インタビュー

雑貨作家・yura2chicuさん「作り手として成長し続けるために大切にしていること」

【PR】多肉植物や木の実、貝など自然に存在するものをモチーフに、大人っぽいシックなイラストで作品に落とし込むyura2chicuさんの「ものづくり」をご紹介します。作家活動をスタートしたきっかけや、自身が成長し続けるために大切にしていることなど、たっぷりとお話いただきました。

yura2chicu
ドライフラワーや多肉植物など、自然に存在するものをモチーフに描いたイラストをもとに作品を制作。
https://minne.com/@yura2chicu

そこにある「自然」を主役に


 
レターセットやマルチペーパーなどの紙ものを中心に、クリアファイルやハンコまで。yura2chicuさんはさまざまな作品を手がけていますが、もともと「ものづくり」をはじめたきっかけをおしえてください。

yura2chicuさんの「多肉植物 エボニー ラバースタンプ

yura2chicu
2010年から作家名「chicu.」(チク)として活動をスタートしました。
何か趣味や夢中になれることを見つけたいなと思っていたときに、当時住んでいた場所からそう遠くない距離にハンドメイド作品を取り扱っていただけるお店があるのを知り、わたしも何かつくって販売してみたいと思ったのがきっかけです。
はじめは、ガラス瓶と樹脂粘土などを組み合わせた立体作品を制作していました。
 
ガラス瓶と樹脂粘土!それは意外でした。紙ものを中心に制作されている今とはだいぶ異なりますね。

yura2chicu
つくることは好きで、他にもひと通りいろんな技法を試してみました。結果として現在は、幼い頃から好きだった「絵を描く」ことがメインになり、紙もの作品が増え続けています。
 
yura2chicuさんのイラストといえば多肉植物、と頭にパッと浮かぶ人も多いかと思います。


yura2chicu さんの「多肉植物 クリアファイル&ペーパーセット」。ぷっくりとした多肉植物が図鑑のようにずらり。

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ありがとうございます。絵を描き始める少し前から多肉植物にハマり、育てる種類も増え始めた時期があったんです。毎日多肉植物のことばかり考えるほどで、自然と「大好きな多肉植物を描きたい!」と思うようになり、まずは実際に育てていた多肉植物をモデルに描き始めました。当初はペン画から始まり、水彩絵の具やアクリル絵の具など、少しずつ色を足すようになっていきました。

yura2chicuさんが絵を描くきっかけとなった多肉植物のひとつ「ハオルチア属 雫石」という透明な窓を持った多肉植物。

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わたしにとっては、描く=観察するということでもあり、描くことにより今まで知らなかったことを知るよろこびも味わえて、たのしい時間が増えていきました。
だんだん興味の対象が広がり、多肉植物に限らず、自然のモノって凄い!と思うようになり、今ではドライフラワーや木の実、貝やウニ殻などモチーフの幅が広がっています。
手軽に拾えるモノも多く、今まで道端などでなんとなく目にしてきていたはずのモノが今ではどれも輝いて見えます。この輝きや魅力を何とか表現できないかと日々試行錯誤しながら描き続けています。

「過去の自分」と向き合いながら


 
yura2chicuさんのイラストは、写真のようにリアルなタッチだなと感じることがあるので、じっくりと観察されて描かれているというのは納得です。普段は描いたり、切ったり、貼ったりとさまざまな工程のある「ものづくり」をされていると思いますが、よく使われているお気に入りの道具をおしえてください。

yura2chicu
最近、水彩画タッチのイラストを描くときは、トンボ鉛筆の「ABT」と「水筆」を組み合わせて使用しています。ABTはカラーバリエーションが豊富で、ニュアンスカラーも多く、繊細な色味のバランスに仕上げることができます。
線画としてよく使うのは三菱鉛筆の「ユニボール シグノ」です。筆圧が強くてもペン先がダメになる心配がなく、極細の線を描き続けられます。耐水性もあり、上から水彩絵の具などで着色してもにじまないのもうれしい点です。いちばん使用しているのは、ブラウンブラックというインク色です。
切る道具は、シンプルで使いやすいオルファの「カッター・カッターマット」を長年愛用しています。
また、封筒やペーパーバッグは、カットから組み立てまで、すべて手作業で制作しているのですが、その際は、トンボ鉛筆のスティックのり「PiTハイパワー」で接着しています。トレーシングペーパーでもしっかりと接着でき、これまで何十本お世話になったのか数えきれないほどです。
 
詳しくおしえていただきありがとうございます。道具や画材選びに迷われている方がいたら、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
続けて、普段の制作で大切にされていること、こだわっているところをおしえてください。

yura2chicu
わたしは、ペン・水彩絵の具・アクリル絵の具ととにかくさまざまな画材を試し、作風もそのとき「描きたい!」と思ったものにどんどん挑戦してきました。次第にその中で、自分自身がよりたのしいと思える「自分らしさ・個性」を含んだ絵・描き方、またお客さまにもたのしんでいただけるモノ、この2つが重なる部分はどこなのか考えるようになり、現在は「大人っぽい」「シック」「甘すぎない」というワードを念頭に描くようになりました。
あとは、ひたすら納得するまでこだわって仕上げることですね。
 
ひたすらにこだわりをもって制作し続けるというのは苦しいことも多いと思いますが、そんな中で印象的なできごとやうれしかったことはありますか。

yura2chicu
ひとりで制作活動を続けていく中で「わたしは前進できているのか?」と自問自答してもなかなか答えが見つからないことが多いのですが、そんな中でも「少しは成長できているのかも」と実感できたときはうれしいです。
先ほど申し上げた「ひたすら納得するまでこだわって仕上げること」これは作家活動を始めた当初から変わりません。過去も現在も、その当時の自分の一生懸命でつくり出した作品たちなのですが、以前の作品を見ると、ちょっとこそばゆい気持ちになります。「もっとここをこうすればより良くなるのでは?」と数年前の自分では気付けなかったことが、現在の自分では気付けたりもします。
 
その気付きがあることで、新たなものづくりへの意欲にもつながりそうです。自身の成長のために何か行なっていることはありますか。

左は初めてのイラスト作品「ペン画で描いた 多肉植物 ポストカード」。右は3年前に水彩絵の具で描いたという「多肉植物 エケベリア属 ザラゴーサ」の原画。

yura2chicu
わたしは日記を綴っているのですが、読み返してそのとき悩んでいたことが現在では解決できていると分かったときも、ちょっとうれしくなります。昔の作品を見返してみたり、日記を読み返してみたり、過去の作品・過去の自分から学びを得ることが多いです。
今では恥ずかしいと感じる過去の絵や作品もありますが…必ず1点ずつ大切に保管しています。

過去の作品、過去の自分としっかり向き合うことで成長を続けるyura2chicuさん。作品のギャラリーページには次々と新しいデザインの作品が並び続けています。
そんなyura2chicuさんには、以前「トンボ鉛筆とminneの特別企画」でトンボ鉛筆の画材を使った2つの作品レシピ制作にご協力をいただきました。

yura2chicuさんの作品レシピ

yura2chicuさん考案のレシピ『ABTと筆之助で描く「ガーベラのトレーシングペーパー&ペーパーバッグ」』より。テンプレートの無料ダウンロード付きでイラスト初心者の人にもぴったりのレシピです。

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企画に参加させていただいたご縁で、ABTや筆之助など初めて使用させていただきました。実際に描きながら、どういう表現ができるのかを確認しつつレシピを考えることは新鮮な体験でした。普段はアナログとデジタルを組み合わせて作品を制作することが多いので、すべてアナログで仕上げることを念頭に、簡単すぎず、難しすぎず、それでいて「つくってみたい!」と思っていただけるものを…と試作を重ねました。
公開後、レシピをご覧いただいた方から早速、筆之助を購入してみましたとSNS上でご報告をいただいたときはとてもうれしかったです。
 
レシピの着想のきっかけをおしえてください。

yura2chicu
今回は、公開月が3月・4月と四季でいう春にあたり、春といえば出会いと別れの季節でもあり、贈りものの機会が多いのでそれに合ったレシピにしようと決めました。
わたしは紙ものアイテムを多く制作しており、その中でも登場する機会の多いトレーシングペーパーを今回の企画のメイン素材として使用してみようと思い、生まれたレシピです。

yura2chicuさん考案のレシピ『ABTとプレイカラーKと筆之助でつくる「透け感がたのしい、動くギフトタグ」』より。
 
2つ目のレシピでは、水筆も使用いただき、カラフルでたのしいタグが完成しました。それぞれの画材の使用感はいかがでしたか。

yura2chicu
とてもいいなと感じたのはABTと水筆の組み合わせです。ABTは種類が多く、発色も良くて、特に筆芯はコシがちょうどよく思い通りの線が描けました。水筆と組み合わせると手軽に水彩の表現もでき、どちらもすぐにお気に入りの画材に仲間入りしました。「ここの一部分だけ水彩の表現を入れたいな」となった場合、これまではパレットを広げて筆洗器に水を入れ…と準備をしなければいけませんでしたが、ABTと水筆はペン立てから取り出すだけですぐ描けるのでスピード感を失うことがありません。
 
すぐに手軽に描ける、というのはうれしいポイントですよね。yura2chicuさんは普段、デジタルとアナログを組み合わせて制作されることが多いということですが、手描きの魅力はどんなところにあると考えますか。

yura2chicu
偶然性だと思います。同じ画材を使っているのに、昨日とは違う線が出る、インクの量によって、同じペンでも今日は線がより細いな…など。描いて初めて「こんな表現もできるんだ」という発見が手描きにはあると思います。そのときの気分や感情が描き出されるのもおもしろいです。
絵だけでなく文字を書くときも同様で、学生の頃ノートをとっていて「今日はいつもより綺麗に書けるな」「今日は乱れている」…など同じような感覚を味わったことがある方、多いのではないでしょうか。
 
ああ、とてもよくわかります。まさに手描きならではのおもしろさですよね。yura2chicuさんが今後、手描きで表現してみたいものがあればおしえてください。

yura2chicu
実は早速、コラージュ作品またラフスケッチの際にABT・水筆を使用しています。ひらめいたら即、と、特にスピード感のある場面でこれからもどんどん使用していきたいです。
また、まだ試していない種類の紙にも使用して、にじみや発色などの相性を研究し、さまざまなテクスチャも制作したいです。
 
アンティークのような雰囲気もあってとても素敵ですね。今後のご制作もたのしみにしています。それでは最後に、作家としての今後の展望をおしえてください。

yura2chicu
まだまだ先の見通せない現状が続きそうですが、以前のような世界に戻った際は、またイベントに出展して直接お客さまとお話させていただきたいです。お客さまの表情を拝見できたり、作品に対するご感想を直接いただけることはとても貴重で、制作活動を続けていく中でのいちばんの原動力となります。
また、紙ものの種類や紙ものと相性の良いスタンプなど作品数を増やし、それらを使ったコラージュワークショップなども開催してみたいです。ご縁はいつ訪れるのか分かりません。ご縁をいただいた際、すぐに対応できるよう今だからこそできることに注力していきたいと思います。
わたしの作品を通して、たのしい時間が増えたり、ワクワクしていただけたりと少しでもお役に立てるようこれからも活動を続けてまいります。



yura2chicuさんの作品レシピは、トンボ鉛筆メディア「FUN ART STUDIO」でご覧になれます。どなたにも手軽にチャレンジできる内容となっていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

「ガーベラのペーパー&ペーパーバッグ」を見る「透け感がたのしい、動くギフトタグ」を見る



取材・文 / 西巻香織

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