬかれないのと同様です。
内外に「傷み」は生じるもの……。
お渡し前に可能なかぎりメインテナンスを施してはおりますが、
現代の新品と同様のクオリティを期待されるお客さまに、
おそらく古物(ヴィンテージ)は向きません。
また現代とはちがい、
往時は製造者(売り手)がとり扱いや使用法について、
ユーザー側に一定の「理解」や「工夫」、
あるいは「自己責任」を求めていた時代です。
上記の磁気や湿気への気配りをはじめとして、
使用者が丁寧にとり扱うことを前提に製造された精密機器といえます。
とくに時計はかつて贅沢品であり、
代々引き継がれる「家宝」として流通していたため、
大切に扱うのが普通でした。
またそのようにつくられています。
時計がスポーツや冒険のツールとして用いられる時代以前の産物です。
用途そのものが違うとお考えいただくとよいかもしれません。
【アフターセールス】
販売前にオーバーホール(完全分解清掃)を施した一部商品を除き、
故障時の保証は付帯しておりません。
また近ごろ横行するすり替えや、
部品窃取といったトラブルを回避する意味からも、
ご購入後の返品•返金のご要望は承れません。
ご購入者さまには弊店の連絡先をお知らせしております。
故障やお困りごと、使用方法のご質問等につきましては、
どうぞお気軽にお寄せくださいませ。
対処法•解決策を見つけるお手伝いをさせていただきます。