山形の農家から届いた究極のあん
昔、仙台で食べた「ずんだ餅」。
みどり色の美しいあんと豆の風味、やさしい甘さがとてもおいしくて、おうちで再現してみようと思い、つくったことがあります。
しかし大量の枝豆を買い、ゆでてつぶす作業に、実はちょっと手間を感じてしまいました。
それでもおいしくて、また食べたいなと思っていたところ、山形県の枝豆農家・治五左衛門(じござえもん)さんの「だだちゃ豆あん」に出会いました。
みなさんは「だだちゃ豆」をご存じですか?
だだちゃ豆は、江戸時代から栽培されてきた在来種の枝豆です。日本で唯一「ユネスコ食文化創造都市」に認定されている山形県鶴岡市でのみ栽培され、収穫期間も限られている希少な品種。
枝豆の中でいちばんおいしい「究極の枝豆」とも言われていて、茹でると独特の香ばしさを放ち、噛むほどに甘みと旨みを感じることができます。
治五左衛門さんの農園では、20種類もの品種の種をまき、それぞれのピークを見極め収穫することで毎日おいしい枝豆がとれるそうです。
今回ご紹介する「だだちゃ豆あん」は、そんな治五左衛門さんのだだちゃ豆を100%使用してつくられた、豆の旨みと芳醇な香りをたのしめる、贅沢な一品です。
シンプルにお餅やお団子につけて食べてもおいしいのですが、今回はこの「だだちゃ豆あん」をふわふわの生地で挟んで「どら焼き」をつくります。
明日のおやつにつくりたい
だだちゃ豆のずんだどら焼き
・ベーキングパウダー 小さじ1/3
・卵 1個
・砂糖 60g
・牛乳 40ml
・だだちゃ豆あん お好みの分量
1、ボウルに卵と砂糖、牛乳を入れて混ぜます。
2、薄力粉、ベーキングパウダーを加え、つやが出るまでしっかりと混ぜたら生地が完成です。
3、フライパンを熱し、スプーンで生地をすくい、フライパンに丸く落とします。
4、表面にふつふつと穴が空いてきたらひっくり返します。
5、生地ができたら、あんを塗っていきます。
あんのいい香りがして、ひと口なめてしまいました。おいしい!
6、最後にふわふわの生地でサンドすれば、完成です。
いつものおやつにはコーヒーを飲むことが多いのですが、今日は温かいお茶と合わせていただきます。
甘みの中に、豆の風味も感じられ、手が止まらないおいしさでした。
残ったあんは、次の日にトーストした食パンに乗せて食べたり、白玉とからめて食べたりと、「究極の枝豆」の味わいをたっぷり堪能することができました。
食材を通じて、方言や郷土料理に思いを馳せる
だだちゃ豆は日照りが続くと本来の味がでにくくなり、雨の日が続けば実りが悪くなり、風が吹き続けば水分が奪われ味が落ちると言われるほど、気候に左右されやすい植物です。
だだちゃ豆も、人と同じように気候を感じながら一生懸命、力強く生きているんですね。
“だだちゃ”とは山形県庄内地方の方言で「一家の主人」「父親」「おやじ」という意味があるそうです。その昔、庄内藩主の殿様が、献上された豆を気に入り「どこのだだちゃがつくったのか?またあのだだちゃの豆を食いたい」と口にするようになったことから、この名がついたのだとか。
地方の言葉や郷土料理はその土地ならではの歴史や地理と深く結びついていて、あたたかみを感じますね。
またいつの日か、山形県に足を伸ばしてみたくなりました。
治五左衛門さんのだだちゃ豆のおいしさの秘密は、種と土づくりにあります。種は代々受け継がれてきた種を自家採取し、良い種だけを厳選。土づくりにおいては、鶴岡の豊かな土壌をさらに活かすため、2〜3年熟成してつくる自家製堆肥を投入しています。
15代目の石塚寛一(いしづかひろかず)さんは「日本一うまい枝豆栽培」を目指し、種の持つ本来の力を最大限に引き出す技術や、おいしい瞬間を見極めて収穫する経験を活かして日々枝豆の生産に励んでいます。