「gravo」アートディレクター・甲斐さん
gravo… アートやデザインをもっと身近に感じられることで、日常に「Bravo!(ブラボー)」を届ける、アートブランド。「minneハンドメイドアワード2018」審査員特別賞受賞。
ギャラリーを見る「作品」が「ブランドの商品」になる。
2月某日。「ALLERGY BADGE(アレルギーバッジ)」の作り手である、gravoのアートディレクター・甲斐さんとともにBEAMS JAPAN バイヤーの鈴木さんとお会いしました。甲斐さんとお会いしたのは、これがはじめて。昨年の「minneハンドメイドアワード2018」の受賞式は、ご都合で出席いただくことが叶いませんでした。この日、商品化のお話をすすめるため、福岡からお越しいただいて実現した打ち合わせでした。
鈴木修司さんが選ぶ「鈴木修司賞」を受賞したgravoさんの作品
「ALLERGY BADGE(アレルギーバッジ)」審査会で鈴木さんが語られていた選定理由、それはまさに「たくさんの方に買っていただけそう、人気が出そう」というものでした。そして、この作品のゴールもまた「かたちとなって仕上がること」ではなく、「商品として普及し、課題を解決すること」にありました。
「ALLERGY BADGE(アレルギーバッジ)」には、子どもたちの「安全」への想いが込められています。
子どもは、一歩外に出ると「ごはん」や「おやつ」をもらう機会が多くありますが、そのすべてに親の目が届くとは限りません。アレルギー食品を第三者に伝えるための“バッジ”を身につけることで、誤ってアレルギー食品を摂取してしまう事故を防ぐ、それがこの「ALLERGY BADGE( アレルギーバッジ )」の目的です。
BEAMS JAPAN 鈴木修司さん
「“必要なもの”なのに、デザインがとってもスタイリッシュ、それでいてわかりやすい。ありそうでなかったですし、海外の方にもひと目で伝わる、という魅力もありますよね」
お話はすすみ、BEAMS JAPANでの販売に向けて、デザインを微調整し、パッケージを改めて制作することとなりました。
赤から橙色へ
福岡に構える、gravoさんのアトリエ。
どういった調整をおこなわれるんでしょうか?
甲斐さん
鈴木さんと相談して、赤色だったデザインをオレンジに変更することになったので、その色味を検討します。
これが、店頭やBEAMS JAPANのオンラインショップに並ぶんですね。
甲斐さん
このプロジェクトが決まったときは、大袈裟ではなく鳥肌がたちましたね、うれしくて。本当にありがたいです。
台紙もオレンジになるんですね。
甲斐さん
そうなんです。「BEAMS JAPAN」のロゴも入れます。違和感なく、しっくりきているのがうれしいですね。
実際の店舗、実際の棚
そして、完成した「商品」を持って再び、新宿にある「BEAMS JAPAN」の店舗にお邪魔しました。
今日は下見も兼ねて、鈴木さんと甲斐さんの想いをおうかがいしたくお邪魔しました。
鈴木さん
完成したんですね。入って正面の、いちばん目立つ棚に並べられればと思ってるので。「BEAMS JAPAN」の商品群の中に入ってもきっと違和感なく、「売れる!」と思って選んだ作品だったので、実現できることがぼくもうれしいです。
甲斐さん
ありがとうございます。10代のころから、BEAMSさんは憧れの会社だったので、本当に感慨深くて、感激で。
鈴木さん
そう言っていただけると、すごくうれしいんですけど、反面すごくプレッシャーでもありますよね(笑)。その立場を続けられるよう、がんばらないといけませんね。ひとまず、このバッジをたくさんの方に手にとってもらいましょうよ。
縁起のいい「BEAMSオレンジ」
完成品を手にとる鈴木さん。
鈴木さん
うん、完璧ですね。すごくいいと思います。かわいいですね。
やはり、「オレンジ」というのは「BEAMSカラー」ということでしょうか?
鈴木さん
もちろん、そのままでも充分素敵だったんですけど、せっかく一緒にやらせていただくので、なにか「BEAMS JAPAN」ぽさとのコラボができればいいなと思ったんです。オレンジ色=橙色(だいだい色)は「代々栄える」って言って、昔から縁起がいいとされている色なんですよ。鏡餅の上に乗っけたり、しめ飾りにつける「橙」と一緒ですね。それを取り入れていただきましたけど、違和感もなくてバッチリですね。
甲斐さん
パッケージの文字もオレンジにして、ロゴを入れました。裏は、中前さん(minne編集部)にも見ていただきたいんですが。
台紙の裏ですか?
台紙裏には「minne handmade award 2018 prize-winning works」の文字が。
なんと…感激です。ハンドメイドアワード受賞作品ということを記載いただいていたんですね…。gravoさんのロゴとBEAMS JAPANさんのロゴの下をつなげるように表記いただいているのが、また、本当にうれしいです。ありがとうございます。
甲斐さん
やっぱり、ハンドメイドアワードの受賞が、去年でいちばんうれしい出来事で、本当に転機になったと思うので。ちなみに、今回のこの商品化のお話が、今年いちばんうれしいことです(笑)。
鈴木さん
まだ3月だから、まだまだうれしいことありますよ!(笑)。でもこれも本当に「縁」ですもんね。「ハンドメイドアワード」は、どうしてご応募されたんですか?
実は、gravoさんのご応募には驚きの理由がありました。
「提案」をつくる
甲斐さん
鈴木さんが、審査員の中にいらっしゃったからなんですよね。もともと、この作品は1〜2ヶ月先に着手しようとしていた企画だったんです。ハンドメイドアワードの応募を検討しはじめたときには、すでにスケジュール的に厳しい状況だったんですが、鈴木さんが審査員の中にいらっしゃることを知って、「これは間に合わせよう」と急遽すすめました。
鈴木さん
それをぼくは、“まんまと”選んでしまったわけですね(笑)。
そういうことなんです。
鈴木さん
しかし、読み通りということですから、お見事ですね。
甲斐さん
やっぱり、これまでの受賞作品を拝見していても、たくさん手をかけてつくり込まれた素晴らしい作品が受賞していたので、自分の作品が「グランプリ」をいただくことは、まず無いだろうと思っていたんです。ただ、「すべてを手作業でつくったもの」とは言えないかもしれませんが、このプロダクトの価値は本当に伝えたい、届けたい、と思っていたので、たとえばBEAMS JAPANの鈴木さんなら、目に止めていただけるんではないかなと思いました。
鈴木さん
そこは、本当に一致しているように思いますね。去年のノミネート作品を拝見していても、「ハンドメイド」という定義がどんどん変わってきていることを感じたんです。この作品は、それを象徴する存在だと思いました。
この作品は、「提案だ」とおっしゃってましたね。
鈴木さん
そうなんですよね。「手でつくる」だけが「ものづくり」ではなくて、アイデアやデザインを丁寧につくり込んだものがあってもいいと思うんですよね。この作品を見て、買う人や使う人に対しての想いや気遣いが、たとえば、ひと針ひと針縫うようなものづくりと、なんら変わらない考え方でつくられていることがわかりましたし、「こういったものを使う世の中はどうですか?」と提案している。これからは「形のないもの」が「売りもの」になっていくと考えています。BEAMS JAPANも、商品を売ってはいますが、モノにまつわる「コト」や「文化」を提供していきたい、という気持ちがあるんですよね。そういう価値観の変化みたいなものを、この作品はわかりやすく説明してくれるような気がしました。
追い風吹く、第一歩
そして、それがもうすぐこのお店に並ぶ、と。
鈴木さん
おもしろいですよね。パッと見て、ユニバーサルなデザインですけど、どこか日本的な文化や風合いをちゃんと感じますよね。奥ゆかしいと言うのか、アレルギーは体に関わる大切なことなのに、なかなか周りに気遣って言い出せないひとにも届けたい、という日本的な課題と日本的な解決方法だからかもしれません。本当に、「BEAMS JAPANで取り扱いたい商品」です。
この店舗に並ぶことで、たくさんの方に手にとっていただきたいですね。
甲斐さん
そうですね。夢のようにうれしい話ですが、「世の中のスタンダードになってほしい」という願いがあるので、これはゴールではなくて追い風ですね。それも、強烈な追い風です。この商品は、普及して浸透して意味をなすものなので、「若葉マークつけているから初心者なんだ」と同じぐらいの認知を得られるようにがんばりたいですね。小学校で支給されるぐらいになれば、うれしいです。
これからの展開がたのしみですね。
まずは第一歩。4月下旬、gravoさんの夢がひとつ叶います。
gravoさんの作品が、BEAMS JAPAN 新宿本店で発売されます。
「minneハンドメイドアワード2018」審査員特別賞を受賞された、gravoさんのALLERGY BADGE( アレルギーバッジ )がBEAMS JAPAN 新宿本店にて4月下旬より発売開始となります。ラインナップは、バッジ全7種類とキーリング全7種類です。ぜひお立ち寄りください。
BEAMS JAPAN 新宿本店アクセス 取材・文 / 中前結花 撮影 / 真田英幸
(4,6,7,8枚目 撮影 / 中村紀世志)