拝啓、親愛なるヤマダさん。
という書き出しから始めたのは、この本が、その人物に向けたラブレターに他ならないからである。ヤマダさんとの出会いはもう十五年も前、わたしたちが京都の美術大学に通っていた時。わたしとせんみは同じ学部で同じ科の同級生、ヤマダさんは大学の技術職員だった。ヤマダさんがどういう人かという説明は一口では難しく、例えばある印象的なエピソードはこう。
「あ、いいこと思いついた」から始まるその人の突飛な話はいつものことで、こういう時は大概いいことな試しがない。「天井から扇風機を吊るすんですよ。スイッチ入れたら風で扇風機が自分で回り出すんです。面白くないですか?」わたしが何の相談をして、このふざけた回答が返ってきたのかは定かではないが、やけに愉快そうに話すヤマダさんのこのシュールなアイデアを、十五年経った今でもよく覚えている。
(ヤマダさん、布団で寝てください。前書き)
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美大時代にお世話になったヤマダさんは、
家に布団も冷蔵庫もありませんでした。
フィクションのようなノンフィクション。
nenneとkehaiの二人が、美大生時代のリリーとせんみとして、大好きなある人について綴った一冊です。
突拍子もないアイデアを口にしては楽しそうにからりと笑い、何時間も課題の相談に乗ってくれて、謎に包まれた私生活を送っていて、大学4年間いつも私たちの心の支えだった。独特でシュールであったかくて愛おしいヤマダさん。きっと読んでくれたあなたも癖になる、はず。
B6 / 32ページ
拝啓、親愛なるヤマダさん。
という書き出しから始めたのは、この本が、その人物に向けたラブレターに他ならないからである。ヤマダさんとの出会いはもう十五年も前、わたしたちが京都の美術大学に通っていた時。わたしとせんみは同じ学部で同じ科の同級生、ヤマダさんは大学の技術職員だった。ヤマダさんがどういう人かという説明は一口では難しく、例えばある印象的なエピソードはこう。
「あ、いいこと思いついた」から始まるその人の突飛な話はいつものことで、こういう時は大概いいことな試しがない。「天井から扇風機を吊るすんですよ。スイッチ入れたら風で扇風機が自分で回り出すんです。面白くないですか?」わたしが何の相談をして、このふざけた回答が返ってきたのかは定かではないが、やけに愉快そうに話すヤマダさんのこのシュールなアイデアを、十五年経った今でもよく覚えている。
(ヤマダさん、布団で寝てください。前書き)
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美大時代にお世話になったヤマダさんは、
家に布団も冷蔵庫もありませんでした。
フィクションのようなノンフィクション。
nenneとkehaiの二人が、美大生時代のリリーとせんみとして、大好きなある人について綴った一冊です。
突拍子もないアイデアを口にしては楽しそうにからりと笑い、何時間も課題の相談に乗ってくれて、謎に包まれた私生活を送っていて、大学4年間いつも私たちの心の支えだった。独特でシュールであったかくて愛おしいヤマダさん。きっと読んでくれたあなたも癖になる、はず。
B6 / 32ページ