フィンランドのモダンアートを代表する巨匠ルート・ブリュックの一点物の作品です。
本作はブリュックの壮年期にあたる1950年代後半頃に製作された陶板です。厚みのある正方形のタイルに深いエメラルドグリーンの釉薬が掛けられた"Tuhkavati"という作品名の陶板となります。"Tuhkavati"とはフィンランド語で「灰皿」を意味する単語で、本作は実際に灰皿としての用途で作られたものです(本品は灰皿としての使用歴はありません)。
作者のルート・ブリュックは20世紀中葉のARABIA社に在籍したアーティストです。当時はヒルッカ・リーサ・アホラやグンヴァル・オリン・グロンクヴィストなど、アトリエ作品を主とした個性派の作家が多くいましたが、ブリュックはその中でも異彩を放っていました。
ARABIA社のアトリエ作品とは、大量生産で作られる陶器製品とは異なり、社内に別枠で設けられた工房で裁量を与えられたアーティストたちが一点物の作品を作り上げ、世に売り出したものです。販売先は一般にはアクセスできるものではなく、知人関係や得意先など、通常の店頭に並ぶ製品とは異なる市場に流れていたようです。
こうしたアトリエは1970年代には閉鎖され、以降は大量生産品にシフトした会社を尻目に独立したアーティストが独自のルートで制作販売した作品が現代まで残っています。
本作はまだARABIA社に在籍していた当時のルート・ブリュックがスタジオで制作した作品となります。背面に”BRYK ARABIA”という本人のサインが刻まれているのがその証左となります。
【作品の特徴】
本作は灰皿としては未使用のアート作品となります。
中央のタバコ置きの部分には、緑色の釉薬がかかっており焦げ付かないように配慮されていますが、周辺の縁は素焼きとなっています。そして素焼き部分には、独特な手描きによる紋様が描かれています。中央の釉薬部と周縁の素焼き部分は少しだけ小高くなった凸部が縁切りをしており、その縁切りの囲いにも数ミリごとに紋様が刻まれています。
ルート・ブリュックは非常に精緻な造形を得意としたアーティストですが、本作のような小作品でもまったく手を抜かずに制作に打ち込んだことが分かります。
中央のくぼみ内部の造形は緑色の釉薬にも厚みの差があります。蝶の羽のように▶◀が展開された部分は厚めに釉薬がかかる一方で、薄めに塗られた上下の▼と▲部分は、薄いエメラルドグリーンのなかにドットが描かれています。
背面は一面が青に近いエメラルドグリーンの釉薬によって装飾されています。縁周りに見える一つひとつの目玉のような円はすべて手描きで描かれており、背面縁の細かな縦線も全てブリュックの手作業によって引かれたものとなります。
本作の最大の謎はその焼成プロセスにあります。通常、釉薬は重力に従って上から下に自然に垂れるように落ちるために、窯の内部で溶解した釉薬がしずくのように不規則に垂れかかります。
しかし、本作は背面がエメラルドグリーンの釉薬によって一面にコーティングされている一方で、前面は素焼きと釉薬部分が分かれて存在し、さらに前面の中央部分は、蝶々の形に厚めと薄めに釉薬が塗り分けられています。
一つの焼き物を作るうえで、このように背面にも均等に釉薬を施したうえで、表面にも素焼きと釉薬の塗り分けを行うことは極めて高度な焼成技術を必要とします。本作は、どのような工程で作られたのかもわからない謎が多い作品と評してよいものです。
ルート・ブリュック作品は数あるARABIA社のアトリエ作品のなかでも、とりわけ時間をかけて製造されたもので、一点一点に神秘や宇宙が詰まっているといっても過言ではありません。
ブリュック作品は近年では評価が高まっていることもあり、その作品は世界的に入手が困難で価格も高騰しています。本作は値段相応に価値がある作品です。この機会にぜひご覧ください。
■詳細スペック
メーカー:ARABIA / アラビア
デザイナー:Rut Bryk / ルート・ブリュック
年代:1950年代後半
生産国:フィンランド
コンディション:
欠けや割れはなく、ヴィンテージ品として非常に良好な状態です。製造当時のオリジナルのコンディションを留めた完品です。
■サイズ
縦11.4 cm × 横11.3 cm × 高さ約2cm(公称は12×12 cmの陶板です )
フィンランドのモダンアートを代表する巨匠ルート・ブリュックの一点物の作品です。
本作はブリュックの壮年期にあたる1950年代後半頃に製作された陶板です。厚みのある正方形のタイルに深いエメラルドグリーンの釉薬が掛けられた"Tuhkavati"という作品名の陶板となります。"Tuhkavati"とはフィンランド語で「灰皿」を意味する単語で、本作は実際に灰皿としての用途で作られたものです(本品は灰皿としての使用歴はありません)。
作者のルート・ブリュックは20世紀中葉のARABIA社に在籍したアーティストです。当時はヒルッカ・リーサ・アホラやグンヴァル・オリン・グロンクヴィストなど、アトリエ作品を主とした個性派の作家が多くいましたが、ブリュックはその中でも異彩を放っていました。
ARABIA社のアトリエ作品とは、大量生産で作られる陶器製品とは異なり、社内に別枠で設けられた工房で裁量を与えられたアーティストたちが一点物の作品を作り上げ、世に売り出したものです。販売先は一般にはアクセスできるものではなく、知人関係や得意先など、通常の店頭に並ぶ製品とは異なる市場に流れていたようです。
こうしたアトリエは1970年代には閉鎖され、以降は大量生産品にシフトした会社を尻目に独立したアーティストが独自のルートで制作販売した作品が現代まで残っています。
本作はまだARABIA社に在籍していた当時のルート・ブリュックがスタジオで制作した作品となります。背面に”BRYK ARABIA”という本人のサインが刻まれているのがその証左となります。
【作品の特徴】
本作は灰皿としては未使用のアート作品となります。
中央のタバコ置きの部分には、緑色の釉薬がかかっており焦げ付かないように配慮されていますが、周辺の縁は素焼きとなっています。そして素焼き部分には、独特な手描きによる紋様が描かれています。中央の釉薬部と周縁の素焼き部分は少しだけ小高くなった凸部が縁切りをしており、その縁切りの囲いにも数ミリごとに紋様が刻まれています。
ルート・ブリュックは非常に精緻な造形を得意としたアーティストですが、本作のような小作品でもまったく手を抜かずに制作に打ち込んだことが分かります。
中央のくぼみ内部の造形は緑色の釉薬にも厚みの差があります。蝶の羽のように▶◀が展開された部分は厚めに釉薬がかかる一方で、薄めに塗られた上下の▼と▲部分は、薄いエメラルドグリーンのなかにドットが描かれています。
背面は一面が青に近いエメラルドグリーンの釉薬によって装飾されています。縁周りに見える一つひとつの目玉のような円はすべて手描きで描かれており、背面縁の細かな縦線も全てブリュックの手作業によって引かれたものとなります。
本作の最大の謎はその焼成プロセスにあります。通常、釉薬は重力に従って上から下に自然に垂れるように落ちるために、窯の内部で溶解した釉薬がしずくのように不規則に垂れかかります。
しかし、本作は背面がエメラルドグリーンの釉薬によって一面にコーティングされている一方で、前面は素焼きと釉薬部分が分かれて存在し、さらに前面の中央部分は、蝶々の形に厚めと薄めに釉薬が塗り分けられています。
一つの焼き物を作るうえで、このように背面にも均等に釉薬を施したうえで、表面にも素焼きと釉薬の塗り分けを行うことは極めて高度な焼成技術を必要とします。本作は、どのような工程で作られたのかもわからない謎が多い作品と評してよいものです。
ルート・ブリュック作品は数あるARABIA社のアトリエ作品のなかでも、とりわけ時間をかけて製造されたもので、一点一点に神秘や宇宙が詰まっているといっても過言ではありません。
ブリュック作品は近年では評価が高まっていることもあり、その作品は世界的に入手が困難で価格も高騰しています。本作は値段相応に価値がある作品です。この機会にぜひご覧ください。
■詳細スペック
メーカー:ARABIA / アラビア
デザイナー:Rut Bryk / ルート・ブリュック
年代:1950年代後半
生産国:フィンランド
コンディション:
欠けや割れはなく、ヴィンテージ品として非常に良好な状態です。製造当時のオリジナルのコンディションを留めた完品です。
■サイズ
縦11.4 cm × 横11.3 cm × 高さ約2cm(公称は12×12 cmの陶板です )