特集

扉を開けたくなるカード vol.22 <特別編>「Littlenavyさん」

作品にそっと添えられていることも多い、クリエイターの名刺やショップカード。今回は、編集部スタッフが心に残った1枚をご紹介する連載「扉を開けたくなるカード」の特別編です。その人に会いたくなるような、作品を覗きたくなるような…そんな、次の扉を開けたくなる新しいカードが完成しました。

10月にご紹介した、アプリとプリンターを使った「カード制作」

今回は、その記事で募集した「新しいカードを制作したい作家さん」の中から当選された、子ども向け布小物作家・Littlenavyさんに、こだわりの詰まった新しいカードを制作していただきました。

Littlenavy
育児で感じる、”もっとこうだったらいいのにな…”という発想を軸に作品づくりに取り組む作家さん。生地の仕入れから、裁断、縫製、梱包までこだわり抜かれた作品たちです。
https://minne.com/@machiko-f

こだわりを詰め込んで、手軽に更新する



作品に同封したり、イベントで配布したり。コミュニケーションのきっかけとしても大いに活躍してくれる、ショップカードを、前回は4名の作家さんに専用アプリ「Epson 名刺プリント」 を使って制作いただきました。 記事はこちら >


手持ちの画像に加えて、スタンプやフレーム、多種類のフォントなど、いくつもの組み合わせを実現できるのがうれしいポイント。


今回は、作家・Littlenavyさんに「どんなカードを制作してみたいか」ということからうかがってみました。

伝えたいのは、「質感」


Littlenavyさん
ご挨拶のときなどに、「どんな作品をつくっているか」ということはもちろん知ってもらいたいことではあるんですが、「作品写真を全面に使ったカード」というのはあまり考えていないんです。
 
作品のお写真は使わず、表現されたいものがあるんですね。いちばん伝えたいのは、こだわりやメッセージでしょうか?
Littlenavyさん
そうですね、「こだわり」とも言えるかもしれません。すべて布とミシンでつくっているので、布の質感やぬくもりを感じることができるようなカードをつくることはできないかなあ、と考えているんです。
 
ああ、それが実現するととてもおもしろそうですね。

印刷で、布を「写す」



アプリを提供されている、エプソンさんにも相談に乗っていただきました。

Littlenavyさん
たとえば、「布に印刷する」「布のようなものに印刷する」というのは可能なのでしょうか?

(エプソン)担当者さん
プリンター対応の布用紙も販売されていますが、実際に使用されている布の質感とは違ってしまうかもしれませんね。ですが、紙の用紙にもたくさんの種類があるんです。

Littlenavyさん
好みに近いものを選ぶのはいいかもしれないですね、触り心地の好みのものを選んでみたり。これまで、A4サイズのコピー用紙以外のものは印刷してみたことがありませんでした。

(エプソン)担当者さん
実は、リネンのような質感のものや、クラフト用紙のようなもの、ツヤのないマットなもの…などなど、家庭用プリンターでもいろんな用紙に印刷することができるので、そういったもので「布の質感」や「触り心地」のようなものを表現するのもひとつかもしれません。

Littlenavyさん
布をカメラで撮影してプリントしようかとも思っていたんですが、そんなにきれいにプリントするのは難しいでしょうか?

(エプソン)担当者さん
布の写真をカードに印刷する、というのはおもしろそうですね。鮮明に印刷したい場合は、インクジェットがおすすめです。質感が伝わるようなデザインができるかもしれません。

Littlenavyさん
アプリで文字を入れたり、QRコードを入れたりすることもできるんですね。

(エプソン)担当者さん
そうなんです。背景デザインや写真とも組み合わせて、ぜひ、いろいろ試してみてください。
 
こうして、Littlenavyさんにはアプリやプリンターを操作いただきながら、ご自宅でじっくり、カードを制作いただくことになりました。


シンプルさが、あたたかい

完成したのは、こんなに素敵なカードです。

一見とてもシンプルですが、大切にされているお母さんの愛情やまなざしみたいなものがよく伝わってきますね。こだわられた部分はどんなところでしょう?

Littlenavyさん
まず、おもて面ですが、最初は布にプリントアウトしたものを撮影してカードに印刷することを試していたんです。しかし、水彩画や布の質感が思っていたものとすこし違ったので、イラストを印刷する紙にこだわろうと考えました。はじめて名刺や変わった紙質の用紙にプリントしてみましたが、こんなに綺麗に印刷できるなんて、驚きでした。

しっとりとした、コットンのような手触りですね。そして、とても分厚い。

Littlenavyさん
実はこのカードは、2枚の紙を貼り合わせているんですよ。


「次」を覗きたくなるアイデア

そして、こちらが裏面。

なんと、すごい。触らなければ本物の布かと思ってしまうようなデザインです。お話されていた「質感」がばっちり出ていますね。6色もあって、おもしろい。

Littlenavyさん
実際に作品に使用している布を縫い合わせてみたんです。その上には、アプリを使って、ギャラリーページへのURLを記載してみました。

これが、その実物ですね。

Littlenavyさん
そうなんです。小さな四角い布の集まりですが、布に合わせてミシン糸の色を変えて、何度も縫い直しながら、それぞれの布の雰囲気が出るようこだわりました。
 
撮影も難しかったんじゃないでしょうか。

Littlenavyさん
一眼レフを使って、写真の画質や距離感などを確認しながら、撮影も何度も試しましたね。

左上の布だけ、ひと回りサイズが小さいですね。カードには「Coming Soon!!」とあります。

Littlenavyさん
これは、次の新作で使用する予定の布なんです。
 
ああ、なるほど…!これは、いいアイデアですね。
Littlenavyさん
「新作のお知らせもあるので、チェックしてみてくださいね」と言葉でお伝えするより、「次は、この布を使って新作を制作します!」と見てもらう方が、きっとイメージも湧いてわくわくしていただくことができると思いました。何度も試したり失敗したり…、試行錯誤を繰り返しながら制作している過程も見ていただくことができると、一層期待もしていただくことができるかと思うので。
 
そんなLittlenavyさんのものづくりを覗くことができるのが、SNS。そこへの入り口としては、まさに最高の「扉」ですね。

Littlenavyさん
アプリで簡単にQRコードを乗せることができたのもよかったです。はじめて使用しましたが、直感的に操作できて、この「キラキラマーク」のあしらいや、周りの点線もアプリのスタンプを利用したものなんですよ。

アイデアが詰まったカードに


すごく工夫が凝らされていますが、伝わってくるものはとてもシンプルで素敵ですね。
Littlenavyさん
わたしも、お客さまと同じ、子どもを持つ母でもあるので、「親しみ」を感じていただくことができるようなデザインを望んでいました。
 
仕上がりはどうでしょうか?
Littlenavyさん
両面ともに、とても納得できるものになったと思います。
 
最後に、Littlenavyさんのものづくりを覗いてみましょう。

おすすめの2作品を選んでいただきました。

裏起毛の半袖スリーパー



眠っている間にお布団から出てしまうお子さんに着せたい寝冷え防止の半袖スリーパー。「よく目にするフリースやボア生地は、眠っている子どもには暑すぎると感じていたので、肌にも優しい混綿のニット生地でつくりました」とLittlenavyさん。

作品を見る

コーデュロイのサルエルパンツ


全3カラーで展開されています。(それぞれのページでご確認ください)
希少な国産コーデュロイ生地を使ってつくられ、ウエストのサイズ調整も可能なサルエルパンツ。前後がないゆったりしたシルエットで、履きやすい・履かせやすいデザインになっています。「以前、障害があって上手く脚を曲げられないお子さんのママから『子ども向けのパンツはピタッとしたものが多くて着替えが難しかったけれど、これは履かせやすくて子どもも快適そう』とお声を頂いて、とてもうれしかったんです。可愛いだけでなく、どんなお子さんでも喜んで貰えるような作品をこれからもつくり続けていきたいと思いました」。

作品を見る

扉を開いて
まさに、「お母さんのやさしさ」のようなまっすくであたたかいメッセージが伝わるカードが完成しました。完成作品ではなく、その手前の素材を並べて「この布を使って、ものづくりをしていますよ」と見せる。それも、こんなにたのしいデザインですから、みなさんきっと作品を見に行きたくなってしまうはずです。鮮やかなプリンターの技術と、デザイン制作を助けてくれるアプリ、そしてLittlenavyさんのアイデアが集まって生まれた、とてもおもしろいものづくりだと感じました。Littlenavyさんありがとうございました。(聞き手/ 中前結花)
 
 
取材・文 / 中前 結花  撮影 / 真田 英幸

【連載】扉を開けたくなるカード
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