文具のようなガジェット『フリーノ』
仕事を効率化や、趣味の拡張を手伝ってくれる、ユニークな商品でおなじみのキングジム。
『テプラ』やオフィスの『ファイル』はもちろん、デジタルメモ『ポメラ』など、「書く人」「保存したい人」の強い味方になってくれるアイテムの人気でも知られています。
7月末に発売されたばかりの『フリーノ』は、これまでのノートの不満を解消するために生まれたという、デジタルノート。
「書く」が、いったいどんな新しい体験へとアップデートされるのでしょうか。
紙のノートの「良し悪し」
打ち合わせの備忘録や自分なりの考えを、さっと書き留めたり、じっくりとまとめたり。「紙のノートだからこそ」と、そこにたのしみや喜びを感じている人も少なくないはず。
実際に、『フリーノ』の開発を担当された東山さんも、長く、紙のノートを愛用しているひとりだったといいます。
紙に手で書く、という作業はパソコンなどのガジェットに打ち込むよりも、「記憶に残る」「自由度が高い」というメリットがあります。
しかしその一方で、「どこに書き留めたのかわからなくなってしまう」「すぐに探し出せない」というデメリットを感じている人も多いことが、WEBアンケートなどによる調査で見えてきたのだそう。
そんな課題を解消するため、キングジムでは約10年前から「デジタルノート」の企画検討を始めていたといいます。しかし、
「当初、社内提案をしましたが、満足できる動作パフォーマンスが実現できないということでペンディングになってしまったんです」と東山さん。
それをきっかけに『インデックスノート』という、情報を取り出すやすい紙のノートの開発・販売が行われたという経緯もありました。
意見を取り入れながら
改めて、企画検討が再開され、採用されたのは「クラウドファンディング」という方法でした。クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」を通じ、エンドユーザーからの声を直接聞くことで、製品をさらにブラッシュアップ。
結果として、約1,600名の支援を集め、「多くのご意見、ご要望を開発に活かすことができました」と、待ち望むお客さまにとっても、開発者にとっても満足度の高いプロダクトが誕生したのだといいます。
文具のぬくもりはそのままに
そうして、10年の時を経て、今回は発売されたのが、この『フリーノ』。
一見、タブレット型端末のようにも見えますが、タイトルやタグで検索できる「デジタルの良さ」と、直感で情報を整理できたり、書いた内容を見返すことで記憶が蘇る「アナログならではの良さ」を融合させた、“紙派”にもうれしい「デジタル文具」になっています。
本体色は、デジタルガジェットに多用される白や黒ではなく、日常に溶け込むナチュラルなマットベージュ。さらに、手帳のように付け替えをたのしむことができる専用カバーにはクラフトペーパー素材を採用し、心地のよい手触りと、使うほどに馴染んでくる経年変化をじっくりと味わうことができます。
また、アナログのノートとの大きな違いのひとつとして、「暗いところでも書くことができる / 読むことができる」ということも挙げられそう。場所を選ばず、どこでも書き留め、読み返すことができるのもうれしいポイントです。
手書きの良さも、デジタルの良さも
開発期間中には、新型コロナウイルスの流行によるスケジュールの遅延や、海外工場で立ち会うことができずWEBを通じて遠隔で行うなど、これまでにない方法でなんとか発売までたどり着くことができたという『フリーノ』。
しかしこれで「完成」ではなく、今後も、定期的に機能のアップデートを予定しているのだといいます。
「手書き」ならではの魅力、そして文具のぬくもりを残しながら、利便性を最大限に引き上げることで、「書く」がさらにたのしくなりそうなデジタルノート。
これまで紙のノート以外使うことのなかった方も含め、幅広い層の方に、ぜひ実際に手で触れてみていただきたい、新しい文具です。
取材・文 / 中前結花