木製です!
お盆、終戦記念日、いろいろありますが…
「ちいちゃんのかげおくり」は1982年に発行された、あまんきみこさんの作品です。
昭和61年ごろから小学3年生の教科書に載り始めました。
「火垂るの墓」の節子ちゃんを彷彿させる。
後半部分
その夜、ちいちゃんは、ざつのうの中に入れてあるほしいいを、少し食べました。
そして、こわれかかった暗いぼうくうごうの中で、ねむりました。
「お母ちゃんとお兄ちゃんは、きっと帰ってくるよ」
くもった朝が来て、昼がすぎ、また、暗い夜が来ました。ちいちゃんは、ざつのうの中のほしいいを、また少しかじりました。
そして、こわれかかったぼうくうごうの中でねむりました。
明るい光が顔に当たって、目がさめました。
「まぶしいな」
ちいちゃんは、暑いような寒いような気がしました。ひどくのどがかわいています。いつの間にか、太陽は、高く上がっていました。
そのとき、
「かげおくりのよくできそうな空だなあ」
というお父さんの声が、青い空からふってきました。
「ね、今、みんなでやってみましょうよ」
というお母さんの声も、青い空からふってきました。
ちいちゃんは、ふらふらする足をふみしめて立ち上がると、たった一つのかげぼうしを見つめながら数えだしました。
「ひとうつ、ふたあつ、みいっつ」
いつの間にか、お父さんのひくい声が、重なって聞こえだしました。
「ようっつ、いつつう、むうっつ」
お母さんの高い声も、それに重なって聞こえだしました。
「ななあつ、やあっつ、ここのうつ」
お兄ちゃんのわらいそうな声も、重なってきました。
「とお」
ちいちゃんが空を見上げると、青い空に、くっきりと白いかげが四つ。
「お父ちゃん」
ちいちゃんはよびました。
「お母ちゃん。お兄ちゃん」
そのとき、体がすうっとすきとおって、空にすいこまれていくのが分かりました。
一面の空の色。ちいちゃんは、空色の花畑の中に立っていました。見回しても、花畑。
「きっと、ここ、空の上よ」
と、ちいちゃんは思いました。
「ああ、あたし、おなかがすいて軽くなったから、ういたのね」
そのとき、向こうから、お父さんとお母さんとお兄ちゃんが、わらいながら歩いてくるのが見えました。
「なあんだ、みんな、こんな所にいたから、来なかったのね」
ちいちゃんは、きらきらわらいだしました。わらいながら、花畑の中を走りだしました。
夏のはじめのある朝、こうして、小さな女の子の命が、空にきえました。
それから、何十年。
町には、前よりもいっぱい家がたっています。
ちいちゃんが一人でかげおくりをした所は、小さな公園になっています。
青い空の下、今日も、お兄ちゃんやちいちゃんぐらいの子どもたちが、きらきらわらい声を上げて、遊んでいます。
………
木製です!
お盆、終戦記念日、いろいろありますが…
「ちいちゃんのかげおくり」は1982年に発行された、あまんきみこさんの作品です。
昭和61年ごろから小学3年生の教科書に載り始めました。
「火垂るの墓」の節子ちゃんを彷彿させる。
後半部分
その夜、ちいちゃんは、ざつのうの中に入れてあるほしいいを、少し食べました。
そして、こわれかかった暗いぼうくうごうの中で、ねむりました。
「お母ちゃんとお兄ちゃんは、きっと帰ってくるよ」
くもった朝が来て、昼がすぎ、また、暗い夜が来ました。ちいちゃんは、ざつのうの中のほしいいを、また少しかじりました。
そして、こわれかかったぼうくうごうの中でねむりました。
明るい光が顔に当たって、目がさめました。
「まぶしいな」
ちいちゃんは、暑いような寒いような気がしました。ひどくのどがかわいています。いつの間にか、太陽は、高く上がっていました。
そのとき、
「かげおくりのよくできそうな空だなあ」
というお父さんの声が、青い空からふってきました。
「ね、今、みんなでやってみましょうよ」
というお母さんの声も、青い空からふってきました。
ちいちゃんは、ふらふらする足をふみしめて立ち上がると、たった一つのかげぼうしを見つめながら数えだしました。
「ひとうつ、ふたあつ、みいっつ」
いつの間にか、お父さんのひくい声が、重なって聞こえだしました。
「ようっつ、いつつう、むうっつ」
お母さんの高い声も、それに重なって聞こえだしました。
「ななあつ、やあっつ、ここのうつ」
お兄ちゃんのわらいそうな声も、重なってきました。
「とお」
ちいちゃんが空を見上げると、青い空に、くっきりと白いかげが四つ。
「お父ちゃん」
ちいちゃんはよびました。
「お母ちゃん。お兄ちゃん」
そのとき、体がすうっとすきとおって、空にすいこまれていくのが分かりました。
一面の空の色。ちいちゃんは、空色の花畑の中に立っていました。見回しても、花畑。
「きっと、ここ、空の上よ」
と、ちいちゃんは思いました。
「ああ、あたし、おなかがすいて軽くなったから、ういたのね」
そのとき、向こうから、お父さんとお母さんとお兄ちゃんが、わらいながら歩いてくるのが見えました。
「なあんだ、みんな、こんな所にいたから、来なかったのね」
ちいちゃんは、きらきらわらいだしました。わらいながら、花畑の中を走りだしました。
夏のはじめのある朝、こうして、小さな女の子の命が、空にきえました。
それから、何十年。
町には、前よりもいっぱい家がたっています。
ちいちゃんが一人でかげおくりをした所は、小さな公園になっています。
青い空の下、今日も、お兄ちゃんやちいちゃんぐらいの子どもたちが、きらきらわらい声を上げて、遊んでいます。
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