OTO OTO
「折紙の輪っか飾り」をテーマにしたアクセサリーや雑貨を制作。
https://minne.com/@otooto-hoi色とりどりのリボンを使い、折紙の輪っかをつなげてつくる“輪っか飾り”をモチーフにした作品を制作するOTO OTOさん。懐かしさと親しみ、わくわくと心踊るような感情を思い出させてくれるようなそのデザインは、たくさんの人の心を掴み、身につける人の装いをやさしく彩り続けています。
今回は、そんなOTO OTOさんの作品の中から、特に人気を集め続けている「輪っか飾りブローチ」ヒストリーに迫りました。
「つくる」衝動
「輪っか飾りブローチ」をつくりはじめたきっかけをおしえてください。
OTO OTO
わたしがはじめて作品をつくったのは、2013年のことです。当時わたしは、会社員を辞めてデザインのソフトを勉強する専門学校に通っていました。
たまたまその頃、身近な友人がハンドメイドアクセサリーをつくり始め、何気ない会話の中で、「いっしょに作品展示をやってみよう」という話になったんです。わたしは学校の勉強を生かして、宣伝用の素材やPOPを担当することになりました。
最初はアクセサリーではなく、展示の告知や作品を引き立てるためのものを制作されていたんですね。
OTO OTO
はい。ところが準備を進めるうちに、いつの間にか自分でも「作品」をつくりたくなってしまって(笑)。「わたしならどんな作品をつくるだろう?」と考えるようになりました。
すると、「つくるなら、他にはないようなものをつくりたい」という気持ちがどんどんふくらんでいきました。
会社員時代に文具メーカーに勤めていたこともあり、「“文具”をテーマにしたらおもしろそうだな」と、ふと思ったんです。そんなとき、たまたま本物の折紙で輪っか飾りをつくる機会があって。
OTO OTO
それを眺めているうちに、「これがアクセサリーになったらかわいくない!?」とひらめいたわけです。わたしはもともとブローチが好きだったので、最初につくるアイテムは迷いなくブローチに決め、早速つくってみました。
POPを担当するはずが、作品を制作されたとは、ご友人もおどろかれたでしょうね。
OTO OTO
そうですね(笑)。でも友人はすぐに理解してくれて。わたしに「ブローチって、どうつけたらいいかわからない人もいるからすこしハードルが高いかも。自分だったら、耳とか腕につけるアイテムの方がいいな」とアドバイスをくれました。
なるほど...!と思い、ブローチと合わせてブレスレットや耳飾りもつくって、いざ販売当日。……友人の言った通り、ブローチはあまり見てもらえませんでした。
ただ、わたしにとってはこれがとてもいい経験になったんです。
ブローチを育てる
ブローチを、見てもらえなかったことがいい経験に?
OTO OTO
ブローチ好きの自分としては「なんとかこのブローチのかわいさを伝えなければ!!!」と奮起したんですね。ブローチの着画やPOPの用意に、これでもかというくらい力を注ぐようになりました。
試行錯誤しながらもいろんなアピールをするうちに、すこしずつブローチの魅力が伝わったのか、だんだんと目を向けてもらえるようになったんです。
作品をつくるだけでなく、その魅力をきちんと届けるところまで尽力されたんですね。
OTO OTO
今思うと、その過程はまるで「ブローチを育てる」ような感覚でしたね。今では、ブローチがOTO OTOで1番人気のアイテムになりました。
不動の人気アイテムとなった「輪っか飾りブローチ」。今や「OTO OTOさんと言えばこれ」という、まさに代名詞的な作品に。
「輪っか飾りブローチ」は、モチーフ自体が誰にとっても親しみがあるものなので、身につける人を限定せず、幅広い方に愛されている印象です。
OTO OTO
ありがとうございます。女性だけでなく男性ファンも多いのが、「輪っか飾りブローチ」の魅力のひとつだと感じています。スーツのジャケットにもよく合うので、お祝いの席などでつけてくださる方もたくさんいらっしゃいますね。
カラーバリエーションが豊富なので、コレクションしてくださる方もいて。中には50点ほどお持ちの方もいらっしゃいます。集めるたのしさも感じていただけているようで、とてもうれしく思っています。
トリコロールやグラデーションなど、カラーバリエーション豊かな「輪っか飾りブローチ」。
2020年は誕生石カラーをイメージした限定色も販売を開始し、瞬く間に売り切れてしまいました。
(※過去月分の販売は終了しています)
“輪っか飾り”をモチーフにした作品をつくり続けてきた中で、変化した部分があればおしえてください。
OTO OTO
2013年に生まれた「輪っか飾りブローチ」は、形はずっと同じまま、色のバリエーションをたくさん展開してきました。発売当初からある「定番色」と、そのときごとの「限定色」の2つを用意していて、これまでにつくった限定色は、100種類以上。いつもテーマを設けて、小さな輪っかの中に、色で描いた物語を込めています。
OTO OTO
2018年には、パッケージをリニューアルしました。お客さまのレビューの中に「かわいいので、しばらくお部屋に飾って眺めます!」というお声が多くあって。ということは、飾りやすいパッケージだったらもっといいかなと。それまで透明袋に入れていた作品を、クリアボックスにおさめる形に変えたんです。
パッケージは「OTO OTO SUMIKA」と命名。「ブローチを保管する場所として、おうちのような存在を用意することで、より長く愛用していただくことにもつながるのではないかと考えて名付けました」とOTO OTOさん。
OTO OTO
さらに、ブローチの金具も変化しました。もともとは市販のピンを使用していたところ、国内の金具工場さんとご縁があり、現在はロゴ入り、Made in Japanのピンに。つまり、今の「輪っか飾りブローチ」のピンはオリジナルでどこにも売っていないものなんです。
わたしは、この金具やパッケージも作品の一部のように思っています。
ブローチ自体の形はずっと貫きつつも、いろんなことをアップデートしてより良くしてきました。
作品の、その先へ
さまざまな変遷を経て、今の「輪っか飾りブローチ」があるのですね。
OTO OTO
作家活動をはじめたときから、アクセサリーという「もの」だけをつくっている感覚はあまりなくて。パッケージや販売イベントでのディスプレイ、わたしの想い、すべてがあってこそのOTO OTOだと思っています。作品づくり以外の面も大切にしている、というのはある種のこだわりかもしれません。
作品は、わたしがつくった時点では〝完成〟していないのかなと感じることもあります。お客さまの暮らしの中で、たとえば、「こんな場所につけていったな」とか「誰かに褒めてもらえてうれしかったな」とか、いろんな思い出が重なることで、より好きになったりお気に入りになったりして。そういう出来事の中で、深みが増していき、はじめて完成といえるのかな、って。
作品のその先、お客さまの手もとに届いた後、永くたのしんでいただくところまでがOTO OTOさんの「ものづくり」なんですね。
OTO OTO
作品をお客さまといっしょにたのしみたいな、という気持ちが常にありますね。ときどき、ファンの方にも参加していただけるコンテストのような催しも実施しています。昨年は「♯OTO OTOブローチと コンテスト」を開催しました。ブローチをお持ちのお客さまに、思い思いのブローチコーデ(好きなお洋服や、他のブローチと組み合わせていただく)を写真で投稿いただく企画だったんですが、ブローチのいろんな使い方を見せていただけて、わたしもとても参考になりましたし、とってもたのしかったです。
これからもOTO OTOの作品は、生まれた後、ファンの方にもいっしょに育てていただけるような存在であれたらうれしいです。音楽が誰かの人生を支えたり曲がライブで育っていくように、アクセサリーにもそんなストーリーがあったら素敵ですよね。
まさに輪っか飾りのように、人と人がどんどんつながっていくようなイメージが浮かびました。OTO OTOさんの想いをのせた「輪っか飾りブローチ」はご自身にとってどのような存在ですか。
OTO OTO
わたしにとって宝物といっても過言ではありません。「わたしの人生をつくってくれたもの」、そんなふうに思っています。今年で作家活動7年目。はじめてブローチをつくった日には、こんなにも長くつくり続けることができるなんて、想像もつかなかったです。
改めて、これまでにつくったブローチの数を数えてみたら、約4,000個になっていました。ブローチは1点につき輪っかが12個あるので、つないだ輪っかは、約48,000個。さらに、耳飾りをはじめ、ほかのアイテムもあるので、約150,000個以上という計算になり、この数には自分でも驚いてしましました。「ロングセラー」と自分で呼んでしまっていいものかわかりませんが、これほどたくさん届け続けることができて、本当に幸せです。
いえいえ、 間違いなくロングセラーだと思います!では最後に、今後の目標や夢をおしえてください。
OTO OTO
今はコロナ禍ということで、日々悩んだりうまくいかないことがたくさんあります。でもそんな中で、わたし自身は音楽を聴いたり、映画を観たりして元気をもらっています。どんな状況でも、娯楽というのは、心を癒してくれたり、作家活動への刺激を与えてくれる、欠かせないものだということを改めて感じる日々です。
エンターテイメントの力に比べると本当に微力かもしれないけれど、OTO OTOも、誰かに元気や何かのきっかけを届けられるよう、これからも制作を続けていくことが目標です。そして最後にわたしの夢をお話させてください。
わたしが作家として活動する一歩を踏み出せたのは、シンガーソングライターの安藤裕子さんのライブステージがきっかけでした。圧倒的な歌唱表現力で輝く彼女に憧れ、わたしも何かひとつ「最高の自分になれるものがほしい」と思ったんです。だからいつか、そんなきっかけをくださった安藤裕子さんとお仕事をすることが夢です。叶うようにがんばります。
作品とそれに関わるすべてのもの、人、想い。すべてに心を向けて作家活動をされているOTO OTOさん。手がける「輪っか飾りブローチ」はこれからも広く、永く、さまざまなものをつないで大きな存在になっていく予感です。今後の展開も含め、OTO OTOさんのギャラリーページをぜひチェックしてくださいね。
次回の作品ヒストリーもおたのしみに。
作品ギャラリーを見る
取材・文 / 西巻香織