プロフィール
阿部雅幸 minneの発起人・エバンジェリストとして、minneの事業統括とminneの想いを広めるべく活動中。
作家さんにスポットライトを
毎年約20,000点前後もの応募があつまるminneのコンテスト。受賞をきっかけに、さまざまなジャンルの作家さんが活躍の場を広げられてきましたよね。これまでminne mag.でも、過去の受賞者インタビューや受賞作品にまつわる記事をたくさんお届けしてきました。
阿部
毎年、ご応募いただく作品のクオリティは上がり続けていますし、受賞やノミネートを作家活動のひとつの目標とされているという声が耳に入ることもあり、コンテスト自体、作家さんに誇りに思ってもらえるものになってきているのかなと感じます。開催してきてよかったですね。
そもそもminneでコンテストをやろうと思ったきっかけをおしえてください。
阿部
2012年にminneのサービスをスタートしてから、多くの作家さんにハンドメイドの作品を出品いただきました。素敵な作品がたくさん集まっていくよろこびと同時に、あることを思うようになったんです。それは「実際に作品をつくられている作家さん自身にもスポットライトを当てたい」ということ。その頃はハンドメイド市場でも、個人のものづくりを対象にしたコンテストはまだありませんでした。それならば、僕らが率先してやっていきたいなと。
2015年に初めて開催された「minneハンドメイド大賞」。当初はどんな作品がどれくらい集まるか想像がつかず、不安も多かったとか。結果、多くの作家さんにご参加いただき、また協賛企業さまにもご尽力いただき、大盛況のうちに幕をとじました。
minneのコンテストがもつ価値
阿部
実際にコンテストを開催してみて、すばらしいアイデアや技術をもった作家さんがたくさんいるんだということを、多くの方に伝えることができたと思いますし、僕らもそれを再認識しました。受賞やノミネートを自信につなげていただけた作家さんもいらっしゃったと思います。ただ、結果はもちろん大切だと思うのですが、それと同じくらいに、コンテストに応募するプロセスの中で「どうしてハンドメイドをはじめたのか」「どんな想いでつくるのか」を作家さん自身に改めて考えたり、思い出してもらうきっかけにもなれたらいいなと思っていたんですよ。
結果だけではなく、過程で得られるもの、ということですね。
阿部
はい。minneはハンドメイドマーケット、ということで作家さんたちは普段、どうしても「売れるもの」「需要があるもの」「ファンに向けたもの」を考えてしまう部分があるかと思います。でもminneのコンテストに応募することで、「本当につくりたいもの」をつくれる、作家活動の根底に立ち帰るきっかけのようなものにもしたかったんです。ご参加いただいた作家さんとお話する中で「自分の作品にあらためて向き合うことができた」と言っていただいたとき、やってきてよかったなと思いましたし、このコンテストはすべての作家さんに応募していただく価値があるものだと感じました。
ひとつひとつ、じっくり
実際にコンテストにはどのくらいの数の応募があるのでしょうか。審査方法についてもおしえてください。
阿部
今年は約14,000作品があつまりました。まず一次審査にて、minneの審査員スタッフが作品ページと作品写真をもとに、ひとつひとつに目を通して選定していきます。思いがけないアイデアに驚くこともありますし、あふれそうな想いに感動することもあります。そのすべてを見落とさないように慎重に審査をすすめます。「なぜこの作品を選んだのか」「どこがより優れているのか」などをみんなで話し合いながらじっくり時間をかけて選びすすめていくんです。
阿部
そうして最終審査まで残った107点の作品は、ひとつのスペースに展示をして、実物審査を行います。minneの審査員スタッフ、企業さま、ゲスト審査員さまと一緒に、議論を重ねて重ねて、各賞を決定していきます。ひとつひとつの作品に作家さんの想いが込められていますし、ストーリーがあるので、審査する側もかなりパワーを使うんですよ。選ぶ側としては、毎年、楽しくもあり苦しくもある、というのが本当のところです。
さまざまな視点からみた魅力
ゲスト審査員のみなさんについてもおしえてください。
阿部
毎年、本当に素晴らしい方々にゲスト審査員としてご参加いただいています。できるだけいろいろな角度から作品の魅力を汲みとれるようにと心がけて、お声がけさせていただいている部分もあるので、みなさんの視点がそれぞれ異なりとても面白いんですよ。今年のゲスト審査員の方をご紹介させてください。
阿部
初参加となる増田セバスチャンさんは、みなさんご存知のとおり、日本の「カワイイ(KAWAII)」という文化をつくり、世界に広げられた方です。世界を見渡した目に、minneのものづくりがどんな風にうつったのかは個人的にも気になりますね。審査会では「海外の友達にプレゼントするなら」という視点で選ばれていました。
阿部
篠原ともえさんは唯一、初回からずっと審査員をつとめてくださっています。ハンドメイド全体の流れを見つつ、作品のアイデアや縫製など細かい部分にも注目されており、「どんな想いで何のためにつくられたのか」という背景の部分まで見られていたのは、普段からものづくりをされている方ならではの視点だと感じました。
阿部
人気ECサイト「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤友子さんは、ライフスタイルにまつわる生活アイテムや雑貨が大好きで、今までもたくさんの商品に触れてきた方。そんな佐藤さんが審査会中に「これは当店のお客さまにも人気が出そう」とおっしゃってくださる場面がありました。ハンドメイド作品のレベルの高さを改めて実感しました。
阿部
アートディレクターの森本千絵さんは、広告業界の第一線で活躍され続けている方。想いを伝えるプロの視点から、ハンドメイド作品を見ていただけるのはとても貴重なことです。昨年の審査会では「ものづくりは誰もが持つ権利」とおっしゃっていたのが印象的でした。ものづくりは技術を持った一部の人のものだと思いがちですが、誰もがやっていいことですし、このコンテストも誰もが応募していいものなんだ、と僕らも改めてはっとさせられました。
阿部
BEAMS JAPANのバイヤーをされている鈴木修司さんは、審査会で「今年はハンドメイドのターニングポイントになりそうだね」とおっしゃいました。“ハンドメイド”の持つ意味合いが変わってきていると。世の中に流通する商品と、作品と呼ばれるものとの境目がなくなってきている。そんな中で、鈴木さんがどんな作品を選ばれたのか。ぜひご注目いただけたらと思います。
豪華な面々というだけでなく、本当にさまざまな視点が入るんですね。
阿部
minneの審査員スタッフは特にですが、僕らはものづくりのプロではないので、それぞれの作品に対して本質的なところはジャッジできないと思うんです。それでもハンドメイドが好きな人間たちが、作家さんの想いや、作品を使うシーンをイメージしながら、ハンドメイドが持つ価値をいろんな角度から見て、光をあてて、総合的にグランプリが決まるところが面白いところだと思います。
コンテストをターニングポイントに
これまでのコンテストで印象的なエピソードがあればおしえてください。
阿部
あたたかいお言葉をいただいたり、感動するシーンもたくさんありましたが、いちばん印象に残っているというと、ある作家さんからもらった1通の手紙ですね。詳しい内容は控えさせていただくのですが、minneのコンテストが、ひとりの作家さんの「ものをつくる力」「生きていく力」になれたというのはとてもうれしい言葉でした。
ある悲しい出来事をきっかけに、ものづくりから離れようとされていた作家さんが、コンテストのノミネートをきっかけに、再び、つくる力、生きる力を取り戻されたという感謝のお手紙でした。
阿部
あとはやはり、受賞された方のその後のご活躍は印象的というか、とてもうれしいですね。受賞やノミネートをきっかけに新しい制作活動やお仕事につなげられたというお話をうかがうと僕らも励みになります。作品のつくり方をまとめて書籍化されたり、ワークショップの講師として作品の魅力を伝えられていたり。どのような活動につなげるにしても作家さん自身のモチベーションが大事だと思うので、受賞をゴールにするのではなく、ひとつのターニングポイントにしてもらえたらと思います。
ハンドメイドのこれから
阿部さんはずっとハンドメイドの市場を見られていますが、最近のハンドメイドについて思われることはありますか?
阿部
「ハンドメイド」という言葉の取り扱いが変わってきていると感じます。minneがスタートしたときは、毛糸のたわしや手編みの帽子など、キーワードは“ほっこり”というものがほとんどでした。ところが最近は作品のクオリティや制作の環境も整ってきており、工業製品にもひけをとらないような作品が続々と生まれています。誰も気づかなかったアイデアやユニークなもの、高い技術をもつクリエイティビティな作品もハンドメイドとして認められるようになってきているので、今後どんな作品が生まれるのか、ますます注目ですね。
minneの公式サイト上では、ハンドメイドアワードの最終ノミネート作品が発表されましたが、今年はまさにそんなクリエイティビティなハンドメイド作品があつまっていますね。
阿部
そうですね。最終ノミネート作品を見ていただくとわかると思うのですが、本当に甲乙つけがたい、これまでにないようなアイデアのつまった個性あふれる作品があつまりました。12月6日にグランプリをはじめとする各賞の発表が行われます。minne一同、1年間じっくりと時間をかけてつくりあげてきた「minneハンドメイドアワード」。ぜひ最後まで一緒にたのしんでいただけたらうれしいです。
12月6日に開催される「minneハンドメイドアワード2018授賞式」の様子は、後日minne mag.であらためてお届けしますので、おたのしみに。
取材・文 / 西巻香織 撮影 / 真田英幸