インタビュー

【SNSで話題のクリエイター】空箱職人 はるきるさん「変化をたのしむ、ものづくり」

SNSで話題を集める人気クリエイターに「自身のものづくり」についてお話をうかがいます。今回は、お菓子などの空箱を使い、あっと驚く華麗な作品をつくりあげてしまう空箱職人 はるきるさんに、ものづくりの師と仰ぐ人物や、過去いちばんの大作まで、たっぷりお話をうかがいました。

空箱職人 はるきる
1997年生まれ。空箱でさまざまな作品を制作する、ペーパークラフトアーティスト。
Twitter:https://twitter.com/02esyraez4vhr2l
Instagram:https://www.instagram.com/kharukik97/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCepuN5vRADX0Vem4ZR3uGlQ

ふとした挑戦


 
空箱を使った、はるきるさんの作品はSNSで常々拝見していて。見事なクラフトアートの数々には、思わず「わあ」と声が漏れてしまいます。

はるきる
ありがとうございます。ぼくの作品に興味を持っていただけて、光栄です。
 
作品はどれも身近で、馴染みのある空箱が使われていますが、どのように今の制作スタイルになっていったのでしょうか。

はるきる
昔からペーパークラフトが好きで、いろんなものをよくつくっていたんです。大学ではアート・クラフト学科フィギュア・彫刻コースに籍を置き、専門的に学んでいました。空箱を使うようになったのは今から2年ほど前のこと。「アルフォート」を食べていて、ふと、この空箱で工作ができるのではないかと思い、挑戦したことがきっかけです。

ふとした思い付きで制作したとは思えない、アルフォートの空箱を使った作品がこちら。優美で迫力のある、宇宙に浮かぶアルフォート船です。
 

最初の挑戦でこのクオリティの高さ。制作過程としては、まずデザイン画か何かを描かれるのでしょうか。

はるきる
ぼくはデザイン画は描かずに、頭の中で完成図のイメージを固めます。あとは手をひたすら動かして完成形に近づけていく。幼少時からペーパークラフトをつくっていたので、自然とできるようになりましたね。

日頃の制作における愛用道具は、はさみ、カッター、接着剤、セロテープと定番のものばかり。「どれも普通のものです。小学生が図工で使う道具と一緒(笑)。道具にはそこまでこだわらないタイプかなと思います」。


「明治ザ・チョコレート」の空箱でつくられた作品。SNS上では「商品化してほしい」など、たくさんの反響がありました。

お気に入りと大作

アルフォート船をはじめ、これまでにたくさんの作品をSNSで発表されているはるきるさん。作品を公開するやいなや、何十万という数の「いいね」がつきます。
 

ご自身の活動の中で、ターニングポイントになったと感じる作品をおしえてください。

はるきる
3作目に「プリングルス」の作品を制作しまして。いつも通りTwitterに投稿したところ、その作品に33万いいねをいただき、自分でも驚いてしまいました。自分にとってのターニングポイントであり、お気に入りでもある、思い入れのある作品です。アイコンの画像にも使用しているので、「はるきる=プリングルス」で認識してくださっている方も多いのではないかと思っています。
 
キャッチーなパッケージのキャラクターを活かした、平面から飛び出てきたかのようなユニークな作品ですね。ひと目見ただけで、とても印象に残っていました。

はるきる
まさに、アイデアを練る際に、ぼくがいちばん大切にしていることは「その空箱のデザインや色合いを活かすこと」なんです。プリングルスはとてもわかりやすいですよね。ほかにも、たとえば「ムーンライトクッキー」だと、パッケージデザインと名前にある「月」のイメージを元に、「空に浮かぶ三日月と、月を吊るすための時計塔」というアイデアにつながっています。

「ムーンライトクッキー」の空箱を使った作品。クッキーの三日月が夜空に映える、絵本の1ページのような世界観にうっとり。チェック柄の活かし方も素敵です。
 
はるきるさんの作品は、大胆さと繊細さのメリハリも特徴のひとつかと思います。細かい作業も多いかと思うのですが、これまでにいちばん制作時間を要した作品をおしえていただけますか。

はるきる
過去作の中でいちばんの大作は、「シャルロッテ」の空箱で制作した作品です。普段はひと箱で制作することも多いのですが、この作品はシャドーボックスの要領で、平面を重ねて立体感を出しているため、4デザイン×4箱で計16箱を使用しました。制作時間は20時間ほど。

ひとつひとつのお店が立体的に生まれ変わり、ひとつの街に。細部までこだわり抜かれた超大作です。

「誰が見ても」がいい


 
はるきるさんにとって、使いやすい箱の基準はありますか。

はるきる
中身の商品以外に、わかりやすいイメージが連想できることです。「アルフォート」なら、チョコレートだけでなく船のイメージ、「ムーンライトクッキー」にはクッキーだけでなく月のイメージ、「プリングルス」なら紳士のキャラクター、「メルティーキッス」なら雪......など。連想できるイメージがわかりやすい箱ほど、制作していてたのしいんですよ。

これまでに制作に使用した空箱の一部。完成作品は個別に小さなダンボールに入れて保管しているそう。「展示会もよく開いているので、お近くで開催した際にはお越しいただけたら幸いです」とはるきるさん。
 
なるほど。「わかりやすいイメージ」だからこそ、大人だけでなく子どもまで、幅広い人の目を惹くのかもしれませんね。

はるきる
ぼくの作品の魅力は、作品そのものの技術や完成度よりも、みんなが知っている四角の箱が立体に生まれ変わるその「変化のおもしろさ」にあると思うんです。以前に、小さなお子さんがぼくの真似をしてつくった紙工作を見せてくれたことがあって、とてもうれしくて。みんなに紙工作の“わくわく感”を伝えられたらいいなと考えるようになりました。ぼく自身、幼少時に毎日見ていた「つくってあそぼ」のワクワクさんがきっかけで紙工作が好きになったという経緯もあります。ぼくの師匠、ワクワクさんのように、つくるたのしさのきっかけを与えられるようになれたらいいですね。
 
作品を通して、つくることのおもしろさ、わくわくを伝えていく。いいですね。

はるきる
芸術やアートの世界って、馴染みのない方たちからすると、難しくてよくわからないイメージもあると思うんです。だからぼくは、誰が見てもおもしろさやたのしさが伝わるような作品づくりを目標に、これからも制作していきたいです。ぼくの作品を見たたくさんの人たちに、「ものづくりって、おもしろいな」と感じてもらうことがでたらとても幸せですね。
 

取材・文 / 西巻香織

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