器屋さんの「ニカイ」
千駄木駅から徒歩10分。今回の目的地は、鮮やかなブルーの看板が特徴です。その名も「喫茶ニカイ」。
器と雑貨を取り扱うお店「kokonn(ここん)」の入り口から入って、階段を上がった2階にあります。
もともと器屋さんとして、1階の畳スペースにカフェを併設していたものの、カフェが好評となり、2019年9月に2階のスペースで「喫茶ニカイ」と名を改めてオープン。現在、1階の畳スペースは、さまざまな作家さんの器が並ぶギャラリーとしても人気を集めています。
靴を脱ぎ、畳の上で落ち着いた気分で器を眺め、たのしむことができました。器はその場で購入することも可能。
並ぶ器は「喫茶ニカイ」でも使用されているのだそう。
2階にはどんな空間が広がっているのでしょう。
はやる気持ちをおさえつつ、さっそく階段をあがっていきます。
目指すは「実家感」
木製の階段を一歩一歩踏みしめてあがると、そこにはロゴ同様の鮮やかなブルーを基調としたカフェ空間が広がっていました。
アンティークのような風合いのテーブル・ソファ、レトロとモダンが入り混じったような、ほどよく雑多なインテリアの数々は、おしゃれでありつつもどこかほっと落ち着ける印象。
店内のBGMには80年代のポップスが流れていました。
オーナーの櫻井崇雄さんにお話をうかがうと、喫茶ニカイは「実家に帰ったような、居心地のいい、自分がいちばんくつろげるお店をつくりたい」という想いのもと始められたそうです。
店内のインテリアやアート、雑貨はそのほとんどが櫻井さんが買い付けたもの。「整然としているよりはすこし雑多な感じが好み。自分の趣味でもあるサブカルチャー要素もあるかもしれません」。
中でも、理想の空間をつくるにあたり欠かせないと感じたのが、やさしい灯りとノスタルジックなムードを放つ「ステンドグラス」なのだと言います。
「内装を仕上げる段階で、何かもうひとつ欲しいなと考えたときに、絶対にこれだ、と思ったのがステンドグラスでした。イメージに合うデザインを探す中で出会ったのが、同じ谷中にあるnidoさんのステンドグラスです」。
「あまりに素敵なので、置いているだけではなく、いくつか店内で販売もさせていただいているんですよ」と櫻井さん。
訪れた際にはぜひご覧ください。
選りすぐりの器
喫茶ニカイで使用している器もまた、櫻井さんが全国の窯元を訪れて買い付けたもの。こだわりの器の一部を見せていただくことに。
目を惹くブルーのお皿は、中川直人さんの作品です。発色が良く、吸い込まれそうな美しさ。
久保田健司さんのマグカップは、化粧土を使って描く“スリップウェア”という技法でつくられた、まさに一点もの。
梅本勇さんが手がけたアートのような器たち。飾っても存在感がありそうな、印象的なデザインです。
佐々木康弘さんの益子焼のカップは、クールなようであたたかみのある色使いにも注目。
「作家さんの元へ直接うかがい、目で見て心からいいなと思ったものを使っています。喫茶ニカイで食器として使うだけではもったいないので、同じ作家さんの器を1階のkokonnで販売させていただいていて。マグカップもプレートもボウルも、いろいろ揃っていますよ。不定期で器展を開催することもあります」と櫻井さん。
実際にカフェで目にしたり、使った器、また、その作家さんの他の作品をすぐに購入できるのはいいですね。器展の情報は随時、kokonnの公式Instagramでお知らせされるとのことなので、要チェックです。
さて、それではこのへんで、メニューをオーダーしましょう。
映える「いただきます」
店内にはさまざまなアイテムが並び、見どころ満載なので、お料理を待つ間も、ずっと目をたのしませてくれます。
そうこうしているうちに、さっそく一品目のメニューが運ばれてきました。
オーダーしたのは、定番人気の「のりたまサンド」です。
お花の器は、久保田健司さんの作品。レトロかわいくて喫茶気分をグッと盛り上げてくれました。さりげなく見えるお花がかわいくて、つい色々な場所に置いて撮影したくなってしまいます。
レモンスカッシュのグラスは、喫茶ニカイのロゴ入り。懐かしさがあって、こちらもいい雰囲気です。
谷中銀座にあるラ・スールリマーレのパンを使ったこんがりトーストに、とろ~り半熟卵と黒々としたのりのコントラストが食欲をそそり、ぺろりと完食。濃い卵としっとりしたのり、ハムなどのバランスが絶妙でおいしかったです。
続いて、人気のスイーツメニュー「ニカイのフレンチトースト エスプレッソバニラ」と「ニカイのクリームソーダ」が到着。
器は先ほどご紹介した、中川直人さんの作品です。クリームソーダのブルーともあいまって、涼やかでとにかくとっても綺麗なので、こちらもまず、思わず撮影したくなりますね。
食べ進めるうちに、フレンチトーストの中のチョコレート、上に乗ったエスプレッソバニラアイスが溶け出すと、お皿の色味と混ざり、それもまた美しかったです。
お味はというと、もちっとした生地に濃厚なチョコレート、さっぱりしつつも風味のあるアイスクリームがマッチ。食べ応えも抜群でした。
クリームソーダは、ロゴの旗付きというのがなんともキュート。ぽてっとした、グラスもかわいいですね。空間のインテリアとの相性が抜群すぎて、さまざまな角度から眺めては、おいしくいただき、癒しのひとときを過ごすことができました。
ごちそうさまでした。
器、インテリア、お料理…どれもたっぷりたのしめる「喫茶ニカイ」。
絵本の世界に迷い込んだような、非日常的なこちらの空間もカフェとして解放されています。
1階のギャラリースペースも器好きにはたまらないはず。ぜひ、訪れてみてはいかがでしょうか。
次回はどんな素敵な器とごちそうに出会えるでしょう。
乞うご期待。
取材・文 / 西巻香織 撮影 / 真田英幸
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