おでかけ

幻想的な空間に癒される。谷中の“ステンドグラス店”「nido」

街中で見つけた、手づくりならではの味わいがある作品が並ぶ、素敵なショップをご紹介します。今回訪れたのは、街散歩としても人気の谷根千(やねせん)にお店を構える「nido」。日本では珍しい、オリジナルステンドグラスを扱っているお店です。

観光客にも人気の街散歩スポット「谷根千」こと、谷中、根津、千駄木エリア。個性溢れるお店が立ち並ぶ中、よみせ通り沿いを歩くと、足元に小さな看板が。

奥へ進むと、ぽうっと光が漏れる、隠れ家のようなお店にたどり着きました。

非日常へ誘うステンドグラス

扉を開けると、店内は色とりどりのステンドグラスに彩られていました。独特のムードがある色味を、アンティークのインテリアたちがより一層引き立てます。

絵本の1ページのような空間があちらこちらに広がっていて、あっという間に非日常に引き込まれました。

ゆらめくように、やさしく灯るランプたち。

窓辺には、光を集めて表情を変えるオーナメントや、小ぶりながら存在感を放つキャンドルホルダー。

身につけてたのしめる、ちょっぴりレトロでかわいいガラスのアクセサリーも充実していました。

店内には年に2回ほどテーマに合わせた新作が並ぶそう。

最近は「Botanic」をテーマに、お花をモチーフにした作品が登場。過去には本などをモチーフにした「Quiet Time」、アルファベットなどをモチーフにした「Letter展」など、テーマのひとつひとつにこのお店の世界観を感じることができます。

やさしく溶け込む灯火

ステンドグラスというと、赤や青などビビッドな色味のイメージがありませんか?
nidoに並ぶステンドグラスは、どれもどこかやわらかい色使いが特徴です。

手がけているのは、コンテンポラリーガラス作家の真野江利子さん(左)と矢口恭子さん(右)です。

旅行で訪れたフランスの教会で、ステンドグラスの美しさに感動したことをきっかけに、ステンドグラスの道に進むことを決意したという矢口さん。フランスの古典技法を学び、ステンドグラスの工房勤務を経て独立。

一方の真野さんは、矢口さんの妹の同級生で、昔から趣味でものづくりを一緒にたのしんでいた仲。矢口さんのステンドグラス制作に刺激を受け、今ではユニットとして活動されています。

nidoのステンドグラスのこだわりは「もともとそこにあったようなデザイン」であること。

「やさしさやなつかしさのある色使いやデザインで、どんな場所にもすっと馴染むものを、という想いで自由につくっています」と矢口さん。

ちなみに「nido」という名前はスペイン語で“鳥の巣”“隠れ家”という意味があるそうです。nidoがこの地にオープンして15年。これまでにたくさんのステンドグラスがここで生まれ、巣立って行きました。

わたしだけの彩り

実は2人の定位置はギャラリーから見える小窓の奥。

アトリエスペースになっているということで、特別にお邪魔させていただきました。

アトリエの窓には、古典技法である絵付けを取り入れて制作された、大きなステンドグラスが飾られています。

「ステンドグラスの“ステンド”は“ステイン”=汚すという意味からきています。厳密にはガラスの上に色をのせたり、線を描いたり、絵付けをほどこしたものをステンドグラスというんですよ」

矢口さんがステンドグラスの学校で制作した作品は、絵画のような繊細なデザイン。オーストラリアのワイルドフラワーをモチーフに、絵付けがほどこされています。

ここで、ステンドグラスならではの道具をすこし見せていただくことに。

ステンドグラス用の色ガラスは日本では製造されていないそう。すべてアメリカ、ヨーロッパからの輸入品です。色数は無数にあるものの、ガラスの溶け具合でさらに色が変化するため、完成形を計算しながら選んでいきます。

ガラスを焼く電気炉は矢口さんのお気に入りの道具。一度中にガラスを入れたら最低でも10時間は開けることができません。「待つ時間」も制作のたのしみのひとつ。

ガラスを溶接するためのハンダゴテと銅テープ。ステンドグラス制作には欠かせない道具です。

ガラスを切ったり、貼ったり、溶かしたり。細かい作業がつづく中で、いちばん好きな瞬間を聞いてみました。

「電気炉からあがって完成したときですね。色ガラスは1枚でもキレイだけれど、隣にどんな色を合わせるかでガラッと印象が変わるんですよ」と矢口さん。

「平面から立体になったときの、ハッとするような美しさに毎回おどろかされます。イメージしていた通りの色でうれしいときもありますし、意外な色に仕上がるときもおもしろい」と真野さん。

つくり手のセンスと、ガラスの溶け具合による偶然とによって生まれるステンドグラスはどれもまさに一点ものです。

ステンドグラスのある生活

nidoではご自宅や公共の施設に向けた、ランプやパネルの受注制作も行なっています。いつもの空間に一点、ステンドグラスをプラスするだけで、癒しの雰囲気が漂うそう。

「ガラスの魅力は色あせないこと、ステンドグラスの魅力は1日中、光とともにたのしめることです。朝の自然光から、夜のお部屋の明かりまで、異なる表情をたのしむことができますよ」と矢口さん。

お部屋のコーナーや狭い空間にステンドグラスを添えて、影をたのしむのもおすすめだそうです。

「ステンドグラスはそのものだけでなく、空間までつくってくれるというのも魅力ですね」と真野さん。

「いつか、最初にステンドグラスに出会ったフランスで展示をするのが夢なんです」と語る2人。すでにファンを多く抱えるnidoの夢が叶う日はそう遠くないに違いありません。

nidoでは作品販売の他に、端ガラスを使ったステンドグラスのワークショップも毎月開催されています。ペンダントライトやミラー、キャンドルホルダーなどを制作することができます。みなさんもギャラリーに足を運んで、またはアトリエのワークショップに参加をして、毎日の暮らしにぜひ、ステンドグラスを取り入れてみてはいかがでしょうか。

nido(ニド)
住所:東京都台東区谷中3−13−6
営業時間:11:00-19:00 
定休日:水曜日
HP:http://nido.in.coocan.jp/

nidoのポップアップショップが登場します
2019年2月1日〜5月末まで、東急ハンズ渋谷本店 4AインテリアSTUDIOのライティング紹介スペースにて、nidoのランプや小物が展示販売されます。

期間中はテーマを変えたワークショップを4回開催。
2月16日(土)オーナメント、3月9日(土)手鏡、4月6日(土)キャンドルホルダー、5月3日(金)テーブルランプ。

詳細は東急ハンズ渋谷店のホームページをご覧ください。
https://shibuya.tokyu-hands.co.jp/hint_event.php

取材・文 / 西巻香織  撮影 / 真田英幸

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