Aoyama Book Cultivation
こんにちは、山下です。
今回は、書店である青山ブックセンターが「出版」を行う、本を世に送り出す、というプロジェクト「Aoyama Book Cultivation」についてお話したいと思います。
実は、現在このプロジェクト第2弾となる1冊を準備していて、その紹介をしたくてうずうずしているのです。今回はその準備のお話を、次回は、「実際に出版してみて」についてお届けできればと思います。
Aoyama Book Cultivationは、本屋から出版業界への挑戦状としてはじめた取り組みです。そもそもなぜ、書店である当店が出版するのか、やその経緯は色々なところに既出なので、そちらを参照してくださるとうれしいです。
第2弾、始動
12月13日に当店の出版プロジェクトの第2弾として、木村まさしさん著『ALL YOURS magazine vol,1』を刊行します。※事前予約限定の予約を受付中です。
これは、ファッションブランド・オールユアーズの木村まさしさんによる初の著書。
ブランドを形づくる根源にある思想を紐解くための書籍となっています。
「雑誌と書籍の間」にあるような形態を意識し、章立てのページ以外にもビジュアルページやコラム、対談など、さまざまなコンテンツが凝縮された内容です。
オールユアーズは、インターネット時代のワークウェアの提供を目指し、2015年に創業されました。
「オールユアーズの服は着飾るためのものではありません。」
「着る人を中心に服を考えると、ファッショントレンドや見た目、誰がつくったかという情報よりも大切なことがあると私たちは考えています。」
「この移りゆく時代の中で、本当に必要なものとはなんだろうか?
“仕事と日常生活関係なく着られる。着ているときはストレスがなく、その後の手入れも簡単。それでいてちゃんとして見える”
いまこの時代でそんなものが必要とされていると思うのです。
目新しいものではないかもしれない。特別なものでもないかもしれない。
でも朝起きたら、なぜかそれを選んでしまう。
気づいたら日常に溶け込んでいる。
特別な日のためではなく、日々の暮らしのための服。
オールユアーズはあなたの生活に寄り添う服を目指しています。」
(オールユアーズHP・オールユアーズの価値観より)
そもそも木村さんと初めてお会いしたのは、まだ当店が出版をすることになるとは、まったく思っていなかった頃。
2018年11月に山梨県甲府、五味醤油の食の体験スペース・KANENTEにて開催された、独立研究者・森田真生さん×思想家・ドミニク・チェンさん×発酵デザイナー・小倉ヒラクさん×ミシマ社・三島邦弘さん、という個人的に伝説級のイベントに参加したときに、木村さんもいらしていて、ヒラクさんに紹介していただき、お話する機会がありました。
もともと、オールユアーズ自体は知ってはいたのですが、このときから、さらに興味を持つようになり、ハイキックジーンズを購入したりと、木村さんやオールユアーズの動向を深く追っていくようになりました。
出版する側として
実は、出版プロジェクトが動き出したタイミングで、第1弾として真っ先に思い浮かんだのが、木村さんでした。
知れば知るほど奥深く、洋服だけにとどまらない魅力を感じ、誰よりも自分自身がもっと木村さんとオールユアーズのことを深掘って、書籍という形で深く届けたいと思ったからです。
ある日、たまたまヒラクさんと出版について話しているときに、木村さんが偶然お近くにいらしたので合流し、その際に執筆依頼をしました。
まだお会いしたのが2度目ということもあり、「一度、じっくり話しましょう」ということで、後日、オールユアーズの事務所に伺うことに。
そもそもなぜ当店が出版するのか、なぜ木村さんなのか、今までの本屋としての仕事について、音楽などについて。当たり前ですが、執筆依頼自体が初めてで、本当に緊張で汗が止まらない状態で話し続けていくうちに、快諾していただくことができました。
出版プロジェクトの第1弾としてお願いしたかったのですが、ちょうど同じタイミングで、オールユアーズは全国で試着会を行う「47都道府県ツアー」をスタート、またコロナウイルスの蔓延などにより、紆余曲折を経て、今回第2弾としてついに発売することができました。
木村さんをはじめ、編集の角田貴広さん、デザイン・装幀の阿部雅幸さん、皆さんにとってこの本がデビュー作となり、まさにバンドのデビューアルバムのような雰囲気を纏った1冊になりました。
※11月30日、皆で印刷立会いに臨む予定です。
第1弾に続き、印刷・製本では藤原章次さんを中心に「藤原印刷」に全面協力をいただきました。できること、できないことをせめぎあいながら、最善のご提案をいただき、より良く仕上げることができました。
ここまで書いておいて、正直、どんな本かというと簡単には伝えるのが難しく、予約を受付けるには不向きな本です。
それでも手に取っていただけたら、胸を張って最高の1冊と言っている意味が伝わる自信があります。発売日をたのしみにしていてくださるとうれしいです。
今回の1冊
著者:小倉ヒラクまさに手前味噌ですが、改めて紹介させてください。
当店の出版プロジェクト「Aoyama Book Cultivation」の記念すべき第1弾。小倉ヒラクさんが、47都道府県の知られざる発酵文化を訪ねた旅が写真集に。数百年継承されてきた日本独自の発酵文化にまつわる、さまざまなシーンを切り取った写真が86点収録されています。日本酒や醤油などおなじみの発酵食品から、宮崎県日南海岸の「むかでのり」、青森県十和田の「ごど」、長崎県対馬の「せん」など、未知すぎる驚愕のローカル発酵食品まで、日本文化の多様性とその土地に生きる人々の営みを垣間見ることができます。その他、書き下ろしのエピソードも収録。
とにもかくにも、ヒラクさんの写真と藤原印刷さんの印刷がめちゃくちゃ良いです。ヒラクさんの視線、視点、そしてつぶれない黒をはじめとした印刷の質と技術。さらにサイズ感や表紙のチョイスや装丁など、いわゆる出版社では企画が通らないようなことも詰まっています。ぜひ。
山下優Twitter:https://twitter.com/yamayu77
青山ブックセンター本店 公式HP:https://aoyamabc.jp/
書き手 / 山下優
プロフィール写真 / 植本一子
編集 / 西巻香織