こんにちは。透明愛好家のtomeiです。
前回のvol.1コラムでは、「透明との出会い」について触れましたが、 今回は「透明の制作」についてお話したいと思います。
息をするようにつくる
みなさんは「好きなことに向き合う瞬間」について考えたことはありますか?
私は透明愛好家として、毎日透明なスイーツや雑貨を写真におさめ、 SNSで発信をしています。そのため、毎食のように透明な食べものを口に運び、 棚にはいつも透明な雑貨が並んでいる。出先や本屋で透明なものを見つけたときは、ふと足を止めてしまう。
何かを続けていくとき、途中で続けることを諦めそうになったり、再び始めるのが億劫になったりするものですが、「透明の制作活動」は不思議と苦に感じる瞬間がないということに気付きました。
透明なスイーツをつくっているとき、ファインダー越しに作品を写しているとき、私にはとても穏やかな時間が流れています。
たとえ嫌なことがあったとしても、それを忘れてしまうくらいに没頭できる不思議な力を、「透明」は持っています。
また、日々の暮らしの中で透明を探すことは、好き嫌い、たのしさ、努力などということばで表現できるものではなく、私にとっては息をするかのように自然な感覚で行なっていることなのです。
アイデアは「日常」に
美しいと感じるもの、心が惹かれるものは案外身近なところにあるもの。
わたしのアイデアの原点は「日常」にあります。
透明スイーツのモチーフは、春に舞う桜、秋に香る金木犀のように、四季折々の景色や空気を感じる中でインスピレーションが湧くことが多いです。
“ふとしたとき、心が持って行かれてしまうような気持ち”ごと標本のように閉じ込めることができたら、なんて考えながら制作していたりもしたものです。
たとえば小さい頃、誰に言われるまでもなく始めたお絵かき、テレビのゲーム、友達との雑談。
自然に始めていつの間にか夢中になっていた…というものは、どんな些細なことでも大切にするべきなのだと、今となっては強く思います。
私にとって、それが「透明を探すこと」だったのだと思うからです。
作品を振り返って
そうしてこれまでに手がけてきた透明な作品は、そのひとつひとつが大切で、写真を見るたびにそのときの記憶がよみがえったりします。
作品づくりを続けていく中で、ターニングポイントとなったと感じる作品は「イチゴのミルクゼリーケーキ」 。
ゼリーケーキをつくったのはこれがはじめてで、牛乳を消費したくてという些細な理由から制作したものでしたが、想像以上に反響があり、多くの方に知っていただく機会となりました。
透明スイーツをつくり続けてみようと思ったきっかけのひとつです。
お気に入りの作品…を選ぶのは全部が好きなのでとても難しいのですが、 思い入れのある作品のひとつは「夜空の水信玄餅」です。初夏に出した作品で、澄み渡る夜空を水信玄餅に閉じ込めました。
現在は都心に暮らしているので、光り輝く満点の星空を目にする機会はなかなかありません。だからこそ、つくってみたいと思いました。
眠らない街の夜空でも、無数に星は散りばめられていて、けれど、よく目を凝らさなければそれは見えない。どこか遠くの静かで暗い場所で見る星空は同じ空でも違って見えるんだろうか…そんなふうに考えながらつくった作品です。
最後に、特に反響が大きく印象的だった作品が「透明なレモンタルト」です。 誰もにとって親しみのあるタルトを透明と掛け合わせることで、新しさと親しみを兼ね備えた作品ができあがりました。
絞ったクリームが宙に浮かんでいるようなビジュアルに、たくさんのおどろきの声が寄せられてとてもうれしかったです。
作品をつくってSNSで発信することで、反響があったり、ときに誰かの癒しになったり、 自分では考えられなかった視点の発想が生まれたりすることが何よりのよろこびです。
遠くの人を繋げてくれる、匿名だからこそ表現できることがある世界は可能性に溢れていて、そこは私にとって今や欠かせない世界だったりします。
透明スイーツレシピ
先日、SNSで反響の多かったレシピをまとめたスイーツレシピ本が発売されました。
先ほどお話した「イチゴのミルクゼリーケーキ」、「夜空の水信玄餅」、「透明なレモンタルト」 も本の中に掲載しています。作品ひとつひとつにはこうしたコンセプトが詰まっていて アート作品としてもたのしむことができます。
レシピ本としてはもちろん、料理をつくって写真を撮るまでの過程のたのしみも感じることができる1冊です。 好きなものを好きと言える素敵な時代に手がけた、透明愛好家の心を込めた透明スイーツレシピが多くの方に届きますように。
そして、つくる、語る、集める、売るなどたくさんの選択肢がある中で、 ひとりでも多くの人が「息をするように続けていけることを見つけられますように」と願っています。
次回は、そんな私の「愛用道具」について綴りたいと思いますので、おたのしみに。
写真 / tomei
編集 / 西巻香織