原文
静かに思へば、よろづに過ぎにしかたの恋しさのみぞ、
せむかたなき。
人静まりて後、長き夜のすさびに、何となき具足とりしたため、
残し置かじと思ふ反古など破り棄つる中に、亡き人の手習ひ、
絵描きすさびたる、見出でたるこそ、ただその折の心地すれ。
このごろある人の文だに、久しくなりて、いかなる折、いつの
年なりけむと思ふは、あはれなるぞかし。手慣れし具足なども、
心もなくて変はらず久しき、いとかなし。
(第29段)
訳
心静かに思い出にふけると、何事につけ、過ぎた昔の恋しさ
だけがどうしようもなくつのってくる。
人の寝静まった後、秋の夜長の暇つぶしに、雑多な身の回りの
品々を整理して、保存する必要のない書き損じの紙などを破り
捨てる。その中に、今は亡き人が文字や絵を遊び書きしたものを
見つけると、一瞬にして心はその人が生きていた当時に戻って
しまう。今生きている人の手紙でさえ、月日がたって、これを
もらったのはいつの年でどんな時だったか、と思いをめぐらす
うちに、しみじみとした気分に引き込まれる。まして故人の使い
なれた道具類が、人情とは無関係に、いつまでも当時のまま
残っているのを見るのは、たまらなくせつないものだ。
『静かに思えば』を画仙紙のハガキに書きました。
お好きなフレームに入れて飾ってくださいね♪
母の日 父の日 長寿 誕生日 お礼
原文
静かに思へば、よろづに過ぎにしかたの恋しさのみぞ、
せむかたなき。
人静まりて後、長き夜のすさびに、何となき具足とりしたため、
残し置かじと思ふ反古など破り棄つる中に、亡き人の手習ひ、
絵描きすさびたる、見出でたるこそ、ただその折の心地すれ。
このごろある人の文だに、久しくなりて、いかなる折、いつの
年なりけむと思ふは、あはれなるぞかし。手慣れし具足なども、
心もなくて変はらず久しき、いとかなし。
(第29段)
訳
心静かに思い出にふけると、何事につけ、過ぎた昔の恋しさ
だけがどうしようもなくつのってくる。
人の寝静まった後、秋の夜長の暇つぶしに、雑多な身の回りの
品々を整理して、保存する必要のない書き損じの紙などを破り
捨てる。その中に、今は亡き人が文字や絵を遊び書きしたものを
見つけると、一瞬にして心はその人が生きていた当時に戻って
しまう。今生きている人の手紙でさえ、月日がたって、これを
もらったのはいつの年でどんな時だったか、と思いをめぐらす
うちに、しみじみとした気分に引き込まれる。まして故人の使い
なれた道具類が、人情とは無関係に、いつまでも当時のまま
残っているのを見るのは、たまらなくせつないものだ。
『静かに思えば』を画仙紙のハガキに書きました。
お好きなフレームに入れて飾ってくださいね♪
母の日 父の日 長寿 誕生日 お礼