※こちらは販売作品ではなく、レターの内容を纏めたページです
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前回のレターに引き続き、新作のシリーズ“夢見る人魚”のアクセサリーの素となった物語について、作品紹介では語れなかった諸々を書いたものです
前回(ログ2)→ https://minne.com/items/43044254
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3・【2人の名前について】
名前をつける時、いつも本当に悩みます
その名前が持つ意味は勿論、響きや登場人物同士の関係性も考慮して付ける事があります
今回は海に因んだ名前にする事と、2人で対になるような響きと字面にしたかったのです
悩んだ末、人魚の女の子にはラナ、人間の女の子にはメルと名付けました
ラナという名前には“静かな水面”“漂う波”また“物事をじっと見つめる”という意味
メルという名前には“海”また“優しさ”“母性”といった意味が込められ、現実で名付けられるものであるそうです
加えて、二文字且つマ行とラ行で柔らかな響きのイメージがとても良いと思い、ラナとメルに決めました
込められた意味と実際の境遇が必ずしも噛み合わず、そればかりか相反するような所も、皮肉めいていて気に入っています
4・【物知りな蛇と海の魔女の役割について】
まず、蛇と魔女というモチーフはファンタジーや創作に於ける普遍的なものでありながら、しばしば悪として描かれる事が多いように思います
聖書の蛇はアダムとイヴを唆し、魔女のキャラクターは毒薬や邪法を以て、自分にとって邪魔な物語の主人公を躊躇なく消そうとします
意地が悪く我儘、他の存在を堕落させ、神から遠ざけようとする…
そういった存在として取り扱われる事が多いイメージのある魔女と蛇ですが、雨錆堂の作品に登場する彼らは、それとは少し違います
“ただ各々の役割を担うもの”として登場します
・・・・
そもそも、善や悪といった絶対的な基準が存在するというよりは、物事は全て関係性の中で作用するのだと思います
ある事象は、Aさんにとっては有り難くも、Bさんにとっては人生の障害物にすらなり得たりします
例えば、ただそこに転がっている石ころを見て「風情があるな」と愛でる人もいれば、踏んで怪我をして怒り狂う人もいます
でも石はただ、そこに転がっているだけです
そこにある石に関わった人間が、それぞれの価値観や境遇でその石を様々に解釈しているだけではないでしょうか
当然、全てのものにこの考え方が当て嵌まる訳ではありませんし、意思のある者と石ころには共通しない点もあるでしょう
しかし、人間同士の関係性もそういう事がままあるように感じるのです
それを踏まえた上で、雨錆堂が勝手に解釈するこの世界での魔女の役割は
“己の技術を以て、他人に請われた薬品を調合し提供する事を生業とする者”
蛇は“豊富な知識を持ち、それを必要とする者に分け隔てなく与えるもの”となっています
また彼らは、他の者達とは少し距離を置いて共同体の中に存在しています
当たり前のやり取りはすれども特定の者やコミュニティと深く交わったりはせず、家族や友人、恋人を持つ事もありません
蛇も魔女も、ただその属する集団に対して己の差し出せるものを差し出すだけ。それが仕事
相手によって差を付けたり、私情を挟む事もありません
あくまでも“平等”な立ち位置です
つまり共同体の一員でありながら一定の距離を保ち、俯瞰した立場を持つ“観測者”としての側面も有するとも言えるのです
だから魔女は悲しそうな顔をしただけで、薬を渡し、引き止める事もしませんでした
差し出されたそれをどのように扱うのかは望んだ側次第
そして仮に魔女がラナを引き止めたいと心では思ったとしても、それをしては彼女は“魔女”ではいられなくなり、なにより共同体も“魔女”を失うためタブーであるのです
“魔女が薬を与えて、引き止めもしなかったせいでラナは不幸な結末を迎えた”
と取る方もいるでしょうし、
“結末としてはああなったけれど、彼女自身が望み、そして憧れたもの達に触れる事が出来たのは薬のお陰ではある”
と思う方もいるでしょう
受け取った者がどうなるか、それを見た者がどう感じるか
それは人それぞれ、価値観によって千差万別な解釈があるでしょう
ただ、作者としては「悪役」や「被害者」を登場させたかった訳ではありません
“己の役割を全うする、ただそれだけの存在”として解釈し、配置したのです
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次・4
https://minne.com/items/43139531
※こちらは販売作品ではなく、レターの内容を纏めたページです
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前回のレターに引き続き、新作のシリーズ“夢見る人魚”のアクセサリーの素となった物語について、作品紹介では語れなかった諸々を書いたものです
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3・【2人の名前について】
名前をつける時、いつも本当に悩みます
その名前が持つ意味は勿論、響きや登場人物同士の関係性も考慮して付ける事があります
今回は海に因んだ名前にする事と、2人で対になるような響きと字面にしたかったのです
悩んだ末、人魚の女の子にはラナ、人間の女の子にはメルと名付けました
ラナという名前には“静かな水面”“漂う波”また“物事をじっと見つめる”という意味
メルという名前には“海”また“優しさ”“母性”といった意味が込められ、現実で名付けられるものであるそうです
加えて、二文字且つマ行とラ行で柔らかな響きのイメージがとても良いと思い、ラナとメルに決めました
込められた意味と実際の境遇が必ずしも噛み合わず、そればかりか相反するような所も、皮肉めいていて気に入っています
4・【物知りな蛇と海の魔女の役割について】
まず、蛇と魔女というモチーフはファンタジーや創作に於ける普遍的なものでありながら、しばしば悪として描かれる事が多いように思います
聖書の蛇はアダムとイヴを唆し、魔女のキャラクターは毒薬や邪法を以て、自分にとって邪魔な物語の主人公を躊躇なく消そうとします
意地が悪く我儘、他の存在を堕落させ、神から遠ざけようとする…
そういった存在として取り扱われる事が多いイメージのある魔女と蛇ですが、雨錆堂の作品に登場する彼らは、それとは少し違います
“ただ各々の役割を担うもの”として登場します
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そもそも、善や悪といった絶対的な基準が存在するというよりは、物事は全て関係性の中で作用するのだと思います
ある事象は、Aさんにとっては有り難くも、Bさんにとっては人生の障害物にすらなり得たりします
例えば、ただそこに転がっている石ころを見て「風情があるな」と愛でる人もいれば、踏んで怪我をして怒り狂う人もいます
でも石はただ、そこに転がっているだけです
そこにある石に関わった人間が、それぞれの価値観や境遇でその石を様々に解釈しているだけではないでしょうか
当然、全てのものにこの考え方が当て嵌まる訳ではありませんし、意思のある者と石ころには共通しない点もあるでしょう
しかし、人間同士の関係性もそういう事がままあるように感じるのです
それを踏まえた上で、雨錆堂が勝手に解釈するこの世界での魔女の役割は
“己の技術を以て、他人に請われた薬品を調合し提供する事を生業とする者”
蛇は“豊富な知識を持ち、それを必要とする者に分け隔てなく与えるもの”となっています
また彼らは、他の者達とは少し距離を置いて共同体の中に存在しています
当たり前のやり取りはすれども特定の者やコミュニティと深く交わったりはせず、家族や友人、恋人を持つ事もありません
蛇も魔女も、ただその属する集団に対して己の差し出せるものを差し出すだけ。それが仕事
相手によって差を付けたり、私情を挟む事もありません
あくまでも“平等”な立ち位置です
つまり共同体の一員でありながら一定の距離を保ち、俯瞰した立場を持つ“観測者”としての側面も有するとも言えるのです
だから魔女は悲しそうな顔をしただけで、薬を渡し、引き止める事もしませんでした
差し出されたそれをどのように扱うのかは望んだ側次第
そして仮に魔女がラナを引き止めたいと心では思ったとしても、それをしては彼女は“魔女”ではいられなくなり、なにより共同体も“魔女”を失うためタブーであるのです
“魔女が薬を与えて、引き止めもしなかったせいでラナは不幸な結末を迎えた”
と取る方もいるでしょうし、
“結末としてはああなったけれど、彼女自身が望み、そして憧れたもの達に触れる事が出来たのは薬のお陰ではある”
と思う方もいるでしょう
受け取った者がどうなるか、それを見た者がどう感じるか
それは人それぞれ、価値観によって千差万別な解釈があるでしょう
ただ、作者としては「悪役」や「被害者」を登場させたかった訳ではありません
“己の役割を全うする、ただそれだけの存在”として解釈し、配置したのです
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