本との出会い
渋谷のジュンク堂書店で時間つぶしをしているとき、たまたま目にとまったのがこの本でした。『美しい日本のくせ字』。中身が気になり、その場で本の前書きを読んで「これは家で、じっくりと読みたい…!」と思い、すぐさま購入。
期待通り、手書きの文字が好きなひとにはたまらない、めくるめく「くせ字」の世界をたのしむことができました。日本の著名人、世界的スターから一般の人の直筆まで。中でもお気に入りのページをいくつかご紹介します。
松田聖子ちゃんの文字
著者の井原奈津子氏が長年、聖子ちゃんファンだそうで、アイドル絶頂期のときのくせ字(丸文字)から離婚後の文字を比較し、その変化や気づきがまとめられていたり、「実はマネージャーが書いた文字なのでは」という答えの出ない推理をされたりしているのが、なんだかツボでした(笑)。
カレー屋さんの看板の文字
わたしも街中で見かけて、気になったことのある「カレー屋さんの看板の文字」。「ほうれん草とチキンの」や「チキンとかぼちゃの」などの「の」の文字がくるくるっと丸まった文字になってしまう理由(タイ文字の「1」が似ているそう)などが紹介されており、微笑ましいページです。
稲川淳二さんの文字
前々から「稲川淳二さんの文字が整い過ぎていてフォントみたい」ということは知っていましたが、ノートにびっしり埋まった文字を見たときに、怪談話を聞いたときのようなゾッとした感覚を味わいました。きれいすぎて怖い、ということがあるんですね...!
ではさっそく
この本は、なんと「くせ字」が学べる「くせ字練習帳」付き!ということで、松田聖子ちゃんの文字に挑戦してみました。ゆっくりと、字をなぞってくせをつかもうとするものの、ひとのくせ字をものにするのは意外と難しかったです。
読み終えてみて
もともと手書き文字が大好きで、大喜利番組の回答フリップで自分好みの文字を見つけたときには写真を撮って保存するくらい、文字に執着している時期もありました。そんなわたしは著者に共感する部分も多く、うれしさを感じながら読みすすめることができました。
わたし自身の文字も少々くせが強く、コンプレックスに感じていたこともあったのですが、この本を読んで、「世の中にはたくさんのくせ字があふれていて、それぞれの文字に個性や性格があって素敵だなあ」と思えるようになりました。そんな気づきもくれるおすすめの一冊です。
著者:井原奈津子
発行:パイインターナショナル
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この本を教えてくれたひと:minneスタッフ エミリー
取材・文 / 西巻香織 撮影 / 真田英幸