アパレル作家・wågdogさんにお話をうかがいました。
始まりはふたりの出会い
梅雨を目前に控えた五月の暮れ、やわらかい日差しが差し込むwågdogさんのアトリエにお邪魔させていただきました。
出迎えてくれたのは、wågdogのデザイナーmさんと主に運営まわりを担当しているkさん。ふたりのアトリエには、wågdog作品のセンスを感じるこだわりの家具や雑貨がいくつも置かれ、お部屋に入った瞬間から心地よい素敵な雰囲気に包まれました。
このたびは、インタビューを受けてくださりありがとうございます。
wågdog(k)
いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。minneさんには長年お世話になっているので、こちらとしてもこのような機会をいただけて嬉しいです。
そう言っていただけて光栄です。さっそくお話をうかがっていきたいのですが、まずwågdogさんが二人体制のチームで活動されていたことに驚きました。二人のご経歴や出会いについて教えていただけますか。
wågdog(m)
じゃあ、僕から。2017年にwågdogのブランドを立ち上げるまでは、アパレルのブランドでデザイナーをしてきました。大阪でデザインの勉強をして、新卒でレディースのアパレルブランドに入社してから約10年間ほどは会社勤めでしたね。
wågdog作品のデザインと縫製を担当されているmさん(写真左)と、ブランド運営周りや、素材の裁断などを担当されているkさん(写真右)。
デザインの勉強をされていたということは、昔からものづくりに興味があったのでしょうか。
wågdog(m)
そうですね。小学生の頃にナップサックとかエプロンをつくる授業があるじゃないですか。あの頃から同級生の誰よりもミシンが得意だったんですよね。中学校に入ってからは、学校に持っていく鞄も自分で縫っていました。
すごい・・・。 とても器用だったんですね。kさんのご経歴は。
wågdog(k)
自分は大学を出て、“化学”の仕事をやっていたんです。いわゆる研究職ですね。そこから途中でアパレルに転職をして、そのタイミングで東京に出てきてから15年〜20年ほどアパレルの業界にいました。
kさんもなかなか特殊なご経歴をお持ちで。
wågdog(k)
そうなんです。(笑)なので、mとは全然アパレルへの入り口が違うんです。自分は、当時服がとにかく好きで、ずっとアパレルをやってみたいという想いがあったので、若い内に一度経験しておこう、というような気持ちでチャレンジしました。
それぞれ全然違った背景があったんですね。そこからwågdogというブランドが立ち上がるわけですが、ふたりはどのようにして出会ったのでしょうか。
wågdog(k)
お互い別々のアパレルの会社に勤めていたのですが、知人を通して知り合いました。その頃はブランドを自分たちで始めようというような気持ちはなく、友達として知り合ったのですが、その後に、お互い会社を離れて個人としてものづくりの仕事をしたいと思ったタイミングが重なり、たまたま意見も一致したので、じゃあブランドを立ち上げようかと。
7年間の歩み
2017年のブランド立ち上げ当初からminneを利用いただいていますが、この7年間でどのような変化がありましたか。
wågdog(m)
一番最初は、お互いに犬を飼っていたこともあって、犬の雑貨屋さんを目指していたんです。だからブランド名も「wågdog」なんですよね。現在のwågdogのイメージとはかなり離れているかもしれないのですが、当初は犬のリードだったり、犬用のベッドなどもつくって販売していました。
そうだったのですね!そこから今のラインナップへはどのように移り変わったのでしょう。
wågdog(k)
犬関連ということで、散歩のときに使うサコッシュを出品していたのですが、そのサコッシュが好評で、かなり売れたんです。それがあって、徐々に犬に限定しなくてもいいんじゃないかと考えるようになり、普段使う生活雑貨やアパレルに枠を拡げてきました。
歴代のネーム。「wågdog」は“犬が尻尾を振る”という意味なのだそう。
wågdog(m)
その頃、Tシャツの販売も始めたのですが、それがサコッシュ以上に人気が出たんですよね。出品してから1、2年は本当に爆発的に売れました。
wågdog(k)
Tシャツの発送だけで夜中まで起きてやっていたよね。本当に購入通知が鳴り止まないというようなときもありました。2017年のスタート時の流れが割と良かったということもあって、じゃあ本格的にこの仕事でやっていこうとなったんです。
なるほど。ちなみに最初にminneで販売するようになったきっかけは覚えていますか。
wågdog(m)
元々、僕が個人的に登録していたんです。確か当時、個人で作品販売ができるプラットフォームを探していて、そのときに知ったような覚えがあります。
当時はどのような作品を出品されていたのですか。
wågdog(m)
日本の古い布を使用した生活雑貨などを出品していました。でも本当に何も知らない頃だったので、強気な値段を付けたりして、結局、あまり売れなかったんですよね。それもあって、その後はアカウントを放置しちゃっていたんです。
wågdog(k)
それで、元々アカウントがあったから、それを活用して、まずはminneに出品してみようということで始めたんです。
wågdog(m)
そう。そうしたら思いのほか売れたんですよね。過去にminneで出品していた頃は、写真も下手でしたし、説明文も何を書けばいいかわからなかったし、それにそもそも作品数も少なかったのでブランドの世界観を表現できていなかったんです。なので、wågdogでは、つくるアイテムだけでなく写真や説明文でも、ブランドの世界観をいかに伝えるか、というところをかなり意識するようにしました。
確かに、ブランドの世界観はショップの信頼にも繋がりますよね。minneのスタッフにもwågdogさんの世界観に惚れている人がたくさんいます。
wågdog(m)
ありがとうございます。それは本当に嬉しいですね。
その後、現在の売れ行きなどはいかがですか。
wågdog(k)
現在は、ありがたいことに購入者の7割くらいがリピートのお客様なので、Tシャツなども新しいデザインや色を出すたびにファンの方が購入してくださるという状況がつくれています。なので売れ行きも比較的安定していますね。
戦略と、こだわりと
ファンがしっかりと定着しているのはwågdogさんのブランド力ならではですね。wågdogさんの作品の人気の理由には、デザインや機能性という要素が大きいかと思うのですが、そのあたりのこだわりについて教えていただけますか。
wågdog(m)
細かいデザインのこだわりはたくさんあるのですが、前提として、やはり男性にも女性にも使っていただけるユニセックスなデザインで展開しているというところは大きいかなと思います。
wågdog(k)
そうですね。個人的にはもうすこし男性向けに寄せたアイテムをつくりたい気持ちがあったのですが、あまり男性に寄せすぎるとだめなんです。minneのお客様の層が比較的女性の方が多いということもありますが、それとは別に、男性はハンドメイドというよりも既製品のような機能性重視のものを特に好む傾向があると思っていて。なので、wågdogではそこを深掘りするというよりかは、ユニセックスで使えるオリジナリティのあるデザインというのを意識してつくっています。
wågdog(m)
カラーバリエーションに関しても、なるべくパキッとした色ではなくて、くすみ感のあるニュアンスカラーを取り入れるようにしています。ボーイッシュな女の子が似合うデザイン、というのを常に意識していますね。
くすみ感のあるカラーは、今ほど世の中で流行する前からwågdogさんの作品には取り入れられていた印象があります。使われている素材についてはいかがですか。
wågdog(m)
素材選びに関しては、他のブランドや作家さんがあまり使ってないものを選ぶようにしています。例えば、5年ほど前から制作しているポリエチレンのシリーズとかですね。レジャーシートなどで使われている素材なのですが、当時はまだ使っているところはあまりなかったかと思います。
取材時に制作いただいたポリエチレン素材のミニウォレット
wågdog(k)
ポリエチレンなど資材系のシリーズは今もすごく好評をいただいています。やっぱり素材に遊び心があったり、特殊な加工をしていたり、ちょっと驚きがあるものをつくっていきたいという気持ちがあるので、市場で多く出回っている素材はあまり使わないようにしています。
wågdog(k)
インドで染めた生地とかね。そういった珍しい素材の作品を単発で出すこともあります。
wågdog(k)
サコッシュにしても市場に多く出回っているものは、ちょっとツヤ感があったり、硬さがあったり、要素的に男性っぽいものが多いんですよね。wågdogではそのあたりで他との違いを出すために、あえてマットな雰囲気の素材を使い、色も中間色を選ぶようにして、女性が使ってもごつくなりすぎないように意識しています。
wågdogの新しいかたち
この7年間でwågdogのブランド力は確立しつつあるように思います。今後の展望などあればお聞きしてもよいでしょうか。
wågdog(m)
挑戦してみたいことはまだまだ山ほどあります。今ひとつ考えているのは、新しいブランドの立ち上げですね。wågdogよりも暮らしやインテリアの領域に特化した生活雑貨のブランドをやってみたいんです。
wågdog(k)
wågdogで出品するにはちょっとテイストが違うかなという作品もちらほらあったりして、そういったものを別ラインとして展開したいんですよね。
新しいブランド・・・!それはすごく気になりますし、ふたりのつくる暮らしの雑貨はぜひ見てみたいです。
wågdog(m)
ありがとうございます。wågdogとのブランドの立て付けをどうするかであったり、アカウントの分け方みたいなところを整理することができたら、ぜひやってみたいと思います。
wågdog(k)
あとは、また毛色が異なりますが、海外への販路を強化していきたいというのがありますね。今もすこしずつやってはいるのですが、まだまだこれからという感じで。どうしても国内の販路だけだと、いろんな作家さんも出てきますし、飽和していくと思うんです。海外では、今のところほとんど台湾と香港からの注文になるのですが、日本とは人気の作品も違ったりするので、そのあたりを広げることができたら、また新しい層をキャッチできるのかなと考えています。
確かに、海外は可能性が広がりますね。ちなみに海外と日本で人気の作品はどのように違うのですか。
wågdog(m)
日本のお客様にはトレンドのアイテムが人気なのですが、海外のお客様からは、比較的昔からある定番アイテムを購入していただくことが多い印象です。まだ海外のイベントには一度も出展したことがないので、今後はそういったイベントにも出展して情報収集から進めていきたいですね。
wågdog(k)
国内でも最近は徐々にオフラインイベントの開催が増えてきているので、そこは積極的に出展していく予定です。9月に開催されるminneのハンドメイドマーケットにも出展するので、そこでお客様や作家さんとお会いできるのも楽しみにしています。
ハンドメイドマーケットへの出展もありがとうございます。将来的には実店舗の出店なども考えていたりするのでしょうか。
wågdog(k)
お店兼アトリエみたいなものは将来的には持ちたいなと思っています。ただ、まだ構想という段階で具体的になにか進めているようなものではないですね。理想を言えば、海沿いの景色のいい場所で・・・とは考えていますが、それはまたゆくゆくという感じです。
ぜひ行ってみたいです!編集部みんなで行かせていただきますね
これからの季節におすすめのwågdog作品
最後に、wågdogのふたりにこれからの季節におすすめの作品をうかがいました。
wågdog(k)
こちらのサコッシュは新作のアイテムになります。先日あったオフラインのイベントで初めて販売をしたのですが、そこでもかなり好評をいただいた作品です。
wågdog(m)
このメッシュの生地は個人的に大好きで買っていたのですが、4年くらい寝かせてしまっていたんですよね。製品化できていなかったので、満を持してという作品です。
メッシュがすごく良いですね!使い勝手も良さそうですし、夏場のおでかけやフェスなどでも活躍してくれそうです。
wågdog(k)
こちらのトートバッグもおすすめです。大きめサイズですが、軽くて丈夫で、去年販売してからずっと人気のアイテムです。
wågdog(m)
去年のヒット作品ですね。実はデザインがすこし変わっていて、裏表が反転しているんです。裏面のように見えるのですが、こっちが表面というデザインにしています。
wågdog(k)
普通のトートバックのように縫った後に、最後にわざとひっくり返しているんですよね。内ポケットにあたるところをアウトポケットとして見せています。
wågdog(m)
コットンのトートバック自体は人気でいろんなものがあふれているので、自分たちはデザインで個性を出そうと考え、つくった作品です。カラーや異なる素材で複数展開しているので、服装に合わせて使い分けていただくのもおすすめですよ。
“サンドイッチを探す旅に出よう”という意味のフランス語がプリントされたTシャツ。kさんがパン屋さん巡りにハマってたときにつくったのだそう。
wågdog(k)
最後に、これからの季節におすすめしたいのは、やっぱりTシャツですね。デザインやカラーでバリエーションをかなり多く用意しているので、好きなデザインを見つけてもらえると嬉しいです。
Tシャツの色がいつも本当に絶妙です。Tシャツに載せる文字やモチーフはどのように考えているのでしょうか。
wågdog(m)
そこはひらめきですね。最近だと世界旅行してるイメージでつくることが多いです。スイスの山小屋の名前であったり、海外の地名であったり。テレビで観たドキュメンタリーや自然をテーマにした番組などから影響を受けたりもしています。
wågdog(k)
基本的にはシンプルなデザインで、普段使いしやすいものが多いと思うので夏場にガシガシ着ていただければと思います。
ありがとうございます。僕も今年の夏、新しく購入したいと思います!
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取材・文/川西幸太 撮影/真田英幸