好きな色は透明です
こんにちは。透明愛好家のtomeiです。
みなさんにひとつ質問があります。みなさんにとって好きなものってなんでしょうか?
もうすでに見つけている人、探している人、いろいろな人がいるかと思います。
好きの選択肢ってとても多くて、まるでメニューが多い料理店いるような感覚になることがあります。壁掛けメニューが所狭しと敷き詰められていて、日替わりの流行メニューに目移りしそうになります。
店内を悠々と歩くウェイターさんに話しかけるタイミングを長らく推し量るけれど、注文した先の厨房はまったく見えないんです。そんな何が出てくるかわからない料理店で何を選ぶのか考え続ける。
私自身、ほんの数年前まではそんな料理店でメニューを眺めている日々でした。
「透明」という存在を好きなものとして素直に表現できるようになったのは本当につい最近のことだったんです。
「透明」との出会い
「海の砂浜に落ちているシーグラス」「吸い込まれそうなほど透明な海」。
小さい頃から透き通るものを見ると、ずっと時間を忘れて眺めていたくなるような不思議な感情を覚えていました。
今考えれば、あのときからすでに「透明」というものに惹かれていたのかもしれません。
歳を重ねていくうちに小さい頃の記憶も忘れて、他愛のない日々を過ごしていきました。
あるとき、友人から「好きなもの」について尋ねられた際に、ふと頭の中に「透明」が沸き起こってきたことがありました。
そして同時に、このシンプルな答えについて考え込んでしまうのです。
「透明という漠然とした選択肢が理解されるんだろうか」。
そのときは結局、答えを出せないまま頭の片隅にそっとしまっておくことにして、心の引き出しの箱から代用の答えを渡すことにしました。
周りを気にして、言いたいことが言えなかったりする経験、みなさんもあったりしませんか?
少なくとも私はたくさんありました。
ただ、それを繰り返していると、自分の素直な気持ちが迷子になったりするんです。
得意なこととか好きなこと、言葉にできない気持ちだけが波に揺られてクラゲのように漂っているみたいで、自分は何者にもなれなくて、焦燥感と時間が積み重なっていくときもありました。
だからこそ、自分と向き合う時間って大事だなと心から感じるんです。
そう思ったきっかけは、数年前に趣味で始めたカメラでした。
ファインダー越しの「透明」
自分が写した写真を見ると、そのときの感情だったり、何に惹かれてシャッターを切ったのか思い返すきっかけになって、ファインダーを通して自分の心を見つめていくうちに、やっぱり私は透明なものに惹かれているんだなと自分の好きなものをより意識するようになりました。
“目には見えない”という表現でも使われるこの「透明」という言葉は、何者にもなれないと悩んでいた自分にはとてもしっくりくるような感覚だったのです。
何より、視覚的に透き通っているだけではなく、水や空気のように人々の生活に寄り添うこの「透明という存在そのもの」が好きなんだなと実感するのでした。
そこから少しずつ、自分の感じた素直な気持ちや透明な写真をSNSという匿名の世界で発信していくようになって、同じような気持ちを持つ人がいることに気付きました。
理解されるかわからないと悩んでいた「好き」を肯定してくれる仲間ができていく感覚がこの上なくうれしかったです。好きなものを好きと言える環境や、居場所、肯定し合える関係性を、どこか遠くにいるかもしれない誰かと築けると実感できる大切な経験でした。
透明愛好家というのは、透明が好きな人との輪をつなぐ他にも、何か好きなものを持つことのたのしみを知るきっかけになれたら良いな、と、ささやかな願いも込めています。
透明スイーツレシピ
先日、私がSNSで配信してきた中で、特に反響が多かった透明スイーツをまとめた1冊が発売されました。
書籍を手がけたのは、好きなものを発信したことで、気持ちに応えてくださった多くの方々に本という形で「ありがとう」を伝えられたらなという想いがあります。
料理を始めたての方でもつくれるようなシンプルな材料、写真の透明感が引き立つように試行錯誤しました。何より「本棚の奥で埋もれてしまう本」から「買った人のその先を想う本でありたい」というテーマを大切にしました。
手に取った人がスイーツをつくったり、写真集のように眺めてお部屋に飾ったりと色々なたのしみ方ができる本になっています。
「透明がみなさんに寄り添う存在でありますように」。
手に取る瞬間も、その先も、ずっとこの想いが水のように浸透し続けていけたらと心から願っています。
次回は、そんな私の「制作」について綴りたいと思いますので、おたのしみに。
写真 / tomei
編集 / 西巻香織