2024.11.10 更新

【新作おしえて】アクセサリー作家・佐藤由さんの「kokemusuポタリ、苔ピアス明色」

SNSで編集部の目にとまった素敵な作品を、制作の背景と交えてご紹介していきます。アクセサリー作家・佐藤由さんの「kokemusu-コケムス- ポタリ、苔ピアス（イヤリング）明色」です。

作り手は、佐藤由さん

美しいと感じた素直な気持ちを大切にして、アクセサリーを制作。
https://minne.com/@yuichimoji

ユキマグレコモノが生まれるまで

炭と気泡がきらめく球体と、パールのまろやかな輝きを組み合わせたスタッドピアス。
「淡水パールと炭のみつぶピアス（イヤリング)」

佐藤

体調を崩して会社を辞めてから2年ほど、なにもせず暮らしていました。そんなときに友人にハンドメイドを勧めてもらい、その場では「いやいやわたしには無理だよー」と言ったものの、“やってみないと分からないよな”と思い直して始めてみることにしました。

レジンの中で雪がしんしんと降り積もっている、神秘的なデザイン。「雪降る鉱石ピアス（イヤリング）」

佐藤

最初は母が集めていた端切れと古いボタンで布の封筒をつくっていたのですが、封筒の飾りをレジンで制作したことからレジンアクセサリーをつくるように。子どもの頃から透明なものが大好きだったので、手元で透明な世界をつくり出せることに感激しました。

愛らしい小豆の姿を、さまざまな角度から楽しむことができる耳飾り。
「あずきのキューブスウィングピアス（イヤリング)」

佐藤

とはいえレジンについては一切知識が無く、足したり削ったり塗り重ねたりできるということさえも知りませんでした。「これはできる」「これはできない」と、ひとつひとつを確認する作業が続きました。今も同じく、こんなことはできないかな？と試しては失敗することがあります。

身につけることで完成される作品を

さまざまな素材とレジンを組み合わせた、佐藤由さんの作品。制作のこだわりをうかがってみました。

お米やビジューを閉じ込めたデザイン。普段使いにはもちろん、ドレッシーなスタイルにも◎。
「お米のまあるみスタッドピアス（イヤリング)」

佐藤

当たり前ですが「つけたときにいちばん素敵であること」を大切にしています。お客さまが身につけて楽しむのがアクセサリー。手元でつくってただ綺麗！素敵！ではなく、人がつけたときにどうか。確認しながらデザインしています。

溶けかけ氷のようなかけらと、みずみずしい水滴を、レジンで表現。「氷と水のネックレス」

佐藤

「透明感と空間」にもこだわっています。そのため気泡は作品にマイナスにならない程度に残し、そのうえでみずみずしい透明感を追求しています。気泡によって遠近感が生まれ、そこに空間を感じることができます。水のように透明で奥行きのある空間がアクセサリーの美しさに繋がります。

先入観にとらわれないこと

今にも滴り落ちそうな雫があしらわれた、アシンメトリーなデザイン。「あずきの露ピアス（イヤリング)」

佐藤

また、アクセサリーのデザイン・制作をするにあたって、普段から色々なものを先入観なく見るということをずっと大切にしています。現在展開中のアクセサリーもさまざまな素材やテーマがありますが、すべて「きれいだな」と単純に感じたものです。それがアクセサリー用かどうか、ということは重要ではありません。アクセサリー用のパーツを制作の道具として使うこともあります。古くなった電球を母にペンダントにしてもらったり、食器や歯ブラシを携帯電話のストラップにしたりしていた頃から大人になっても変わらない感覚です。「これは◯◯用」という考えを手離すと、わたしたちの周りには美しくて素敵で楽しいものやことがとてもたくさん溢れています。アクセサリーは、それを自由に楽しめる世界だと思っています。

レジンの中に虹がふんわりと浮かんだデザイン。角度によって見え方が変わります。
「ポタリ、わたしの虹ピアス（イヤリング）」

佐藤

今年3月にブランドリニューアルをしてからは「“せっかく”なしで取り組む」ということも大事にしています。
「せっかくここまでやったから…」「せっかく用意したから…」「せっかくつくったから…」など、つい言いたくなる個人的な“せっかく”を制作に影響させることなく、良いものをつくることを意識しています。(「せっかくだからいただきましょ」「せっかくだから寄ってって」そんな“せっかく”は愛だと思います！)

新作は、kokemusu-コケムス- ポタリ、苔ピアス（イヤリング）明色

佐藤

水滴が肌の上に落ちたような「ポタリ、」のデザインは、ご好評いただいているお米やあずきのシリーズなどですでにあるものなのですが、“水滴の上に苔が生えたらおもしろいな”と思い立ち、苔をテーマにした「kokemusu（コケムス）」というシリーズの新作として制作しました。現実には絶対に起こらない現象を形にして身につけられる、アクセサリーならではの作品です。

佐藤

昔から大好きだった苔をアクセサリーにしたい！と思い、作品が生まれる前にシリーズ名を先行して考えていた「kokemusu」。とりかかってみると、さて何を使ってどう苔をつくるか…と悩みました。

佐藤

レジンと刺繍糸を使うという結論にたどり着くまで、およそ1ヶ月。試作の山の写真は思い出にとっています。素材として世の中にはフェイクモス・ドライモスなどありますが、"苔"と聞いて頭に浮かぶ複雑な色味や湿った質感などのイメージをそのまま形にしたくて今の素材と制作方法に辿り着きました。

佐藤

土台となる水滴部分はフリーハンド成形。表面張力を感じられるようなぷっくり感を大切につくっています。レジンが滴り落ちないように・でも自然な乗り方になるように、手でゆっくりまわしながら硬化させます。吹きガラスのようなイメージです。

最後に、記事を読んでくださったみなさんに向けてメッセージをいただきました。

お米の美しさをそのまま閉じ込めた、小ぶりで上品なピアス。「お米の露ピアス（イヤリング）」

佐藤

ここまで読んで下さりありがとうございます。
このような記事に取り上げていただき、minneさんにもご覧下さったみなさんにも感謝しております。ありがとうございます！「わたしたちのまわりには素敵なものがいっぱい」。その思いと素直な心を大切に、これからも制作に取り組んで参ります。みなさんもぜひ自由に見て、選んで、つけて、アクセサリーの世界を楽しんで下さい。

・kokemusu-コケムス- ポタリ、苔ピアス（イヤリング）明色
https://minne.com/items/41324151

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文 / 堀田恵里香