本との出会い
2016年9月に、東京ビッグサイトで開催されていた「キルト&ステッチショー2016」にうかがった際、はじめて手芸作家・下田直子さんの作品を拝見しました。
展示されていたのは1点のみでしたが、ものすごく印象的で、しばらく忘れられずにいました。その直後に、こちらの書籍が発売されることを知り、すぐに購入しました。
この本が出版された2016年の時点で、下田さんの著書は30冊以上ありましたが、そのほとんどがレシピ本でした。しかし、この『下田直子 アトリエ』は下田さんのものづくりのルーツを取材したビジュアルブックのような内容です。
わたし自身、ハンドメイドは大好きですが、自分でつくるよりもだれかがつくった作品に触れるのが好きなので、“作家のルーツ”に迫るような内容にとても惹かれます。
この本で感じるのは、本当に好きなもの・惹かれるものというのは、数十年の時間を経過してもどこか繋がりがある、という点です。自分を思い返しても、20年前から好きなテイストはさほど変わっていないことを、ページをぱらぱらとめくりながら共感しました。
息を呑んだ写真
まず圧倒されたのが、ページをめくってすぐに目に飛び込んできた、目次横の写真です。まさに“作家の城”という感じで、この写真を見るだけで何だか背筋がピンと伸びてしまいました。「本人はどこに何があるか分かっている」、ということが他のページに書かれていて、没頭できる空間を持つことは素敵なことだな、と強く感じました。
プロローグに「家族にもみせたい本」ということばが出てくるのですが、このひとことに、この本の“懐の深さ”を感じさせられました。
切手コレクション
色とりどりの切手コレクションが紹介されたページでは、下田さんの好みや選んだ背景を想像するだけで無限に時間が経ってしまいます。いろんな国・デザインが混じっているのに、集合体として眺めると一貫性が垣間見える点もすごく興味深いです。
秘密をのぞく感覚
こちらは下田さんの本棚。憧れの方の本棚って、秘密をこっそり見せてもらっているようなワクワクドキドキが詰まっています。わたしが持っている本と同じものはどこかにないか共通点を探してみたり(残念ながら見つけられませんでしたが)、背表紙を眺めるだけでもすごく贅沢な時間に感じます。
読み終えてみて
レジェンドな作家さんの本をご紹介させていただくなんて本当に恐縮してしまうのですが、全国の下田さんファンの方々も、この書籍を通して、より下田さんの作品が大好きになったはず。
この書籍が発売されたときに、代官山 蔦屋書店で下田さんの書籍フェアがあり、数点だけ販売された小作品のうち1点をなんとか購入することができました。ビーズがあしらわれた小さな巾着袋です。下田先生の作品を購入できる機会に恵まれるなんてこの先二度とないかも…と思い、お守りになればと思って購入しました。キルトもミシンも編み物もできないわたしですが、これからもずっと下田直子さんの大ファンです。
この本を教えてくれたひと:「minneLAB世田谷」スタッフ・作家活動アドバイザー まお
文 / 堀田恵里香 撮影 / 真田英幸