インタビュー

粘土作家 ぽぼっと。さん「自分らしさ」をこねて生まれた、優しくてヘンテコな世界

「すこしヘンテコで面白い、でもかわいい」をコンセプトに、思わず触れたくなるような愛らしい粘土作品を生み出すぽぼっと。さん。今回は、アンティーク雑貨に囲まれたアトリエにお邪魔し、ユニークなキャラクターたちが生まれる背景やものづくりの原点、そして活動10年を迎えても変わらない制作への想いについて、じっくりとお話をうかがいました。

ぽぼっと。
「すこしヘンテコで面白い、でもかわいい」をコンセプトに、思わず触れたくなるzような愛らしい粘土作品を生み出す粘土作家。
https://minne.com/@salsal3103

もちもちとした質感が伝わってくる「くまちぎりパン」に、つぶらな瞳でこちらを見つめる「くりまろ」、そして海と和菓子がまさかの融合を果たした「ジンベエ餅」。粘土作家・ぽぼっと。さんの手から生まれるのは、見る人の心を瞬時に「ふわふわほくほく」とほどいてしまうような、不思議な引力を持ったキャラクターたちです。

活動開始からまもなく10年。今回は、作家・ぽぼっと。さんのご自宅兼アトリエにお邪魔し、その愛らしいキャラクターたちが生まれる背景や、知られざる創作の原点、そして作品に込められた想いについて、じっくりとお話をうかがいました。

アンティークの雑貨やポストカードが飾られたアトリエは、まさに「ぽぼっと。ワールド」の秘密基地。「好きなものに囲まれていないと、楽しく作業ができなくて」と微笑むぽぼっと。さんの横には、作品のほこりを取るための「コロコロ」が常備され、かわいらしさの中に職人の眼差しが垣間見えます。

「ぽんこつロボット」だったわたしが、表現者になるまで

まず、作家活動を始められたきっかけを教えていただけますか?

ぽぼっと。
昔からものをつくることが大好きで、手当たり次第になにかつくっていました。高校生のときに友人に「SNSやってみたら?」と勧められたのがきっかけですね。それから多くの人に作品を見ていただける機会が増えて、今こうして作家活動ができています。

SNSが世界を広げる扉になったのですね。「ぽぼっと。」という、一度聞いたら忘れられない不思議な響きのブランド名には、どんな由来があるのでしょうか?

ぽぼっと。
実は、もともとわたしは「他の人が普通にできていることができないなぁ」と感じることが多かったんです。その自分を投影した「ぽんこつロボット」というキャラクターをつくって、よく落書きをしていて。そこから取って「ぽぼっと。」という作家名にしました。

「ぽんこつロボット」……。今の愛らしい作品からはすこし意外な言葉にも聞こえます。

ぽぼっと。
昔、すごく「吃音(きつおん)症」があって、大勢の前で話すのがとても苦手でした。学校の授業でスピーチがあるときなど、みんなは普通にできているのに、わたしはどもってしまったり声が出なかったりして。「なんでみんなできてるのに、できないんだろう」とずっと悩んでいたんです。

すこし照れくさそうに、しかし真っ直ぐな瞳で当時の葛藤を語ってくださるぽぼっと。さん。集団生活の中では、どうしても息苦しさを感じてしまうことがあったと振り返ります。しかし、自分のペースで制作に向き合える今の活動は、とても肌に合っているそうです。

ぽぼっと。
社会人になって、「あ、わたしは集団生活に向いてなかったんだな」って気づいて。今は一人で全部をしなきゃいけない大変さはありますが、学生時代よりも今の方がよっぽど楽しいんです。昔はコンプレックスだった「ぽんこつ」な部分も、今の活動の原点になっています。

「こねる」ことへの執着と、ものづくりのルーツ

主な素材として「粘土」を選ばれているのはなぜですか?

ぽぼっと。
つくりたいな、と思ったキャラクターの形を一番自由に再現できるのが粘土だからです。……あともう一つ、わたしはなにより、もちっとしたものを「こねる」ことが大好きで。

「こねる」こと自体がお好きなんですか?

ぽぼっと。
そうなんです。小さい頃、食事中にご飯粒が落ちてしまったら、つい無意識にこねて丸めてしまって、母によく怒られていました。昔から手触りのあるものを触るのが好きだったんです。なので、怒られずずっとこねこねできる粘土は、わたしにとって最高の素材なんです。

まるで当時のいたずらっ子な表情に戻ったかのように、楽しそうに笑います。その場の空気がふっと和らぎ、「こねる」ことへの純粋な愛着が伝わってきました。そんなぽぼっと。さんの「ものづくり」のルーツを辿ると、意外な家族の背景が見えてきました。

ぽぼっと。
実は父が、デニムなどを縫製する工場を営んでいたんです。アートが好きで美術館に通うような一面もあって。言葉で何かを教わったわけではありませんが、「自分の手で生み出す」という環境が身近にあった影響は大きいかもしれません。

お父様から受け継がれているものがあるのかもしれませんね。

ぽぼっと。
あと、小学生の時に習っていた書道の先生の存在も大きいです。わたしが粘土作品を見せるたびに「あなた素晴らしいわ!」って、ありえないくらい褒めてくれたんです。先生に見せたい、褒められたいという気持ちもあって、だんだん「もっと上手につくりたい」とのめり込んでいきました。親以外の大人に認められたという原体験が、今の活動を支えている気がします。

こだわりが生む「失敗作」と、進化する技術

10年という長い活動期間の中で、制作における変化はありましたか?

ぽぼっと。
今は用途に合わせて粘土を使い分けています。細かくつくり込みたいときは樹脂粘土、大きく軽めにつくりたいときは紙粘土、といった具合に。最近は粘土もすごく進化していて、「これ本当に紙粘土!?」って驚くくらい伸びがいいものもあるんですよ。

素材の特徴を知り尽くしているからこその使い分けですね。

ぽぼっと。
他にも、液体粘土を使ってケーキのクリームやカレーのルーを表現したり、透明粘土を取り入れたりと、知識が増えたことで表現の幅が広がりました。「あの質感を出すにはどうすれば?」という引き出しが増えたのは楽しい変化です。

制作の中で「楽しい」と感じる瞬間、逆に「大変だ」と感じることは何ですか?

ぽぼっと。
完成に近づいてきて「想定よりもかわいくできた!」という瞬間が一番わくわくしますね。でも、実はかなりの量の「失敗作」も出ているんです。

えっ、これだけクオリティの高い作品なのに、失敗作が出るんですか?

ぽぼっと。
乾燥中にヒビが入ったり、ほこりがついてしまったり……。あと、顔の表情がすこしでも気に入らないとボツにしてしまいます。こだわりが強すぎて検品や梱包を人に任せられないので、全部自分でやらなきゃいけないのも大変ですね。ずっと小さいものをつくっているので、目がしょぼしょぼしたり、手がプルプルしてきたりすることもあります。

苦労を笑い飛ばすぽぼっと。さんですが、その言葉からは作品への妥協なき姿勢がうかがえます。アトリエに常備されたクリーナーは、ほんの小さなほこりも見逃さないという、プロフェッショナルとしての誇りの表れなのです。

誰かの心を救った「ジンベエ餅」

これまで数多くのキャラクターを生み出されていますが、特に思い入れの深いキャラクターはいますか?

ぽぼっと。
「ジンベエ餅」には一番思い入れがあります。わたしの作品の中で初めてぬいぐるみになった子で、完成したときは本当に感激しました。その日から今日まで、ずっと一緒に寝ています。


毎日一緒に! まさに相棒ですね。

ぽぼっと。
実は以前、あるイベントでファンの方から「つらい闘病生活を、ジンベエ餅のぬいぐるみと一緒に乗り越えられました」とお話を聞かせていただいたことがあったんです。その時、わたしの作品が誰かの心を癒せたのだとしたら、こんなに幸せなことはないな、と思って。

温かいエピソードですね。

ぽぼっと。
本当に嬉しかったです。だからこそ、普段ふと見たときに癒される、わくわくできるような作品をつくりたいという気持ちが強くなりました。作品そのものだけでなく、届いた瞬間の第一印象も大切にしたいので、包装のカードやシールにもこだわって、箱を開けたときからワクワクしていただけるように心がけています。

10年間「変わらず続ける」ことの難しさと喜び

長く活動を続ける上で、心に留めていることはありますか?

ぽぼっと。
「変わらず続けること」を大切にしています。「キャラクターを考えて、粘土作品をつくり、投稿する。」このスタイルを10年間続けてきました。そしてそれは、つくり手であるわたし自身が楽しくないと続けてこれなかったと思うので、なにより「自分が楽しむ」ことも大切にしています。

穏やかな口調の中に、10年という月日を積み重ねてきた作家としての静かな自負と、芯の強さを感じさせます。

「自分が楽しむ」こと。シンプルですが、一番難しいことかもしれません。

ぽぼっと。
もちろん、作家活動を続けるのは簡単なことではありません。でも、個展やイベントで直接お会いするファンの方々が、本当に優しい方ばかりなんです。minneのレビューも、いつも嬉しいお手紙のように読んでいて。だから、今の流行りに乗ってインパクトのある動画でバズったりするよりも、今まで応援してくださったこの優しい方々を大事にして、その方たちが喜んでくれるような活動を、これからも変わらず続けていきたいなと思っています。

これからの夢は、1年でも長く、そして「お祝い」を形にすること

数ある場所の中から、minneを選んでくださった理由は何だったのでしょうか?

ぽぼっと。
最初はお客さんとしてアプリを見ていたんですが、サイトのデザインや写真の掲載方法に温かみがあって、「ここなら作家さんの作品を大切にしてくれそうだな」と感じたんです。初めて作品を販売してみようと思ったとき、自然とminneさんを選んでいました。

そう言っていただけて光栄です。最後に、今後の目標や挑戦したいことを教えてください。

ぽぼっと。
一番の目標は、ずっと粘土作家を続けることです。ハンドメイド作家として生計を立て続けるのは、収入面も含めて簡単なことではありません。だからこそ、大きな飛躍を目指すというよりは、今の活動を1年でも長く続けることができたら幸せだな、と思います。

「続けること」の尊さを改めて感じます。その中で、新しくやってみたいことはありますか?

ぽぼっと。
個人的に、人の幸せを「お祝い」することが好きなので、ウェディングなどの部門にも挑戦してみたいですね。以前、オーダーメイドでウェルカムボードをつくらせていただいたことがあったんですが、お二人の幸せな空間の一部になれることがすごく嬉しくて。最近は友人の結婚式でカメラマンとして写真を撮ったりもしているんですが、やっぱり「つくること」が好きなので、ぽぼっと。の世界観で誰かの特別な日を彩れたら素敵だなと考えています。

素敵ですね!ファンの方との交流の場などは考えていらっしゃいますか?

ぽぼっと。
また個展もやりたいですね。以前、自宅で販売会を開いたときに、遠くは九州から駆けつけてくださった方もいて、本当に感激しました。もし次にやるなら、都内の古い建物や、アンティークな雰囲気のある場所でやってみたいです。今日見ていただいたような、わたしの好きな雑貨や世界観をまるごと詰め込んだ空間で、ファンの方に直接「ありがとう」を伝えられたらいいなと思っています。

ぽぼっと。さんの作品で彩られる結婚式や、こだわりの空間での個展。これからの展開も楽しみにしています。本日はありがとうございました。

ぽぼっと。
ありがとうございました!

ぽぼっと。さんの新作・再販売会が決定!

今回のインタビュー公開を記念して、2026年1月11日(日)20時からminneで販売会を行っていただきます。インタビューでも話題に上がった人気作品の再販に加え、わくわくするような新作も登場予定です。「ぽぼっと。」さんが生み出す、手のひらサイズの優しい世界。ぜひこの機会に、あなただけのお気に入りと出会ってください。

ぽぼっと。さんのギャラリーはこちら

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