kyi
3つ子として生まれ、それぞれが育んできた技術や感性をコラボレーションして、さまざまな雑貨を制作。
https://minne.com/@kyi
https://minne.com/@kyi
淡い水彩画のようなタッチや、絵本の世界から飛び出てきたようなキャラクター、ユニークな総柄など、kyiさんのギャラリーページを覗くと実にさまざまなオリジナルテキスタイルの作品に出会うことができます。
左から、カモフラージュ柄ミニポーチ、ふわふわマスコット(うさぎ)、帆布トートバッグ(SAMURAI)
3つ子のユニットとして作家活動を始めたきっかけや、制作する上で大切にされていることなど、kyiさんの「ものづくり」に迫ります。
「また、一緒に」
kyiさんはカテゴリーにとらわれず、いろいろな作品をつくられていますが、みなさんが「ものづくり」に触れられたのは、いつ頃からですか。
kyi
手芸や絵画、書道をしていた母の影響で、幼い頃からシルバニアファミリーの洋服をつくったり、オリジナルの着せ替え人形を自分たちでつくってあそんでいました。
洋服をつくられていたんですね。
kyi
そうなんです。最初は遊びでつくっていたんですが、大学生の頃には、3人でアパレルブランドを立ち上げました。ただ、当時はまだ学生で社会経験が浅く、技術面の知識が十分でなかったこともあって、結局解散をしてしまって。そのとき、「それぞれ別の仕事でスキルアップをしたら、いつかまた一緒に」と約束を交わして、それぞれ企業でデザイナーやパタンナーとしてキャリアを重ねてから、2013年11月に開催された「デザインフェスタ」を機に、ハンドメイド雑貨のブランド・kyiとして活動を始めました。
時を経て、また3人で一緒に、というのはいいですね。
kyi
みんなものづくりが好きだったので、やるなら一緒に、という想いは自然と頭の中にありましたね。作家活動を始めてからは、それぞれ刺繍担当、イラスト担当、縫製担当と役割を分担して制作をしていて。3人の感性が組み合わさる分、さまざまな作品が生まれています。
水彩絵の具のやさしい色使いはkyiさんの作品の特徴のひとつ。イラスト担当の佳子さんにお気に入りの道具を見せていただきました。「愛用しているのは、イラストアルシュ水彩紙ブロック(荒目)、水彩パレット、Winsor & Newton プロフェッショナル・ウォーターカラー、PMパッドです」。
使う人の世界を変える
kyiさんは、オリジナルのテキスタイルをもとに作品を展開されていますが、描かれるモチーフは人、もの、どうぶつ、自然、とさまざまです。どんなときに「これを描こう」とインスピレーションが湧くのでしょう。
kyi
常に身の回りのものからヒントは得ていますが、強いて挙げるとすれば、整列された本棚や花壇など、あらゆる場面での何かの集合体を見たとき、自分の頭の中で足し算、引き算をしているのを感じますね。
イラストのデザイン自体や、そのテキスタイルでつくられる作品も一風変わっていたり、ユニークな印象があります。
靴のオリジナルテキスタイルは、中に除湿・消臭効果を持つひのきチップを入れて「シューズドライ」に。靴の中に靴を入れるというユニークな発想と、上品かつおしゃれなデザインで売り切れが続出したヒット作。
kyi
3人分の視点があるので、枠にとらわれないアイデアが生まれるのかもしれませんが、わたしたちは、「必需品ではないけれど、あればたのしいもの」をつくろう、常々と言っていて。特に大切にしたいと思っていることはこの3つです。
1、「たのしい!」をコンセプトに、使う人の世界を変えるアイテムであること。2、わたしたちの好きな世界観をしっかりと届けること。3、お客さまの視点をもつこと。
使う人の世界を変える、いいですね。
kyi
大げさなことではなくて、「前よりもちょっぴり毎日がたのしい」とか、ささいなきっかけになれたらいいなと思っているんです。お客さまが日々をたのしむことができ、わたしたちも好きでい続けられる作品づくりを心がけています。
人やどうぶつでAからZまでを表現した、くすっと笑える人気の「ABCシリーズ」。
kyiさんの作品レシピ
そんなkyiさんには以前に、「トンボ鉛筆とminneの特別企画」でトンボ鉛筆の画材を使った作品レシピ制作にご協力をいただきました。
kyiさんの考案レシピ『ABTと水筆で描いてつくる「鉢植えのカラフルな布製カバー」』より。
普段、作品レシピはどのように開発されていますか。
kyi
「こういうものがあれば良いな」と思うものをいちから考えて開発することが多いです。友人にプレゼントをする機会が多いこともあり、「もらってうれしいものは何か」と考えたり、自分たちがほしいと思うものからアイデアを出し合うこともありますね。
ポイントは、オリジナルの図案を用いること。ごくありふれたものでも、ここにしかない、という価値を加えてつくるようにしています。
「初めて使う画材だったので、使いながら慣れつつも、誰でも描ける絵柄を決めるまで苦労しました」とkyiさん。
今回、発案いただいた作品レシピのポイントをおしえてください。
kyi
今までにない新しい柄というよりはkyiの定番ともいえるような柄を、みなさんが簡単に描けるように工夫しました。鉢植えカバーと、ブックカバーの2作品のレシピをご紹介しましたが、どちらもkyiで展開しているものの中から、より手軽にチャレンジいただけるように、身近な材料を選んだり、工程をとことん簡略化しました。
ABTや水筆の使用感はいかがでしたか。
kyi
ABTはある程度慣れが必要ですが、色を足すことも簡単で、想像以上に使いやすかったです。水筆はこれまで使ってきたものと比べて断然使いやすくて驚きました。適度にコシもあるので初心者の方にもおすすめですね。どちらも、本番前のイメージづくりや、外出先のスケッチ用としても活躍してくれそうです。愛用の画材とABT、水筆を組み合わせた、新しい描き方にも挑戦したいです。
今後のご制作にもぜひご活用いただければと思います。最後に、作家としての今後の展望をおしえてください。
kyi
趣味ではなく、生計を立てていく道を選んだこともあって、コスト面で妥協しなければならないこともあります。こだわりを詰め込んだ作品が価格面でもみなさまに受け入れられ、その連鎖をどんどん広げていけたらいいですね。そのためにも、わたしたちの世界観を大切にしながら、これからもみなさんにたのしんでいただける作品をつくり続けていきたいと思います。
kyiさんの作品レシピは、トンボ鉛筆メディア「FUN ART STUDIO」でご覧になれます。どなたにも手軽にチャレンジできる内容となっていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
取材・文 / 西巻香織