インタビュー

【連載】わたしのHANDMADE AWARD vol.5 〜 Hande und Stitchさん「アニマルトロフィーとの出会いと挑戦」

アニマルトロフィーデザイナーとして活躍されているHande und Stitchの花村さん。作品の誕生と現在のご活躍までには、花村さんにとって「ものづくり」を追求し続け、出会いを重ねる“旅”のような時間がありました。昨年のハンドメイド大賞の受賞についても、たっぷりとおうかがいしています。

アニマルトロフィーデザイナーとして活躍されているHande und Stitchの花村さん。作品の誕生と現在のご活躍までには、花村さんにとって「ものづくり」を追求し続け、出会いを重ねる“旅”のような時間がありました。昨年のハンドメイド大賞の受賞についても、たっぷりとおうかがいしています。

わたしのHANDMADE AWARD

作家さんの発掘・支援を目的として2015年より開催している「minneハンドメイド大賞」。今年は「minneハンドメイドアワード」と名称を変えて新たに誕生し、8月1日より作品の応募受付を開始しました。応募にあたって、すこしでも皆さんの参考になればー そんな想いで、minne mag.では過去の受賞作家さんにお話をおうかがいすることにしました。今回は、昨年見事グランプリに輝いた、Hande und Stitchさんのアトリエにお邪魔しています。

プロフィール

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Hande und Stitchさん

動物のインテリア『アニマルトロフィー 』をデザイン、製作している。「minneハンドメイド大賞2017」では、『大賞』を受賞。


はじめて取り組む仕事たち

一面に広がる田園を列車で超え、8月の陽が注ぐなか、岐阜のとあるアトリエにお邪魔しました。

今回の主役は、「Hande und Stitch」ことアニマルトロフィーデザイナーの花村さんです。「遠いところまでありがとうございます」と、いつものあたたかな笑顔で迎え入れてくれました。

ずいぶんお忙しいんじゃないですか?


花村
おかげさまで、はじめての出版に向けて動きはじめているところで。7月にも東京に行かせてもらいましたが、ようやく表紙の候補を選ぶところまできましたね。

発売がたのしみですね。

花村
そうですね。これをベースに、いろいろ挑戦したいと思ってるので、待ち遠しいです。作品の制作も、たくさんご注文いただいていて。

テーブルには、立派な壁に飾られるのを待ちわびるように、たくさんのアニマルトロフィーが顔を並べています。

ああ、冬素材もとっても素敵ですね。クリスマスにもぴったり。

花村
やっぱり冬がいちばん、ご注文も多いですね。今年に入ってからは、ありがたいことに企業とのお取り組みも増えてきていて。トナカイも、銀座のお店に飾るものなんですよ。

ご活躍の幅の広がりを感じています。

花村
やっぱり去年ハンドメイド大賞をいただいたことと、それをきっかけにいろんな媒体で取材いただけたことが本当に大きいんだと思います。これまでにはなかったような仕事も多いので、どれも本当におもしろいんですよ。

「ファッション」との出会い


受賞された「アニマルトロフィー」との出会いについても、じっくりお伺いしました。

Hande und Stitchの世界観そのままに、「アニマルトロフィーとの暮らし」が生き生きと表現されている室内。いちばん大きい壁には、10作品が飾られています。

書籍などで拝見はしていたのですが、実際にこの壁を見ることができてうれしいです。もともとどうぶつはお好きだったんですか?

花村
好きですね。小さいころから、犬や猫やうさぎ、鳥も魚も飼ってきました。小学校のときから「図画・工作」の時間も大好きだったので、そういうものを描いたりしていたかもしれませんね。そんな感覚がいまのものづくりにもつながってるのかな、なんて思うとおもしろいですけれど。

「図画・工作」はやっぱりお得意だったんですね。

花村
すごく好きだったので、凝ってたかもしれませんね。中学校からは「技術」の時間が特に大好きで。やっぱり、手先を使うことがずっと好きなんでしょうね。気がつけば、身近にあった気がします。

「インパラ」のトロフィーを制作中。

美術系の学校にすすまれたのは、花村さんのなかでとても自然な流れだったんですね。

花村
そうですね。そういう意味では自然ですが、実は学校はファッション関係の仕事を目指して入ったんですよ。ただ、洋服なんて中学ぐらいまでは、まったく興味がありませんでした。なにしろ、釣りが大好きでどうぶつや自然とばかり触れ合ってましたから(笑)。

そんな少年が、ファッションに興味を持たれるようになったきっかけは何だったんですか?

花村
「時代」というのも大きい気がしますね。高校生になって、みんながそういうものに興味を持つころ、ちょうどいろんなファッション誌が誕生して。ファッションと触れる機会が多くなったんです。それでも、岐阜から名古屋にはじめて買いものに出かけたときはショックを受けたほどでした。「地元と全然ちがうじゃないか!」って(笑)。なおさら興味が湧いてきましたね。

大阪芸術大学のテキスタイルコースに進学し、花村さんのファッションデザイナーへの道がスタートしました。

学校で教わったこと


大学でのお勉強はいかがでしたか。

花村
たのしかったですよ。やっぱり、ファッションデザイナーになりたいなと思って。そのころ、ファッション誌「装苑」の「第79回装苑賞」にスウェット素材のドレスをつくって応募したんですが、最終審査まで残ることができて。

すごいですね、ファッションクリエイターの登竜門ですものね。

花村
そんなこともあって、東京に出ることを決意したときには「文化服装学院(『装苑』の発行元)」で学びたいなという気持ちがありました。昼間はアパレルメーカーで勤務して、夜間で学校に通って。文化服装学院では、ファッションとは何たるかを一通り学ばせてもらいましたね、素材やパターン、製造工程の知識から縫製の機械に触れたり、ビジネスについての授業もあって、得るものがたくさんありました。だけどいちばんは、仲間だと思います。

いまも、同級生の方とは交流があるんですか?

花村
そうですね。夜間なんでいろんな年齢のいろんなひとがいて、当時は「今は別の仕事をしてるけど、いつかはこんなデザイナーになりたいんだ」なんて毎日語り合ってました。1年のときのクラスメイトは、今も「Hande und Stitch」を手伝ってくれていて。ぼくが手書きした型紙を、だれがつくっても誤差が出ないようにパソコンで整えてくれるんです。彼は東京に住んでいて、まったく別の仕事をしているんですが、その合間にやってくれてます。彼も忙しいのに、ずっと手伝ってくれていて。感謝ですね。

Hande und Stitchの作品は、花村さんと奥さま、そしてそのご友人の手によって高い完成度が保たれています。

ドイツへの旅とはじまり


花村
卒業後しばらくして、ちょっとちがった勉強もしたいなと思いはじめて、アパレルメーカーの仕事をやめて衣装制作の会社に入りました。一点もので、なんでもつくるんです。CMの衣装とか、アーティストのステージ衣装とかテレビ番組の着ぐるみとか。実際に手を使ってつくる場所だったんで、自分に合っているように感じましたし、すごく勉強になりましたね。

立体的な作品をつくるという意味では、かなり現在の作品にも活きているかもしれませんね。

花村
そうなんです。立体物ですし、ファーの扱い方のコツだとか、そういったこともすべてそこで学びましたね。1年半ぐらい勤めましたが、スペシャルな一点ものをつくるというのが貴重な体験の連続でした。いちばん最初にあたえられた仕事は、「CMで使った白くまの衣装のメンテナンス」でしたからね(笑)。個性的だけど技術力は一流というひとが集まっていておもしろかったですよ。

そんな職場を離れ、花村さんが「アニマルトロフィー」の制作をはじめるのは、ある旅がきっかけでした。

花村
たまたま知り合いがドイツに渡って。「刺激になると思うから来てみたら?」と誘ってくれたんです。10日間ほどの旅でしたが、本当に今まで触れたことのないものばかりで。はじめて行ったヨーロッパの街だったということもあるでしょうけど、知らなかった価値観とたくさん出会うことができました。

感性を刺激される旅だったんですね。

花村
そうですね。洋服はかなりさっぱりしてるんですよ。みなさんスタイルがいいので、着飾るというよりは自分のボディラインを活かした着方をしていて、日本人のデコラティブなおしゃれとはちがっていましたね。体とかファッションの捉え方がちがうのかな、と「シンプル」の魅力を学びました。一方で、街は景観を保つためのルールがしっかりしているので、古い建造物でできた街並みがとても美しくて。美術館にもたくさん行きましたね。

そして、花村さんはドイツを「もっと知りたい」と感じたといいます。

花村
その旅がおもしろかったんですよね。日本に帰国して最小限の準備で、またドイツに向かいました。ホームステイをさせてもらいながら1年ぐらいの滞在になりましたね。興味を持ったのはインテリアでした。ドイツの人は、プライベートな時間をとてもたいせつにしてるので、洋服とちがい、部屋にとても気を配っていたんです。家族といっしょに過ごす「部屋」にこだわりがあって、いかに心地よく、たのしい気持ちで過ごせるかということに興味があることがわかりました。そこから、自分の中でも視点が「ファッション」から「インテリア」に切り替わったのをおぼえています。

ドイツのインテリアで、特徴的なものはなんですか?

花村
どうぶつのオブジェやモチーフが多いんじゃないですかね。お店や、「アンティークマーケット」っていう「蚤の市」のようなイベントに出かけては、鹿の剥製やテディベアを眺めるようになりました。「シュタイフ」っていうドイツのブランドにすごく惹かれて。

もしかして、その組み合わせが。

花村
まさに「鹿のトロフィーをぬいぐるみでつくることができないかな」と考えはじめたんです。それがはじまり。

アニマルトロフィーワークショップ


花村
アニマルトロフィーの第一号は、ドイツでつくりました。日本から持って行った和柄の生地でつくってみたところ好評で、気に入って買ってくださる方がいました。あえて和柄でつくったのがおもしろかったのかな。一つ目の制作で「これは続けたいな」って思えたんです。

帰国後、花村さんは本格的にアニマルトロフィーの制作を開始します。

花村
平日は溶接の仕事をして、週末にはアニマルトロフィーの制作に没頭しました。岐阜に「やながせ倉庫」というレンタルブースがあって。そこに作品を置かせてもらったりしているうちに「なにかイベントができないかな」とお話をいただいて。それがきっかけでワークショップにはじめて挑戦したんですが、それがおもしろくて。朝の10時半から夜の6時まで長丁場で大変なワークショップだったんですが、すごくよろこんでもらえて。ぼく自身も、「お客さんの手によって魂が込められていく」「それをお手伝いする」というのはこんなにおもしろいものかと。

自分でつくるのと、ひとに教えるのでは、ずいぶんちがいますよね?

花村
そうですね。自分で手を動かすのとはまったくちがうたのしさでした。みなさんそれぞれの作品が完成して、満足して帰っていただけるのは、やっぱりたのしいですよね。苦手だった「人前で話す」ということも苦にならなくなってきたのは、本当にワークショップのおかげです。

活躍の幅を広げるための挑戦

「ハンドメイド大賞」への応募は2017年がはじめてだったとうかがいました。

花村
そうですね。3年ぐらい前からminneで販売を開始したんですが、最初は「とりあえず出してみよう!」という気持ちで、過去につくったものを展示する「ギャラリー」として使ってたんです。それからすこしずつ、いろんな方に見ていただけるようになって。イベントや展示会でも「どこで買えますか?」と聞かれると、「minneを見てください」と伝えるようになりました。だけど、コンテストへの応募は考えていなくて。

昨年のご応募は、なにかきっかけがあったんですか?

花村
実は、trikotriさん(「ハンドメイド大賞2014」大賞受賞)との出会いが大きかったんですよ。2016年のハンドメイドマーケットで、ブースに来てくださって、作品をじーっと見てらして。

trikotriさんがですか?

花村
そうなんです(笑)。「作家さんですか?」「ファンなんです」と言ってくださって。動物ぽんぽんは知っていましたが、そこからいろいろ拝見していたら、すごい方だったんだ! とあとから気づいて。

trikotriさんの「動物ぽんぽん」

花村
手芸の世界で、新しいジャンルを開拓されて。オリジナリティとアート的なセンスと技術もどれも素晴らしいですよね。「この方が、2014年のグランプリを獲られてるんだ」と気づいて、改めて思ったんです。評価されて、どんどん活躍の幅を広げてらして、すごいなと。これは、ぼくも挑戦してみて、そんな活躍につなげられたら素敵なんだろうなと。

trikotriさんのご活躍が、新たなグランプリ受賞者を生んでいたんですね。

花村
そうですよね。かっこいいよなあ、って思ったんですよ。

「暮らそう」という提案


花村さんが応募された作品は、1点ではなく8種類でした。そこもおもしろかったです。

花村
応募した「ライフデザイン部門」の説明が「生活を彩る作品を募集します」となっていて。「アニマルトロフィーがぴったりだ」と思ったんですが、ひとつだけ飾るのもさみしいですし、飾ってたのしむ世界観が伝わりづらいんじゃないかと思ったんです。いくつかの種類並べて白壁に飾ることで「アニマルトロフィーと暮らそう」というテーマで、アニマルトロフィーがある「暮らし」を提案するかたちをとりました。

特に気にされたことってありますか?

花村
数も多いですし見た目に派手ですが、そのぶん細部まで丁寧な仕事にこだわりましたね。目のまわりの刺繍やグラデーションなんかは、実物を見ないとわからない部分です。写真で伝わるかなと心配でしたが、実物審査でしっかり見てもらえたようでうれしかったです。

いちばん最初に伝えたひと


授賞式当日、壇上にはどんなお気持ちで上がられましたか?

花村
なかなか最後まで名前が呼ばれませんでしたし、「どうかな」と思ってたんですが、最後の最後にまさかという感じで。

上がられた様子を拝見していても、あまり緊張されている印象を受けなかったんです。

花村
本当ですか?緊張してました、とても(笑)。もしそう見えていたとしたら、きっとワークショップでがんばって人前で話せるようになったおかげですね。

お気持ちはいかがでしたか。

花村
うれしかったですね。シンプルにうれしかったです。自分が「いい」と思って、それを信じてつくっていましたが、そこに共感いただけたということが何よりでした。認めてもらえたんだな、続けててよかったな、と本当に思いましたし、続けてこれたのはまわりのサポートあってのことなので。感謝の気持ちも強かったですね。

いちばん最初に連絡されたのはどなたでしたか?

花村
やっぱり奥さんですよね。

よろこばれたでしょうね。

花村
よろんでました。「大賞とれたよ」って伝えると、「よかったね」って。それもすごくうれしかったですね。家族はもちろん、岐阜の「やながせ倉庫」のカフェの店長にもすぐに連絡したんですよ。そこがぼくのスタートだったので。岐阜でものづくりを応援してくれてる人にも伝えられたのが、本当によかったです。

つくってたのしむ作品


受賞コメントで「だれでもつくれる」「たくさんの人につくってほしい」とおっしゃってたのが、とても印象的でした。花村さんの中で、アニマルトロフィーは、飾ってたのしむものであり、つくってたのしむものなんですね。

花村
その気持ちはありますね。今年の秋冬には本が出るので、それをベースにいろんなところをまわって、またレクチャーできるといいなと思ってるんです。型紙やつくり方は、どんどんお客さんに公開してもいいかなって。そうすると、自分はさらに新しいものをつくらないといけなくなりますし、新しい創作にもつながるんじゃないかなと思うんです。みなさんにもつくってたのしんでいただいて、ぼくはより丁寧に新たないいものをつくっていく。みんなでたのしみたいですね。だって、ものづくりってたのしいじゃないですか。

「ものづくり」を突き詰められる場


最後に、今回の応募を考えられてる方にメッセージをお願いできますか。

花村
審査員も素敵な方ばかりですし、こんなものづくりのコンテストはなかなかないと思うので。まずは「力試し」と思って挑戦してみてほしいですね。売れる、売れない、という視点ではなくて、自分が納得のいくものを突き詰めてたのしむことができるものづくりの場なので。「審査員の方に見てもらいたい!」という気持ちもきっとたいせつですよね。結果は、その先についてくるのかなと思います。

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「minneハンドメイドアワード2018」エントリー作品募集中!

作家さんの発掘・支援を目的に開始した「minneハンドメイド大賞」。4回目の開催を迎える今回より、コンテスト名を新たに「minneハンドメイドアワード」として生まれ変わりました。みなさまからのたくさんのご応募、お待ちしています。

詳細はこちら

取材・文 / 中前 結花  撮影 / 真田 英幸

【連載】わたしのHANDMADE AWARD
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