皮革という素材には色々な要素が絡んでおり、調べるほどにわからなくなり、特に環境意識の高い方から、使っていいものか不安に感じるというご相談を頂くことがあります。
結論から言うと、エコロジーという軸において、牛革は安心してお使いいただけます。
むしろ、牛革は『使わない方が環境に悪い』というおかしな事態が起き始めました。
そこで、よくいただく疑問と、皮革をつくる業界が抱える深刻な課題、そんなねじれ現象が起きてしまった背景と理由を、お店としては話しにくいことも含めてお伝えします。
Q.皮革って副産物なんだよね..?
A.今、生産される牛・豚の皮革は世界でも殆ど100%、お肉の副産物です。
競りに出る前の管理状況を完全には追えないため殆ど、という表現をしていますが、数字を見ると
『副産物でない』革を生産する理由がないことが分かります。
画像2をご覧ください。
原皮は、鞣し等の加工の前の、お肉と皮を分けただけの状態のものです。
東京大阪の卸売市場で牛原皮は、 10円/枚 で取引されています。
成牛になると、その皮は畳よりずっと大きいです。それが、10円です。
原皮のために牛・豚を生育する理由はもうありません。
比喩ではなく、余るほどあります。余りすぎて環境問題になるほどに。
(データ・画像は全農ミートフーズ様より引用)
Q.ではなぜ皮革は高価な素材なの?
A.お肉から切り分けた『皮』はいわば原料で、使える状態の『革』に加工するにはとても手間がかかるからです。広い土地や設備、経験豊富な職人も必要です。
革の価格の中で原材料の割合は低く、人件費、設備費、運送費、保管費が殆どです。
Q.ならどんどん皮革に加工すれば安くできるし、余ることもないよね?
A.皮革や皮革製品の需要不足と、皮革産業の深刻な人手不足によりそれは出来なくなってきました。
皮を革に加工するのは、屠畜解体業、タンナー業です。
(話があまりに長くなってしまうので、皮を使える素材にして鞣す人、タンナーのお話からに絞ります。)
皮は、肉と同様、未処理のままでは腐敗を起こすので保存できません。しかしタンナーの生産力には限界があり、出た原皮全てを受け入れて加工することはできません。既にタンナーはパンク寸前まで働いています。
その上、タンナーは年々数が減っています。
新規参入が難しいこと、職業としての認知度の低さ、生物由来の素材を扱うため臭いが強かったり、肉体を使う仕事であること、国によっては歴史由来の差別もいまだあることも。脱炭素やヴィーガン思想が強まる時勢、皮革産業はそぐわないという偏った社会の認識も原因です。
タンナーが生産した皮革の買い手は限られます。
私たち革製品を作る人は、お買い求めいただける分しか物を作ることは出来ません。
欧米を中心に皮革の買い手は減少しています。価格、ファッションの方向性、印象、毛皮とのイメージの混同、主に製靴業界のハイテク素材移行による影響が大きいです。
日本のタンナーの従業員は、50代以上が50%。これから担い手不足はより深刻になります。
設備や仕組みを刷新し生産を効率化することも、縮小する市場の中では困難です。
Q.牛は環境に悪いと聞くから、仕方ないことなんじゃない?
時代に合わないものは減っていくものでは?
A.牛は必要とする穀物・水資源・排出する温室効果ガス等々全てほかの家畜動物より多く、これからの世界人口を支えるには環境負荷が高すぎるのは事実です。段階的に牛肉の消費量を減らす事には、牛革製品を扱う身としても異論はありません。
しかし、『イメージ』の波及する速度と、現実が遠く離れすぎてしまったんです。
世界的に見ると、牛・豚肉の消費量は理想とは裏腹に今なお、増え続けています。
逆に、食肉の副産物、原皮の廃棄量は増え続けています。
2020年、USAの食肉や皮革加工業からなる協議会、LHCAは、大規模な調査により世界の牛皮の45%が廃棄されていると発表しました。枚に換算すると、年に1億5000万枚以上!の原皮が廃棄されています。
また、原皮を鞣して加工した方が、廃棄より二酸化炭素の排出量を約5分の1に抑えられるとも試算しています。
近年、お肉と皮の消費量バランスには、明らかにひずみが出ています。
これは、理想と現実の足並みが揃わないことで生まれた新たな環境問題です。
タンナーが廃業してしまったら、有史以前から人と共にあった丈夫で美しい素材の材料、原皮は、『捨てるもの』になります。
実は、現時点では、皮革は使うほうがずっとエコな素材です。
皮革という素材には色々な要素が絡んでおり、調べるほどにわからなくなり、特に環境意識の高い方から、使っていいものか不安に感じるというご相談を頂くことがあります。
結論から言うと、エコロジーという軸において、牛革は安心してお使いいただけます。
むしろ、牛革は『使わない方が環境に悪い』というおかしな事態が起き始めました。
そこで、よくいただく疑問と、皮革をつくる業界が抱える深刻な課題、そんなねじれ現象が起きてしまった背景と理由を、お店としては話しにくいことも含めてお伝えします。
Q.皮革って副産物なんだよね..?
A.今、生産される牛・豚の皮革は世界でも殆ど100%、お肉の副産物です。
競りに出る前の管理状況を完全には追えないため殆ど、という表現をしていますが、数字を見ると
『副産物でない』革を生産する理由がないことが分かります。
画像2をご覧ください。
原皮は、鞣し等の加工の前の、お肉と皮を分けただけの状態のものです。
東京大阪の卸売市場で牛原皮は、 10円/枚 で取引されています。
成牛になると、その皮は畳よりずっと大きいです。それが、10円です。
原皮のために牛・豚を生育する理由はもうありません。
比喩ではなく、余るほどあります。余りすぎて環境問題になるほどに。
(データ・画像は全農ミートフーズ様より引用)
Q.ではなぜ皮革は高価な素材なの?
A.お肉から切り分けた『皮』はいわば原料で、使える状態の『革』に加工するにはとても手間がかかるからです。広い土地や設備、経験豊富な職人も必要です。
革の価格の中で原材料の割合は低く、人件費、設備費、運送費、保管費が殆どです。
Q.ならどんどん皮革に加工すれば安くできるし、余ることもないよね?
A.皮革や皮革製品の需要不足と、皮革産業の深刻な人手不足によりそれは出来なくなってきました。
皮を革に加工するのは、屠畜解体業、タンナー業です。
(話があまりに長くなってしまうので、皮を使える素材にして鞣す人、タンナーのお話からに絞ります。)
皮は、肉と同様、未処理のままでは腐敗を起こすので保存できません。しかしタンナーの生産力には限界があり、出た原皮全てを受け入れて加工することはできません。既にタンナーはパンク寸前まで働いています。
その上、タンナーは年々数が減っています。
新規参入が難しいこと、職業としての認知度の低さ、生物由来の素材を扱うため臭いが強かったり、肉体を使う仕事であること、国によっては歴史由来の差別もいまだあることも。脱炭素やヴィーガン思想が強まる時勢、皮革産業はそぐわないという偏った社会の認識も原因です。
タンナーが生産した皮革の買い手は限られます。
私たち革製品を作る人は、お買い求めいただける分しか物を作ることは出来ません。
欧米を中心に皮革の買い手は減少しています。価格、ファッションの方向性、印象、毛皮とのイメージの混同、主に製靴業界のハイテク素材移行による影響が大きいです。
日本のタンナーの従業員は、50代以上が50%。これから担い手不足はより深刻になります。
設備や仕組みを刷新し生産を効率化することも、縮小する市場の中では困難です。
Q.牛は環境に悪いと聞くから、仕方ないことなんじゃない?
時代に合わないものは減っていくものでは?
A.牛は必要とする穀物・水資源・排出する温室効果ガス等々全てほかの家畜動物より多く、これからの世界人口を支えるには環境負荷が高すぎるのは事実です。段階的に牛肉の消費量を減らす事には、牛革製品を扱う身としても異論はありません。
しかし、『イメージ』の波及する速度と、現実が遠く離れすぎてしまったんです。
世界的に見ると、牛・豚肉の消費量は理想とは裏腹に今なお、増え続けています。
逆に、食肉の副産物、原皮の廃棄量は増え続けています。
2020年、USAの食肉や皮革加工業からなる協議会、LHCAは、大規模な調査により世界の牛皮の45%が廃棄されていると発表しました。枚に換算すると、年に1億5000万枚以上!の原皮が廃棄されています。
また、原皮を鞣して加工した方が、廃棄より二酸化炭素の排出量を約5分の1に抑えられるとも試算しています。
近年、お肉と皮の消費量バランスには、明らかにひずみが出ています。
これは、理想と現実の足並みが揃わないことで生まれた新たな環境問題です。
タンナーが廃業してしまったら、有史以前から人と共にあった丈夫で美しい素材の材料、原皮は、『捨てるもの』になります。
実は、現時点では、皮革は使うほうがずっとエコな素材です。