自宅で手軽に、ものづくりのレッスン体験ができる「テナライ」を知っていますか?毎月、材料キットが届き、動画を見ながら作品をつくることができる通信講座で、minne作家さんのレッスンも大好評。「minneとものづくりと」では、ご参加いただいている作家さんに取材し、その制作秘話をうかがってきました。
今回は、手刺繍作家Chicchi(ちっち)さんのキットをご紹介します。
プロフィール
Chicchiさん
双子の姉妹(左:チサトさん/図案と刺繍を担当 右:ミサトさん/仕立てを担当)で活動する手刺繍、布小物作家。著作本『ほっこりかわいい どうぶつ刺しゅうでつくる ハンドメイドアクセサリー』が好評発売中。
手刺繍という選択
多数の作品キット化や著作本の発売など、幅広く活動されているChicchiさん。その作品の魅力は、すべて手で紡がれる丁寧でクオリティの高い刺繍です。制作をはじめたきっかけから、今回のキット制作についてまでじっくりお話をうかがってきました。
刺繍作家さんとしてご活躍されているChicchiさんですが、刺繍作品をつくりはじめたきっかけをおしえてください。
ミサト
出産をきっかけに仕事を辞めて、何か子どもが喜ぶものをつくりたいなと思って布小物の制作をはじめました。当時、オンラインマーケットのtetote(現在はminneに統合)を見つけて、なんとなく出品してみたらすぐに売れたんですよ。そこで、チサトに連絡をして「ふたりでハンドメイド作品をつくろう」と声をかけました。
チサト
もともと、わたしたちの母が洋裁学校の出身で、手芸は身近なものだったんです。わたしも仕事が休みの日には趣味でバッグをつくったりしていたので、すぐに「一緒にやりたい」と返事をしました。
ミサト
子どものころからずっと「ふたりで何かやりたいね」と話していたんです。ふたりで歌をつくってうたったり、バンドを組んでみたこともありました(笑)。どれも長くは続かなかったけれど、ハンドメイドなら、お互いにずっと好きでやってきたことだし、長続きしそうだなと思って、まずは「続ける」ということを目標にして制作をはじめたんです。
初期にふたりが制作していたのは、手のひらサイズにミニチュア化されたグラニーバッグ。
チサト
布小物というカテゴリーのなかでも、より個性のある作品にしたいと考えて、たどり着いたのが刺繍でした。作品にパーツを加えたりするよりも、刺繍を施すことで、自分たちのオリジナル性がわかりやすく形になったんです。
試行錯誤の連続
そこから今のChicchiの世界観はどのようにつくられていったのでしょうか?
ミサト
刺繍作品をつくり続けるうえで、Chicchiとしての知名度をあげたい、ステップアップしていきたいと思い、コンテストをさがしていたときに「minneのハンドメイド大賞」を見つけて、ある作品を応募をしました。そこで賞をいただけたわけではないのですが、出品した作品が、みなさんの目に届いているというか、これまでにはない手応えを感じたんです。たとえば、販売会などでブースに飾っておくと、足をとめるきっかけになっていたり、「かわいい!」と声をかけていただけたりしました。
そのとき制作されたのが、森のどうぶつたちの刺繍ブローチがあしらわれた大きな木のバッグ。いまにもどうぶつたちの会話が聞こえてきそうな、心あたたまる作品です。刺繍だけでなく、フェルトも組み合わせた、立体感のある仕上がりがポイントだそう。ほっこりとしたやさしい色味にも癒されます。
チサト
これまでに挑戦したことがないようなもの、それでもChicchiらしさを感じるものをと思い、ひとつの大きなテーマをつくって、制作しました。テーマをもってそこに合わせて作品をつくることで、ストーリーが生まれるんですよね。
ミサト
それまでにも、水族館をテーマにして、お魚の刺繍ブローチをつくってみたり。モチーフやテイストを変えていろいろと試行錯誤を重ねてきました。でも結果として、いちばん自分たちにしっくりきたのが、このほっこりとしたどうぶつの刺繍だったんです。そのあと、バッグにも登場しているリスちゃんの刺繍ブローチをminneのピックアップに掲載していただき、お客さまの反応をみて、さらに確信を持ちました。
チサト
それからは、自分たちがつくりたりたいなと思うどうぶつをモチーフにした刺繍作品をつくり続けています。気になるなと思うどうぶつは、ひたすら画像検索をして、かわいい角度やバランスを研究をしたり、どうぶつ園でいろんなどうぶつをじっくり観察してみたり。
チサト
図鑑からインスピレーションをうけることもたくさんあります。生き物のなかでも鳥はそのカラフルな見た目が魅力なので、色とりどりの刺繍をたのしみたい方は、鳥のモチーフがおすすめです。わたしたちは、「ルリビタキ」という鳥がお気に入りなんです。
表情豊かなどうぶつ刺繍
Chicchiさんにとってどうぶつ刺繍の魅力とは?
ミサト
単純にどうぶつはかわいい、ということと(笑)、完成したときにつくった人の顔になる、というのがいいんだと思います。わたしたちの図案だけれど、刺繍をしていくうちに、なんとなくその人の顔になるというか、自分のどうぶつになるんですよ。
チサト
だからこそ、“小さいお人形さん”みたいなイメージで、一緒にお出かけするような感覚でバッグにつけていたりする人も多いですね。自分好みの顔に仕上げてたのしんでいただけたらと思います。
今回は、そんなどうぶつ刺繍を3ヶ月にわたって手軽にたのしめるキットが発売されました。内容についておしえてください。
Chicchiさんのキットは全3回コースで、4種類のどうぶつ刺繍をたのしむことができます。アクセサリーから布小物まで、おしゃれに使えるラインナップです。
ミサト
キット制作のご担当者の方が、ChicchiのInstagramをくまなくチェックしてくださり、「この子をつくりたいです!」と熱意をもっておっしゃってくださったどうぶつたちをそのままキットにしました。みなさんにも気に入っていただけたらうれしいです。
1ヶ月目:「くまさんとうさぎさんのブローチ」
ミサト
1ヶ月目のブローチは、Chicchiの作品を原寸大でそのままキットにしました。刺繍の基礎を学びながらつくることができます。頭部など、球体に刺繍を施すのは最初はむずかしいと思いますが、ゆっくりと丁寧に、を心がけてつくっていただければと思います。
2ヶ月目:「リスさんとお花の巾着」
チサト
2ヶ月目のキットでは、Chicchiの作品のなかでもとくに人気のリスさんの刺繍とあわせて、巾着の仕立て方も学ぶことができます。全体のさわやかな配色もポイントです。
3ヶ月目:「ハリネズミさんと森のがま口」
ミサト
3ヶ月目の「ハリネズミさんと森のがま口」は最終レッスンということで、刺繍も仕立てもすこしむずかしくなっています。そのぶん、達成感を感じられると思いますので、これまでに学んだことをいかして、丁寧に仕上げましょう。
手がかかる分だけかわいい
どんな風に刺繍キットをたのしんでもらいたいですか?
チサト
テナライのキットは、つくりかたを詳しくまとめたレッスンシートだけでなく、動画を見ながらつくれるので、小学生くらいの子からチャレンジできると思います。ひとりではもちろん、親子で一緒につくるのもおもしろいと思いますよ。
ミサト
いろんなことを忘れて没頭できる時間と、すこしずつ刺繍がうまっていく感じをたのしんでほしいです。完成したときの達成感とあふれる愛着はたまらないと思います。
お2人が刺繍作品をつくるうえでの、いちばんのこだわりはなんでしょう?
チサト
糸の本数にあわせて、針の太さをしっかり変えて丁寧に刺していくことです。とくにどうぶつ刺繍は、数ミリの違いで目の位置など顔が変わってくるので、すこしでも気になる部分があればいくらでもやり直します。
ミサト
わたしたちの作品は基本的にキルト芯という綿の芯を入れて、手にしたときにふわっと感や、あたたかみが感じられるようにしています。個人的には、最後にきれいなカーブを描きながら土台のフェルトを切り落とせたときがいちばん幸せです。最後まで手を抜かずに手をかけ続けることで、その分だけ愛着がわきますよ。
Chicchiさんのどうぶつ刺繍作品の今後の展望をおしえてください。
ミサト
新しい動物はこれからもどんどん増やしていきたいと思っています。季節で分けてみたり、ストーリー性を持たせていきたいですね。しろくま、ペンギンなどの水辺系もかわいいなあとか。
チサト
虫とかもいいかもしれない(笑)。どんなものをつくるにせよ、Chicchiとしてのほっこりとしたかわいい感じはブレさせずに、大きな世界をつくっていきたいと思います。そして、作品をまとめた本や、絵本なんかをつくれたらうれしいですね。
今後の新作もたのしみにしています。それでは最後に、受講を考えている方にメッセージをお願いします。
ミサト
空いた時間に、塗り絵のように少しずつ刺繍をすすめていけば、いつかは形になるので、あせらずにつくってみてほしいですね。癒しの時間のおともになれたらうれしいです。あと、実際につくってみたよ、という人はSNSに写真をアップしておしえてもらえたら最高です。
チサト
私自身もキットを買ってつくったことがあるのですが、材料が全部そろっているし、それを買えばつくれる、という手軽さがいいですよね。刺繍を試したいという人には、刺繍の本を一冊買うよりも、キットをひとつ買うほうがおすすめです。刺繍は場所もとらないので、ぜひ気軽にはじめてみてはいかがでしょうか。
Chicchiさんのどうぶつ刺繍キットをはじめ、「テナライ」にはさまざまな手づくりにまつわるミニレッスンがずらりと取り揃えられています。新しい趣味をおさがしの方にもおすすめです。ぜひはじめてみてはいかがでしょうか。
minne×テナライ
日本ヴォーグ社の作って学べるミニレッスン「テナライ」とminneの人気作家さんがコラボレーション。「Chicchiさんのどうぶつ刺繍レッスン」にぜひ挑戦してみてください。
取材・文 / 西巻香織 撮影 / 真田英幸