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「あの作品」ヒストリー vol.4 ムシメセンさんの、日本の昆虫シリーズ

自身の代名詞ともいえるような、長年愛され続けている作品をもつ作家さんに、その作品の誕生秘話を語っていただく連載企画。第4回目は、虫アートディレクター、虫フォトグラファーのムシメセンさんと「日本の昆虫シリーズ」の登場です。

ムシメセン
虫の写真、虫をモチーフにしたイラストやデザインをもとに、作品を制作。文庫革でつくられた「日本の昆虫シリーズ」は、10年以上販売され続ける人気作品。
https://minne.com/@mushimesen
 

一度目にしたら忘れない、インパクトたっぷりの「日本の昆虫シリーズ」。リアルな虫モチーフながら、大人っぽい配色と上品なデザイン、上質な文庫革とがあいまって、多くの人の心をつかみ続けているロングセラーシリーズです。
 

今回は、そんなムシメセンさんの「日本の昆虫シリーズ」ヒストリーに迫りました。

「いつか」が「今」に


「日本の昆虫シリーズ」が生まれたきっかけをおしえてください。

ムシメセン
わたしが、とある和小物のお店の専属デザイナーをしていたときのこと。社長から「店舗オリジナルの文庫革をつくるので、デザインを考えてほしい」と言われ、和小物のお店らしく華やかな“和菓子柄”などを提案していたんです。ふと何気なく、「でもいつかは好きな昆虫柄でもつくってみたいなぁ…」とつぶやくと、「それ今、つくったら?」と言われて。

そんな後押しがあったんですね。和菓子柄と昆虫柄とでは、印象がずいぶんと異なりますね。

ムシメセン
そうですよね(笑)。わたしも思いがけず驚きましたけれど、とにかく昆虫が大好きだったので、とってもうれしくて。ただ、その頃「イラストはイラストレーターに依頼するもの」と固く信じていたので、昆虫のイラストはプロに任せるつもりでいたんです。ところが社長に「そんな予算はないから自分で描いて」と突き放されてしまい…。最初は本当に頭を抱えましたが、腹をくくって無心で昆虫を描きました。レイアウトも時間をかけて、すべての虫を何度もぐるぐるぐるぐる動かして。徹夜で仕上げたこともあり、「日本の昆虫シリーズ」完成時はかなりハイテンションだったことを覚えています(笑)。

真っ白な革に型押しでつくる“文庫革”と昆虫との組み合わせが新鮮。体をぐるりと動かして配置することで、さまざまな虫たちがぎゅっと集まるユニークなデザインに。

その後、和小物のお店の社長が代わったタイミングで、このシリーズ作品を自らが販売する権利を譲り受けたのだそう。作家名を「ムシメセン」とし、minneでの販売をスタートすると、たちまち人気に。


虫の魅力をアピール


「日本の昆虫シリーズ」は10年以上販売され、たくさんの方に愛される人気作品となりましたね。

ムシメセン
このまま制作を続けていくか悩むたびに「次もこの財布にするので絶対につくり続けてください」と言われたことを思い出します。イベント等では面と向かって「虫は気持ち悪い」など厳しい言葉を浴びせられることもあるのですが、「虫好きで虫モチーフのものを探していたけれど、今まで好きなデザインがなかった、やっと出会えた!」など、レビューやメッセージ等でいただく、minneのお客さまのうれしい言葉を思い出して制作しています。

「日本の昆虫シリーズ」は作品の展開もどんどん増えていますね。

ムシメセン
「自分が欲しいもの」を基準にデザイン展開をしていますが、最初は色味のバリエーションのみだったんです。「から錆(彩色のないもの)」から始まり、一匹だけ彩色を入れたもの、「オールスター9匹塗り」や「ラッキー7匹塗り」など彩色入りのバリエーション。その後、8色のカラーバリエーションを組み合わせた「アバンギャルド彩色ver.」をデザインし、販売から10周年を迎えた2018年には、一匹彩色とアバンギャルド彩色ver.を組み合わせた「記念カラーリング」を発表しました。

ムシメセン
同じく10周年記念をきっかけに、「日本の昆虫シリーズ」は文庫革以外にも展開を開始しました。トートバッグやアクリルキーホルダー・ブローチのほかに、虫のイラストをそれぞれ単独で使用したTシャツやトートバッグ、ペーパーアイテムやステッカーなど。今年は、本格的なアパレルへの展開も発表したいと考えているので、たのしみにしていただけたらうれしいです。

かなり豊富な展開ですね。持ちものをシリーズで統一するのも素敵そうです。最後に、今後の夢や目標をおしえてください。

ムシメセン
思いがけず自分を“ムシメセン”にした「日本の昆虫シリーズ」とともに、虫が好きな人をより虫好きに、虫が苦手な人を虫好きに変えてしまうようなものを、これからもたくさんつくっていきたいです。もっと虫のことを勉強して、さまざまな角度からアプローチできたらいいですね。6月4日(虫の日)生まれの3歳の娘を虫好きに育てていくことも目標のひとつです(笑)。

 
何気ないひと言が作品誕生のきっかけとなり、それから10年以上にわたり、人々に愛され続けているムシメセンさんの「日本の昆虫シリーズ」。色褪せない人気の秘密は、デザインを活かした作品のバリエーション展開にもあるのかもしれません。2020年夏には、新作の昆虫ピアスやイヤリングが登場予定なのだとか。ぜひギャラリーをチェックしてみてくださいね。

次回の作品ヒストリーもおたのしみに。

作品ギャラリーを見る
 

取材・文 / 西巻香織

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