インタビュー

布小物、バッグ作家・cleさん「“好き”をカタチにしたバッグ」

シンプルながらも大人かわいいエッセンスと機能性を合わせ持ち、“cle(クレ)らしさ”がキラリと光るバッグたち。それはデザイナーの松本さんが頭の中で思い描く“好き”が、相棒のミシンを通じてカタチとなってあらわれたものでした。

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日常のひとこまだった“ミシン”

庭にミモザが咲き誇るある冬の終わりの日、取材は行われました。

ミシンとの出会いをおしえてください。

cle
洋裁が得意だった祖母・母のもとで育ったわたしにとって、だれかがミシンをかけている風景は日常でした。幼いころからミシンの隣はわたしの特等席。祖母や母にぴたっとくっついて、ミシンをかけている姿をじっと眺めるのが大好きでした。

ご自身でも何かをつくったり…?

cle
いえ、わたしはもっぱら見る専門で(笑)。ミシンを手にしたのも、たまたま姉から譲りうけたミシンがきかっけでした。それが7年くらい前ですかね。

洋裁の学校に通われていたのかとばかり思っていました…!ミシンを譲り受けて、まずは何をつくられたのですか?

cle
自分の洋服をつくりました。パターンをひくことはできないので、市販の本に載っているつくり方を参考にしながら「ネックラインをもっと狭く」「もう少しだけ丈を長く」など、自分好みのシルエットにアレンジしていたんです。幼いころからの祖母や母の姿を見ていたからか、なぜだかスッとつくれたんですよね。


作家活動のスタート

スタートはバッグではなく、洋服だったんですね。

cle
そうなんです。それからしばらくして、出産を経験しました。初の子育てでわからないことだらけ。生まれてから3ヶ月は横になって寝た記憶がないくらい翻弄されていました。今思えば産後鬱気味になっていたように思います。そんなときに姉から「知り合いがフリマに出店してくれる人を探しているから、よかったらどう?」と声をかけられて。そういうことなら、前から挑戦してみたかったバッグをつくろう!と思ってつくってみたんです。

趣味の延長という感じだったんですね。

cle
そうですね。まだブランド名もなく、ただただつくりたいものをカタチにしたという感じでした。ちょうどそのころ、夫から「こんなサイトがあるよ」と、minneをおしえてもらったんです。すぐに登録して販売してみたら、ポンっと売れて。うれしくなってどんどんつくるようになりました(笑)。そこが作家生活のスタートでしたね。


手の中で生まれる作品たち

忙しい時期にお子さんからもらったというメッセージ。制作に行き詰まったときに眺めると「よし!がんばろう」と、いう気持ちになるのだそう。

育児との両立は大変だったのではないでしょうか?

cle
子どもが寝ている間にカッと集中してつくる、の繰り返しでしたね。ただ、ミシンを再開したことでどんどん心が晴れていくのを感じました。たのしくて仕方なかったです。しかも、その“たのしい”という気持ちは今でも継続しているんです。

ミシンの魅力はどんなところでしょう?

cle
自分の手の中で、どんどんカタチになっていく様子を見届けるのがとにかくたのしいですね。

どのようにして洋裁の技術を習得したのでしょうか?

cle
たまに本を見たりもしますが、基本的には試行錯誤しながら独学で習得しました。自分だったらこういうのがほしい、こうしたいというのを手を動かしながらカタチにしていった感じですね。

ここにたどり着くまでに苦労したことはありますか?

cle
生地の選び方ですね。たとえ色や質感がよくても生地が薄いと、くたっとなりすぎてしまうし、逆に厚いと重ねて縫うのが難しく、ミシンの針が折れてしまうなんてこともたびたびありました(笑)。


コーディネートに取り入れやすいバッグを

デザインはどのように考えているんですか?

cle
すべて頭の中なんです。なんとなく「次はこういうのをつくりたいな」というのがふわっと頭の中に浮かんで、それを実際に手を動かしながらカタチにしていきます。何かを参考にしたりというのがまったくなくて、自分がほしいもの、自分が使いたいものがすべての軸になっています。

生地の色選びも本当に素敵ですね。

cle
生地についても、自分好みかどうかで選んでいるのでまったく迷いがないです。基本的にはどんな洋服にも合わせやすいように落ち着いた色を選ぶことが多いのですが、たまに差し色になるようなヴィヴィッドなカラーの作品も制作しています。そのときも、生地の質感などにこだわりながら、なるべくいろいろなコーディネートにマッチする色をチョイスしています。

作品づくりにおいて大切にしていることは何ですか?

cle
バッグって中には毎日使う方もいるくらい、日常に寄り添うものだと思うので、とにかく丁寧に、丈夫につくるように心がけています。たとえば、こちらの トートバッグは、縫い代をバイアステープで包んで始末しています。 ロックミシンより見た目がきれいであることと、丈夫さを兼ね備えるためです。

普段、ご自身の作品を持ってお出かけされることもあるのでしょうか。

cle
はい、もちろんありますよ。自分で使うことによって、改善点が明確になったり、新たなアイデアをひらめいたりすることもあります。

最後に、今後の夢をおしえてください。

cle
とにかく、つくり続けることですね。それがいちばん難しいことだと思うので。あとは、今後はバッグだけではなく、洋服にもチャレンジし、さらにはリアル店舗での販売もしていければと考えています。

cle
布小物・バッグ作家。大人かわいくて機能的なバッグを中心に制作。
https://minne.com/@cle

取材・文 / 堀田恵里香  撮影 / 中村紀世志

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