ファッション誌『装苑』さんとコラボレーションし、新たな可能性を秘めた作品を発掘する「クリエイターズコラボ」。第1弾は装丁作家の祖父江慎さん、写真家の川島小鳥さんなどの豪華審査員のお題に沿って作品を提出し、選ばれた作品が審査員の手により新たなビジュアルとなって『装苑』の誌面を飾る!という夢のような企画でした。そして現在、ミュージシャン編ともいえる第2弾の作品を募集中。そもそも、なぜこのような企画が生まれたのか?minneの生みの親・阿部が『装苑』編集長の児島さんへ特別インタビュー。ハンドメイドの新たな可能性や、新しい発想のきっかけが見つかるかもしれません。
minneと『装苑』を結びつけたのは、なんと篠原ともえさん?
児島 阿部さん、お久しぶりです!
阿部 お久しぶりです!今日はお時間をいただきありがとうございます。
児島 えっと、今日のテーマは、minneさんと『装苑』とのコラボについてですよね?
阿部 はい。とても魅力的な企画なので、もっといろんな人にその存在を知っていただきたいなと思いまして。それから、社内でも「なぜこの企画が実現したのか?」と聞かれたりしますので、企画の誕生秘話?などもここで一緒にお伝えできたらと。
児島 そうですね。僕も、なぜminneさんと…?ってよく聞かれます。もちろん阿部さんと進めたからできたのですが、さかのぼると…きっかけは、篠原ともえさんかも。
阿部 え、まさか、そんなところに篠原さんが。
児島 『ザ・ワンピース』という、篠原さんの著書を準備している時に、文化出版局内でお会いしたんです。そしたら開口一番「編集長!今ですね、minneさんがすごいんですよ、minneさん、知っていますか!」って(笑)。
阿部 篠原さん、知らないところでもminneを宣伝してくださっているんですね!ありがたいです!
児島 その時に篠原さんが、手作りが好きな人が憧れる『装苑』こそ、アマチュアの人に夢を与えてあげるべきだ、みたいなことをおっしゃっていて。自分も近いことは考えていましたので、やっぱり、そうかなぁと。
阿部 なるほど。ちなみに僕自身は学生のときからずっと『装苑』を読んでいるんですけど、minneを立ち上げた時から『装苑』さんといつかお仕事ができるといいなって、ずっと考えていたんですよ。
児島 そうしたら、たまたま共通の知り合いがいたんですよね(笑)。初めは編集部に来ていただきました。ちょうど1年ほど前です。
阿部 あのときは児島さん、あまり時間がなくて…。15分くらいでminneについて説明させていただいたら、かなりご理解いただけて。『装苑』さんは、敷居が高い印象がありましたけど、それがなくなってトントンって話が進んでいきました。
出来上がったものを評価する以前に つくることの楽しさまで立ち返らないといけない時代に
児島 阿部さんが"敷居"とおっしゃいましたが、僕はそれが邪魔をしていると感じることがあります。でも『装苑』は、その"敷居"が高いほうがかっこいい時代に人気があった媒体なので、その印象が強いのは仕方ないのかもしれません。
阿部 いや、認めてもらえたものしか掲載されない、みたいな、手が届かないというような憧れでもありますよ。
児島 好意的に取ってもらえればそうですが、一部のファッション好きが、それ以外を排除する、みたいにも言われます。もちろん、そのままでよければ突っ張っていてよいのですが、この数年でファストファッションが主流になったり、個性を求める人もデザイナーズより、手芸やリメイク、古着に向かっていって…。個人的には、プロやアマチュア、上手い下手なども越えて、つくることが楽しいというところに立ち返らないと、オリジナルのデザインやクリエイションの価値にたどり着けない気もしていました。だから「なにか一緒にやりましょう!」ってことになって。
阿部 そうでしたよね。それで去年のDIYの企画でお声掛けいただいたので、ぜひやらせてください!って。minneの作家さんを紹介してくださるページをつくっていただきました。
児島 編集部内で「minneさんにも面白い作家さんがいるね」って話になりました。アマチュア作品でも、プロの領域に近いような人もいると担当者は感じていたようです。
阿部 装苑さん主催の『装苑蚤の市』に出展されている作家さんのなかに、ご自身のプロフィール欄にminneのギャラリーURLを載せる人がちょこちょこ出てきていて。そういうのを見るとうれしくなりますね。
児島 そういうのがいいですよね。
阿部 初めてご一緒に企画ができたのは、やっぱりminneにとっては、編集長が児島さんだったっていうのが、キーポイントだと思うんです。作家のみなさんが主役になれるような企画にできましたし。最初にお話しさせていただいたときも、すごく可能性があるとおっしゃっていただいて。
児島 新しいことって、当たり前ですけど、はじめる人がいないと生まれませんよね。前例がないことをするのは面倒ですし、少しでも失敗の可能性があれば、組織の中にいる人は大抵やりたがらないです。どんな組織も成功したら上司の手柄で、失敗すると自分の責任、みたいな環境が問題なんだと思います。正直、『装苑』のminneさんとの企画に対して、「アマチュアの方と一緒にやるなんて…」という声もありましたよ。でも、参加しない人の文句より、参加者が喜んでくれることが大事。あとは、『装苑』でいえば、事業部長でもある自分が責任を取る立場なので、できたということはありますが。
阿部 minneは、ものづくりをはじめたばかりの方からプロとして生計を立てていらっしゃる方まで幅広くご利用いただいているのですが、歴史のある媒体ですから、そういった幅を気にされることもありますよね。
児島 普通の媒体とも少し違いますから。50代、60代の方々に「昔の方がよかった」と、面と向かって言われることもあります(苦笑)。もちろん、年齢に問わず、読んでいただけている読者の方々には感謝しますが、どちらかというと、これからファッションやカルチャーを好きになる人に向けた媒体なので、若い人の気持ちが動くような提案をもっとしなくてはいけないんです。でも、新しいことに向かう苦労では、阿部さんが「minneをやる!」と言った時のほうが、大変だったのではないかとお察ししますが。
阿部 そうですね(笑)。
児島 僕個人の、minneさんへの興味は、「なぜこの会社が?」というところもありました。
阿部 インターネットの会社がなぜ、というところですよね。
児島 だからこそ、「何か一緒にできるかも」とも思いました。それは阿部さんのお人柄からも感じました。阿部さん、絶対人に嫌われないタイプじゃないですか?(笑)
阿部 嫌われないように、嫌われないように…ひっそりと服をまとって生きています(笑)。でもその結果、人との間に壁ができてしまって「阿部はいつもシャッターを閉めている」って言われるんですけどね(苦笑)。それはさておき、新しい提案という意味では、今回の企画は、とにかく誰も見たことがない企画にしたかったという思いがあって、お互いに一緒にやりましょうと言ってはいましたが、具体的なものは、なかなか決められなかったですよね。
児島 はい。でも、阿部さんから「minneらしいことをやってほしいわけじゃない」って言われたのがヒントになりました。
かつてない刺激で、新しいものが生まれることの再確認ができた
阿部 僕の話がヒントになったんですか?
児島 はい。阿部さんの「minneの世界観で何かをするよりも、『装苑』に憧れるminneの作家さんたちに、なにか楽しいことをやっていただきたい」という言葉です。それで、先が見えなくてもいいから誰も見たことがないものが生まれる企画を考えようと。
阿部 minneの作家さんに喜んでいただきたくてそうお話しましたが、それがハンドメイドの可能性において線を引かないこと、に繋がったわけですよね。
児島 はい。人の気持ちを最も強く動かすのが"憧れ"であれば、憧れる人たちと作品が作れるチャンスをつくってしまおうと。参加していただく作家さんと、プロのクリエイターを結びつけることを考えました。
阿部 minneの作家さんが、プロのクリエイターに向けて作品をつくり、その作品が憧れのクリエイターによって新しい作品に生まれ変わって『装苑』の誌面に載る…。僕はその企画を聞いたときに、これまでずっと、ハンドメイドをやってこられた方はもちろん、これからモノづくりをはじめようとされている方だって、刺激を受けるんじゃないかなと。
児島 あ、確かにそうですね。
阿部 その刺激をうけたことによって、「次の作品も頑張ってみようかな」とか、minneという場所を知ることで、「がんばって出品してみようかな」とか、何かしら感じてもらえるんじゃないかな、とも。とにかく、第1回目の企画をお出しいただいて、すごくいいなと思いました。
児島 その第1回は、無事に終わりました。
阿部 選ばれた作品はどうでしたか?
児島 審査員を務めた4名のクリエイターさんが、ものすごく時間をかけて選んでくれて。ここで書くのもなんですが、審査員をお願いする時点でも、恐縮するような忙しい人たちじゃないですか。でも、アマチュアとプロの垣根を壊したいというコンセプトを、担当者から説明させてもらったら快諾してくれましたし、審査当日も、いいものを見るとのめり込んでくれるんですよね。撮影現場では、憧れのクリエイターと仕事ができたことに、感極まって泣いちゃう作家さんもいましたが、それを見て、この企画をつくって本当に良かったと感じました。
阿部 作家さんにとっては夢の企画ですもんね。特にminneに出品されている作家さんからすると、誰かとコレボレーションすることもあまりないですし。
児島 まず「他人と一緒に何かをつくる」というのが、機会として少ないでしょうね。
阿部 なかなかないですよね。自分の中だけで考えられている作家さんも多いと思います。
児島 選ばれた作品に対して、審査員の方などが、アレンジするような話をしていたんですけど、それを聞いている作家さんが嬉しそうだったのが印象的でした(笑)。
阿部 ひとりでやってきたなかで、他人からフィードバックをもらえるとか、しかもそれがトップクリエイターから言ってもらえるなんて。自分の作品が良くなっていくことを実感できたのでしょうね。
児島 大人になると、自分の作品や仕事に対して、意見をもらえることってなかなかないですからね。
阿部 そうなんですよ。僕は祖父江さんとの回に同席しましたけど、一度打合せの席を設けていただいて、その中で誌面のアイデアを出しながらも、「どうせならビジネスとしてもこうやった方がいいんじゃないか」とか、作品以外のこともおっしゃられていたり。そうした意見でかなり刺激を受けられたのではないかと思います。
児島 個人的にはKLOKAの矢嶋さんの、のめり込み方がすごかった。良い意味で、めちゃくちゃで(笑)。
阿部 これ、すごいですよね!
児島 選んだヘッドピースを紹介するために、作家さんには同様のアクセサリーを追加制作を依頼して、矢嶋さんはそれに合ったドレスを、自腹で発注してました(笑)。背景はカラーコピーで出力して、わざとテープで張り合わせて手作り感を出すとか…。参加してくださったクリエイターさんたちのこだわりにも、本当に感謝です。
阿部 すごいですよね。その分、作品にもインパクトがありますもんね。
児島 1回目だったので手探りではありましたけど、どれも面白くできたという感じはあります。ただ、少しもったいなかったなという反省もあります。もっといろんなひとに見せたかったので。
阿部 誰にでもチャンスがあって、憧れる人と作品を作れるという企画は素晴らしかったですが、おっしゃるように、周りにざわざわした感じが生まれると、もっとよかったですね。
児島 そうなんです。そこは我々の力不足も感じていますが、その反省を踏まえて、今進めている第2弾を!
第2弾の審査員はミュージシャン。自ら選んだ作品で『装苑』に登場
阿部 で、現在募集中(10月13日締切)の第2弾ですね。
児島 はい。今回の審査員であり、モデルとして『装苑』の誌面に登場してもらえるのは、乃木坂46の伊藤万理華さん、GLIM SPANKYの松尾レミさん、DJみそしるとMCごはんさん、永原真夏さんの4名です。
阿部 前回はアートディレクターさんやスタイリストさんなどが審査委員で、ビジュアル作成がメインだったと思うんですが、2回目はビジュアルよりも作品にフォーカスされる印象が強いですね。
児島 参加される作家さんたちを良い意味で裏切りたいというか、まだまだこの企画に夢がある、みたいなのを伝えようと、少しアレンジした募集にしました。
阿部 それが、ミュージシャンが審査員で、その人たちに身に着けもらって誌面に登場していただくという企画ですね。
児島 はい。今回はミュージシャンが、自分で好きな作品を決めるわけです。なんていうか、作品で贈る"ラブレター選手権"みたいな企画でもありますね(笑)。そこにはつくり手の気持ちもあるし、作品の背景とか意味とか、そうしたものがストレートに表現されます。そこが前回との大きな違いです。選ばれたら身に着けてステージに立ってくれる可能性だってあるんですから。
阿部 そういう話を聞いていると、僕も出したくなってきます!
児島 阿部さんもぜひ!とはいえ、特別扱いはなしですからね(笑)。やはり今回は、つくったものを身に着けて、人前に出てきてくれることを想像してもらいながら応募してほしいですね。もちろん『装苑』の誌面にも、ミュージシャンが選んだ作品を身に着けて登場します。それも、ミュージシャンたちが好きなクリエイターさんが手掛けたビジュアルで!
阿部 本当に夢のようですね。第1弾はクリエイターを知っている人が参加をしていたとしたら、今回は、広く一般の方にも興味を持ってもらえる気もします。
児島 まだminneを知らない人に、その存在を知ってもらうことにもなりますし、ハンドメイドをしてみたい人へのきっかけになってくれれば嬉しいです。
プロとアマの線を引かないことでの可能性
阿部 それでは最後に、minneと『装苑』で、今後どんなことをやると面白そうかというお話をしていただきたいのですが。
児島 そうですね、モノをつくることの楽しみ、そして作品を見て楽しむことは、限られた人のものでもないですし、敷居など感じずにもっと自由でいいと思います。一部を除けば、プロとかアマチュアとかの境界線を線引きするのは古いメディアの悪いところで、それがないほうが、創造力を楽しめる人が増えるはず。『装苑』がminneさんと取り組むことで、その空気がもっと伝わってくれると嬉しいです。なんだが漠然としていますけど、とにかく大きなテーマを持ってやっていきたいですね。
阿部 おっしゃるとおりだと思います。僕も、最初に児島さんがおっしゃられたように、一般でモノづくりされている方と、トップのクリエイターがコラボレーションすることに楽しさを感じました。モノづくりって、もともと誰しもが最初は素人で、それを欲しいと思った人が増えることによって価格がついて商品になっていきますよね。ある意味、すでにゴールしているプロの人と、原点の人たちを組み合わせるおもしろさというか、それがつくり手の人たちに、改めて可能性を思い起こさせてくれると感じています。
児島 そういえば、1回目が終わって、クリエイターの人たちがすごく楽しかったっていっていました。あと、応募してくれた作家さんとその後に仕事した人もいますよ!
阿部 えっ!そうなんですか!!
児島 はい。あと、最終には落ちた作品に対しても、仕事でお願いできそうだから連絡先を教えてほしい、と言ってきたクリエイターもいましたから。
阿部 そういう繋がりこそ、この企画ならではでとても嬉しいですね!『装苑』を読んでいる方は感度が高くて、クオリティの高いモノをつくってくださると思っていますので、『装苑』読者で、これからもっとステップアップしていきたい作家さんたちにも、いろんな可能性を感じて参加してもらいたいです。
児島 そうですね。アマチュアとプロの境界線がない、という意味ではプロの方が参加してくれてもいいわけですし。また、先ほどもいいましたが、そこから仕事になる可能性もありますので。
阿部 いろんな可能性がありますね。ミュージシャン本人から、次の依頼がうまれるかもしれませんしね。
児島 どんな可能性だってありますから。あと、今後行うことがあれば、minneさんのハンドメイド大賞やビッグサイトでのイベントなどに合わせて、作品の発表をするなど立体的にしてみたい気もします。
阿部 多くの人に見ていただくという意味では、そういった広げ方もいいですね!
児島 とにかく、皆さんのハンドメイドに対するモチベーションに繋げられることをやっていきたいです。それが作家さんにとって、新しい何かを生み出すことに繋がるのではないかと思います。
阿部 つくることって、とにかく楽しいんです。これからもいろんな企画で、モノづくりの楽しさを多くの人に感じてもらいながら、作家としての可能性に挑戦してもらえる機会をつくっていくことが我々の役目ですね。
児島 そうですね。機会を作るのが我々の役目で、あとは、みなさんから期待を超えるものを待つばかり…です!
阿部 はい、期待しましょう!それでは長くなりましたが、今日はいろいろお話いただき楽しかったです。ありがとうございました!
児島 こちらこそ、ありがとうございました!
minne×装苑「クリエイターズコラボ」
ファッション誌「装苑」とコラボし、著名なクリエイターとハンドメイド作品の融合によって、ハンドメイドの新たな価値創造と、またとない体験を生み出す企画。第2弾の審査員には、ファッションセンス光る4名の豪華女性ミュージシャンが登場。選ばれた作品は、それぞれミュージシャンの皆さんが、実際に身に着けて「装苑」の誌面に登場します。