大津絵に登場する鬼は、人間の愚かさと邪悪さの象徴である。
「風刺画」という事からもわかるように「鬼の寒念仏」では、僧侶の衣を着た鬼が偽善者の姿を表しています。
形だけ整えていたとしても、顔は鬼のまま、衣装や小道具だけを僧侶としても無駄だということです。
今ではあまり耳にしないけれど、「鬼の空念仏」という言葉があります。
大津絵の鬼、どちらが先に生まれたのかは分かりませんが、意味はほぼ同じで、
形だけ慈悲を装った冷酷な人を指す言葉です。
ちなみに、この「鬼の念仏」の鬼だけは、一角折りで描かれていますが、
これは人の「我」を表す角を折ることで、何らかの救いを示していると 言われています。