特集

あの人の作業机​​ vol.45 ブローチ作家・hiish - イッシュ -

作り手が日々向き合う机の上には、こだわりの道具たちが所狭しと並んでいます。気になるクリエイターのみなさんにお声がけし、作業机や作業部屋を見せていただくことに。今回は、日常にあふれる人と人をつなぐ想いや思い出を絵日記のように描きおこしたブローチを手がけるhiish - イッシュ -さんの机です。次にここから生まれるのは、どんな作品でしょうか。

hiish - イッシュ -
日常にあふれる人と人をつなぐ想いや思い出を絵日記のように描きおこした、眺めても身につけても楽しめる小さなブローチを制作。
https://minne.com/@hiish

作品を第一に考えたスタイリッシュな作業部屋

いつから、この作業部屋を使われていますか?

hiish
- イッシュ -
実家につくったアトリエ用の部屋が手狭になったので、作業場メインの自宅兼アトリエとして昨年の秋に引越して来ました。
ブローチ制作は熱ヒーターや薬剤も使うので、緊張感をもって集中できる、ストイックな作業部屋で行っています。

日中でもブラインドを閉めているのはなぜですか?

hiish
- イッシュ -
ブローチづくりではUVレジンを使用するので、紫外線が入らないよう遮光ブラインドを使っています。なので、昼間でも電灯を付けて仕事をしているんです。

作品を第一に考えられた作業部屋ですね。

hiish
- イッシュ -
はい。作業中にレジンに埃が入らないようにいつも部屋を掃除するようにもしています。
ブローチづくりは慎重で細かな作業を黙々と続けるのでとても集中してしまうのですが、気付くと息を止めて身体が固まってしまっているので、音楽を常に流して鼻歌が交じるくらいにリラックスできるように努めています。

作業工程に合わせた整頓術

道具が多くありますが、どれもきれいに収納されていますね。作業効率を上げるために心がけていることはありますか?

hiish
- イッシュ -
よく使う道具は、すぐ手の届く場所に置くようにしています。
ですが、整理整頓が苦手なわたしは、すぐに机の上が満杯になってしまうので、この作業用ワゴンを多用しています。
身近にワゴンを移動させられるので、作業工程別に道具を入れて、便利に使ってます。

こちらのコーナーには梱包などに使うものが収納されているのでしょうか。

hiish
- イッシュ -
はい。ラッピングや箱詰め、発送作業は動きやすいように立って使える高さの引き出し棚を使っています。
引き出しの中に段ボール、ラッピング材、テープ類、カード類をまとめて入れて作品を送り出す最終準備に特化したコーナーをつくりました。

たしかに段ボールを組み立てたりなど、動きの多い作業にはぴったりの棚ですね。

hiish
- イッシュ -
作業を時短できればそれだけ絵を描く時間が増えるので、アイデアを考えやすくなるんです。

アイデアは作業机以外の場所から

hiish
- イッシュ -
でも逆にアイデアは机では考えないんです。
絵を描くことは自分の心をアウトプットするような作業なので、空っぽだと何も生まれません。
心の栄養をインプットするためにぶらぶら街を散歩したり、本を読んだり、映画を見たり、ライブや展覧会に行ったりとワクワク、ドキドキできることを詰め込みに行きます。

何気ない瞬間やワクワクした瞬間にアイデアが生まれるのですね。

hiish
- イッシュ -
はい。思い付いたらすぐその辺にある紙に描いてしまうので、ラフ画は広告の裏だったり、レシートの裏なんてこともよくあるんですよ(笑)。

hiish
- イッシュ -
その後、スマホやタブレットで清書や着彩をするのでお気に入りのソファで音楽をかけて、コーヒーを楽しみながら没頭します。制作と作画で緩急を付けることで、なんだか脳が活性化できている気がするんです。
デジタル描画にしてからは、今まで以上にもっとラフに、思い立ったらすぐに描けることが気に入っています。

こちらはなんのお部屋でしょうか。

hiish
- イッシュ -
ここでは作品の撮影を行っています。日当たりがいいので専用の机とトルソーを置き、作品写真は毎回こちらで撮るようにしています。

作品づくりに欠かせないアイテムたち

作業中欠かせないものや、ずっと長く使っている道具などはありますか?

hiish
- イッシュ -
音楽と香りが作業中の癒しになるので、スマートスピーカーとお香や精油を置いています。
最近は10minutes aromaというマッチ型のお香が残り香も少なくてお気に入りです。

hiish
- イッシュ -
いつも使っている素材のレジンや金具は、安心できる国産メーカーさんから特性を詳しく聞いた上で、さらに自分自身でも耐光性や劣化テストを重ねて品質を確認して選んでいます。
制作の道具はいくつも試してみて、素材に合った使いやすいものを見つけるようにしています。

こだわり抜いて見つけた素材や道具たちからhiish - イッシュ -さんのブローチは生まれているんですね。

hiish
- イッシュ -
そうですね。作業効率をあげる便利グッズや道具を見つけると気分も上がりますし、使い慣れていくうちに自分自身の技術が上がるのを実感できたときも嬉しくなります。
また、今はデジタル描画をしていても学生時代から画材オタクだったので画材集めは大好きなんです。

最後に、作品制作で大切にしていることをうかがいました。

hiish
- イッシュ -
親しい友達の餞別に、共通の思い出を形にしてプレゼントしたくて、一緒に眺めたイタリアの風景を描いて形にしたのがブローチづくりの始まりでした。

それが原点でもあり、作品はずっと「贈り物」としてつくっています。自分へのご褒美だったり、大切な人への贈り物、そう思ってラッピングさせてもらってます。

わたしがつくるブローチにはいつも物語のような背景があって、モチーフとなる主役が感じていることや感情の動きを彼らの仕草、表情や色で表したくてストーリーを妄想しながら絵を描いています。
受け取った人が想像を膨らませて楽しい気持ちになってもらえたら嬉しいなと思って…

ブローチをつくり始める前、心が空っぽになってしまっていた時期がありました。
すこしずつ前向きになり「ものづくり」を始めたのですが、そんな作品を買ってくださった見ず知らずのお客さまたちからの温かな言葉にとても救われたんです。

ブローチの存在ってなんだろう?って考えた時、身につけるアクセサリーの中でも特にメッセージを込めて気持ちや想いを伝えることができるアイテムだと思っています。
だから元気や勇気をいただいているお礼としても、受け取った人の顔を想像して楽しく、幸せでありますように、と願いをこめてつくることを大切にしています。
そして、ものづくりの意義を教えてくれたみなさまに感謝しています。

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取材・文/中村瑛美里

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