140年の時を経てよみがえる「アマビエ」
先の見えない不安な状況が続く中、SNSを中心に日に日に目にする機会が増えていく、不思議な妖怪「アマビエ」。
江戸時代、弘化3年(1846年)の瓦版に描き残された妖怪として知られており、その姿は、長髪に尖ったくちばし、体にウロコ、3つに割れたヒレを持つ、半人半魚。肥後の海に出現し、
「わたしは海中に住むアマビエと申すもの。今から6年間は諸国で豊作が続くが、病も流行する。早々にわたしの姿を写して人々に見せよ」
と予言を口にし、そのまま海に消えたと記されています。
そんな「アマビエ」をモチーフに、現在、たくさんのクリエイターが「疫病退散の象徴・お守りに」とイラストや造形物として作品を制作し、SNSでシェアするという動きが注目を集めているのです。
次々と形になった「みんなのアマビエ」
そうして今回、人気漫画家や「#みんなのアマビエ」のハッシュタグをつけて投稿された全国の作り手たち総勢87名の、「アマビエ作品」を一冊にまとめた、その名も『みんなのアマビエ』が5月19日、扶桑社から発売されることとなりました。
外出自粛でお疲れの方やお子さんにもおすすめの一冊です。
登場するのは、水木しげる、西原理恵子、おかざき真里、松田洋子、永野のりこ、寺田克也、田中圭一、なかはら・ももた(敬省略)といった豪華8名の漫画家が描く個性あふれるアマビエたち。
そして、「#みんなのアマビエ」のハッシュタグで集まった作品の数々は、彫刻、陶芸、ガラス、織物、あみぐるみ…と、使われている素材やその表情もまったく異なる、それぞれのクリエイターにしかつくることができない「アマビエ」たちです。
作品の選定・編集に携わられた扶桑社・編集部の大久保さんは「Twitterで募集を開始した初日から100件を超える投稿がありました。たくさんの作品を毎日のように眺めているだけで、心が癒される思いでした」とのこと。
今回は、そんな中から、minneでも活躍されているおふたりの作品をご紹介したいと思います。
さとうゆうきさんの作品
赤と黒のコントラストが美しい七宝焼きの「アマビエ」は、さとうゆうきさんの持つ、不思議で魅惑的な作風が、アマビエの存在と見事にマッチしているユニークな作品です。
工房atariさんの作品
手のひらで、あたたかにやさしく灯る、工房atariさんの作品。神秘的なアマビエを、光で巧みに表現されています。
それぞれに込められる「疫病退散」の願い
どうか、終息と平穏を。それぞれの素材、それぞれの表現で制作された87の作品たちに、同じ願いと祈りが込められています。
本書の売上げの一部は、新型コロナウイルス対策基金に寄付されるとのこと。ものづくりの魅力と力がぎゅっと詰まった、「今」を映し出す貴重な一冊になっています。