第五話 レイナードと涙のしずくのネックレス

第五話 レイナードと涙のしずくのネックレス

公開日: 2025/03/03更新日: 2025/03/13
森の奥深く、小さな木々に囲まれた一角に、 小さなお店がひっそりと佇んでいます。 お店の名前は「pinoknit」。 店内には、色とりどりの刺繍糸が並び、 ふわりとした糸の香りが漂っています。 ある日のこと。 リリィは刺繍糸の仕入れに出かける途中、 一面にお花が咲き誇る花畑の真ん中で、 小さなキツネがうずくまっているのを見つけました。 「どうしたの?」 そっと声をかけると、キツネは顔を上げ、 涙をこぼしながら話してくれました。 「ぼく、大切な友達の宝物を壊しちゃったんだ……。」 キツネの名前はレイナード。 彼が落ち込んでいた理由は、 親友のリス――シリウスが大切にしていた 木の実の飾りを壊してしまったからでした。 「一緒に遊んでいたとき、枝から落としてしまって……。 木の実がバラバラになっちゃったんだ。」 レイナードの声は、申し訳なさで震えていました。 「謝りたいけど、 どうやって顔を合わせればいいのか分からなくて……。」 花畑の中でずっと悩んでいたレイナードは、 小さな前足でぎゅっと草を握りしめました。 「お花を持って謝ろうとは思ったんだけど…… 壊したぼくなんかが行っても シリウスに嫌われちゃうんじゃないかって思ったら、 どうしても動けなくて……。」 リリィはそっとレイナードの隣にしゃがみ込みました。 「大丈夫。 シリウスはきっとあなたが来てくれるのを待っているよ。」 そう言って、 リリィは胸元のネックレスに手を添えました。 「これはね、“雫のネックレス”。 勇気がほしいときに身につけると、 心の中にぽっと光が灯るの。」 優しく微笑みながら、 リリィは自分の首からネックレスを外し、 レイナードの首にかけてあげました。 「これをお守りにして、 シリウスのところへ行ってみよう?」 レイナードは驚いたようにネックレスを見つめ、 そっと前足で触れてみました。 冷たい雫の形の飾りが、 ふんわりと温かい気持ちを届けてくれるような… そんな気がしました。 「リリィ…。 ぼく……シリウスに謝りに行ってくる!」 レイナードはぎゅっとネックレスを握りしめると、 シリウスのもとへと駆け出しました。 リリィは優しく微笑みながら、 その背中をそっと見送ります。 それからしばらくして―― 「リリィ!」 元気いっぱいの声が、花畑に響きました。 振り向くと、 レイナードとシリウスが並んで立っています。 レイナードの目には涙が浮かんでいましたが、 今度は嬉しそうに輝いていました。 「ぼく、ちゃんと謝れたよ!」 「レイナードが勇気を出して来てくれたの、 すごく嬉しかった。 それに、大切なものを壊したくらいで 君のことを嫌いになるわけないじゃないか。 壊れたなら直せばいいだけだしね!」 シリウスはニコニコと笑いながら レイナードに伝えました。 「よかったね。」 リリィがそう言うと、 レイナードは少し照れくさそうに ネックレスを撫でました。 「このネックレスのおかげで、勇気が出たんだ。」 「レイナード、そのネックレスはね、 あなたの背中をちょっと押しただけよ。」 リリィ言葉に レイナードは驚きながらも なんだか嬉しそうに微笑んでいます。 ネックレスの雫が、 花畑にきらりと光を落としました。 それはまるで、 勇気を出したレイナードの心が輝いた証のよう。 こうして、リリィの贈ったネックレスは、 レイナードの大切なお守りとなったのでした。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 《 レイナードと涙のしずくのネックレス 》 アイテム紹介 ・夏のしずくのネックレス https://minne.com/items/37131596 ・秋のしずくのネックレス https://minne.com/items/37131746 ・冬のしずくのネックレス https://minne.com/items/37131689

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