戸棚の奥から見つけた瓶詰めは、随分と昔に作られた物のようでした。
どのくらい前かは定かでありませんが、少なくとも私が修行していた頃、もしくはもっと前……。
私のお師匠が作ったものではないかと思います。
――お師匠の元で修行していたのはおよそ4年。
修行といってもお師匠は魔法を教えてくれるわけでもなく、薬の調合も「苦手だからさ」と見せてもくれませんでした。
私はというと、お師匠からのいいつけで、たまに訪れる魔法使いや不思議なお客様を相手に日々店番をしていました。
お師匠はよくいなくなる方で、「どこへお出かけされるんですか?」と聞くと、毎度同じく「ちょっとね」と言って風と共にいなくなり、数日後にふらっと帰ってきてはまたどこかへ行ってしまう……そんな方でした。
風が優しくそよぐあたたかな昼過ぎ、その日はなんとなく帰ってくるような気がして庭のラベンダーを摘んでハーブティーを淹れ、お師匠が好きな窓辺の椅子にカップを置くと、背中から「いい香りだね」と心地よい声が。
うつむきながら「冷めますよ」と言った私は、きっと真っ赤だったんだろうなと今になっても少し恥ずかしくなります。
その日から、お師匠とは会えていません。
……ああ、長々と思い出話を失礼しました。
つまるところこの瓶詰めは私が知らない間もしくは弟子入りする前にお師匠が作った物で、お師匠の事だから素材もレシピも何も残しておらず、現代では再現が難しい可能性があります。
難しいとなるととことん探したくなる。
探求心をくすぐられた私は、今まさに『材料を探す旅』をしております。
そのお話もまた後日。お楽しみに。
Riese