100年以上の歴史をつなぐ
空のような海のような、さまざまな表情を見せてくれる藍染。海外からは「ジャパンブルー」と呼ばれ、日本を象徴する色でもあります。
そんな「藍染」製品の約98%は、化学合成された藍を使用してつくられた、インディゴ製品と呼ばれるものがほとんど。残りの2%が「天然藍」を使用して染められた製品となっていることをみなさんはご存知でしたか?
また天然藍の中でも75%は東南アジアから中国にかけて自生するタデ科の植物から抽出するタデ藍。残りの25%が琉球藍を使用しているといわれており、琉球藍は年々とても希少な存在となっているんです。
かつて奄美大島に自生していた琉球藍
今ではとても希少とされている琉球藍も、100年以上前には隆盛を誇ったといわれており、1400年以上の歴史を持つ「奄美大島紬」にも琉球藍染が施されていました。
また、昭和61年には奄美大島の諸島のひとつ、加計呂麻島の生間集落(瀬戸内町)で自生している姿が発見されており、発見者である吉川好弘さんは、琉球藍を使った奄美の藍染の復活を目指し瀬戸内町で藍染工房を立ち上げていました。
しかし吉川さんは数年前に亡くなられ、琉球藍を使った藍染技術は継承されておらず、奄美藍染の存続は危機的状況にあるといいます。
そんな歴史のある希少な琉球藍を使った奄美の藍染文化の復活を目指し、さまざまな活動をされている「奄美藍染研究会」さんからminneにご相談をいただき、みなさんにお話をうかがうべく、わたしたちは鹿児島県奄美大島からフェリーに乗り、加計呂麻島を訪れました。
奄美の住人有志が集まり設立
わたしたちを温かく迎え入れてくださった奄美藍染研究会で活動する方々。ハンドメイド作家さんや農家さんなど、住民有志4名で令和元年に設立し、今では協力者も含めて約10名程度で日々活動をされています。
研究会のみなさんは、琉球藍を使った染色だけでなく、琉球藍の栽培からスタートし、泥藍製造、藍建て、染色、作品づくり全ての工程を奄美大島で一貫して行えるようにする挑戦をされています。
ですが琉球藍は繁殖能力がとっても低く、花は10年に一度しか咲きません。開花しても種子はできないので、挿し木でしか増殖ができない希少な植物なんです。
島で琉球藍に関する全ての作業が行えることはもちろん、同時にそれぞれの技術を高め、藍染作品を世の中に広め、奄美の藍染文化を復活させることを目指されている奄美藍染研究会のみなさん。今後の展望をおうかがいしてみました。
minneといっしょに
今回、奄美藍染研究会さんのご相談を受け、minneの作家さんと天然の琉球藍染によるコラボレーションで、藍染作品を制作する企画が実現しました。
4名のminneの作家さんにご協力いただき、ご準備いただいたさまざまな素材に奄美藍染研究会のみなさんがひとつひとつ丁寧に琉球藍染を重ねます。
初めて藍染を施す素材もたくさんあり、わたしたちも知らない藍染の魅力を発見することができました。と語る奄美藍染研究会のみなさん。
minne作家さんの藍染作品をご紹介
藍染作品を制作いただいたのは、minneでご活躍される4名の作家さんです。それぞれの作品に込めた想いや、藍染を施すことによって気づいたという発見もあわせてご紹介します。素材や染めの回数によって変化する、藍染のさまざまな表情をお楽しみください。
HYSさん「奄美藍染のトートバッグ」
帆布やファーを使い、毎日のコーディネートに取り入れたいシンプルなバッグを制作されているHYSさんは、「天然のインディゴブルー」が活かせるバッグをテーマに2種類の帆布を使ったトートバッグを制作されました。
ひとつのバッグに2種類の帆布生地を使用しているのですが、生地による風合いの違いも感じていただきたいと思い、染めていただいた生地を並べてどの生地とどの生地を組み合わせるとそれぞれが引き立つかということにもこだわりました。
藍染というと、着物の反物を染めるような和のイメージが強かったというHYSさん。
実際に生地を藍染してみると、生地が引き締まり手触り自体も力強い風合いになり、帆布のトートバッグとの相性の良さを感じられたそう。
HYSさんのショップページでは藍染の色味別に分けて順次作品をご紹介いただいています。各ページをぜひご覧ください。
Soelu. さん「奄美藍染の布花アクセサリー」
日々の装いに華を添える布花アクセサリーを手がけるSoelu.さん。今回は奄美藍染の美しさを際立たせるすずらん・アネモネ・菊の3種類のアクセサリーを制作いただきました。
琉球藍染の鮮やかで深みのある青色からイメージを膨らませ制作されたのが「奄美の満天の星空の下で凛と咲くすずらん」を表現したイヤリング。ビロード生地に藍染を施した珍しい作品です。
茎に巻いている絹テープも奄美藍染で染めていただき、白いすずらんの花とのコントラストが楽しめる作品になりました。
通常、木綿などのほうが草木染めには向いている生地なのですが、高級感や重厚感がでるようにビロード生地にチャレンジしていただき、とても美しい青に染まっていて嬉しかったです。
こちらは藍染をしたパーツのみで制作されたアネモネのピアス。花びら部分には木綿・うす絹の2種類の生地が使われており、素材の違いを楽しんでいただけます。
菊のコサージュは、奄美の方が使ってくださるところをイメージし、華やかさはあるけど華美すぎない、かつ伝統の和の雰囲気のある作品に仕上げてくださいました。
Soelu.さんは、草木染めや農業、農作物から生まれる手仕事に興味を持たれ、ちょうど講座にも参加しており、今回の企画のお話を頂いて不思議な縁を感じたそう。
onomatopeeさん「藍染ワンピース」
リネンやコットン素材を中心とした、 ゆったり感とシルエットに動きのある服を手がけているonomatopeeさん。今回は「ナチュラルで柔らかな雰囲気の中にもまっすぐな芯のある強い女性を表現できたら」とデザインされたリネンワンピースを制作いただきました。
リボンをラフに垂らしたままのカジュアルな雰囲気やキュッとリボンを結んだきちんと感のあるシルエットなどアレンジすることで表情の変化を楽しんでもらえたら嬉しいです。
柔らかな風合いのリネン生地に藍染を施すことで、ソフトなデニムのようにカッチリとした風合いへと変化し、奄美藍染によって新たな一面を発見することができたそう。
tassel de sicaさん「藍染タッセルアクセサリー」
季節を感じられるタッセル作品を制作されているtassel de sicaさんは、太さや素材の違うさまざまな糸に藍染を施し、違った藍染の仕上がりを楽しめる4種類のアクセサリーを制作されました。
こちらの2つのイヤーアクセサリーは、濃い藍色に染められた素材でつくられたもの。
どちらも「民芸調にならない、都会的なモダンな雰囲気」を意識してデザインされています。
同じ藍染を施したものとは思えないさまざまな表情がtassel de sicaさんの作品によって生まれました。素材によって色の濃さだけでなく糸の触り心地の違いも生まれるとは驚きです。
ですからハンドメイドでひとつひとつつくるアクセサリーの素材にはぴったりだと気が付きました。
天然の琉球藍染の文化をつなぐ
奄美藍染研究会のみなさんの想いと、minneの作家さんのアイデア、技術とが合わさり誕生した、希少な琉球藍染が施された特別な作品たち。
藍が重なりがらりと雰囲気が変わる作品たちの姿を見て、わたしたちも藍染の新たな魅力と可能性を感じることができました。
日本のものづくり技術で生まれた作品を身につけ楽しむことも、ものづくりの歴史をつなぐひとつの手段。
これを機に、みなさんもぜひ琉球藍染の魅力に触れてみませんか。
天然の琉球藍で手染めした「シルクストール」をプレゼント
記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
藍染に関するアンケートにご協力いただいた方の中から抽選で100名様に、奄美藍染研究会さまが天然の琉球藍で手染めした「シルクストール」をプレゼントいたします。
※ストールの柄は全て一点ものとなります。柄や染まり具合はお選びいただけません。
<応募期間>
2022年1月7日(金)〜1月21日(金)23:59 まで
取材・文 / 中村瑛美里 撮影 / 真田英幸
企画ディレクション / 宍戸広輝 中村瑛美里 八木秋実