インタビュー

刺繍作家orizaさんの、かたちでみせるものづくり。「ブローチは脇役じゃなくて、主役になれる」

独特な配色と抽象的なかたちで表現された手刺繍作品を数多く制作するoriza(オリザ)さん。作家活動のほか、さまざまな方と交流をもてる編集の仕事をされているそう。幼い頃から身近にあったものづくり。作家活動をはじめたきっかけと、仕事と両立しながら続けるこれからのものづくりについてお伺いしました。

独特な配色と抽象的なかたちで表現された手刺繍作品を数多く制作するoriza(オリザ)さん。作家活動のほか、さまざまな方と交流をもてる編集の仕事をされているそう。幼い頃から身近にあったものづくり。作家活動をはじめたきっかけと、仕事と両立しながら続けるこれからのものづくりについてお伺いしました。

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デザインに囲まれた環境で、ものづくり

orizaさんは普段、どんなペースでものづくりをされているのですか?

oriza 平日はデザインに関する情報サイトで編集の仕事をしています。美術館の取材や、クリエイターの方にお会いしてお話を聞いたりと、日々WEBコンテンツの企画を考える仕事をしています。

平日だと、あまり作品づくりの時間がとれないのですが、それでも帰宅後1時間くらいは作業の時間にあてていますが、やはり土日にまとめて作業をすることが多いですね。

ひとつの作品ができるのにどれくらいかかるのですか?

oriza ひとつひとつ制作時間は違いますけど、あまり複雑なものでなければ2時間くらいでつくり上げています。配色の多いものは、3時間くらいでしょうか。ものづくりをはじめたころはやっぱり、もっと時間がかかっていたし途中で失敗しちゃったり…。サクサクつくれるようになったのは割と最近かもしれません。

作家活動をはじめてどれくらいになるのですか?

oriza つくったものを売るという意味では、5年ほど経ちました。昨年は、minneさんとパルコさん共同のイベント「ミエルツアー」に参加させていただきました。作家は、ひとりでの作業が多いと孤独になりがちで、作品に対しても気づけない部分がどうしてもあるなと感じていたのですが、対面販売イベントでは手にとっていただく方の表情や声を直接見たり聞いたりできたので、たくさん収穫がありました。また、作家さん同士でいろいろ情報交換もできて、とてもいい機会をいただきました。


いつも「ものづくり」がそばにあった

刺繍をはじめようと思ったきっかけはありますか?

oriza 大学は美大に進学して、金属工芸を学んでいました。在学中は、工房やいろんな機材や材料があって、表現したいものに対してなんでもチャレンジできたのですが、卒業したあとは機材があまり家に揃ってないので、少しモチベーションが下がってしまい…。ものづくりは常にしたかったので、家でもできることはないかなっていろいろ考えていたところ、刺繍ならできる!っていう思いからはじめてみたんです。

手をつかって「つくる」ことが好きだったんですね。

oriza そうですね。もちろん絵を描いたりすることも好きでしたけど、手を使ってなにかができあがっていく工程が楽しいなって思っていましたね。

大学時代がものづくりのスタートなんですか?

oriza はじめてのものづくり、でいうともっと幼い頃かもしれません。小さい頃、ミニチュアのドールハウスが好きで、そこに並べる小さなケーキなども自分でつくってみたり…。幼稚園時代から中学時代まで姉と地元の絵画教室に通っていて、そこでは季節ごとにいろんな工作課題が出てくるので、楽しみながら、いろんなものをつくっていた記憶があります。

ひなまつりの人形やクリスマスリースをつくったり、紙工作をしたり。週に一回の教室がすごく楽しみでしたね。

それと、私の祖母は手芸がとても上手で、隣に座って教わりながら真似っこしたりしていました。身近にこういった「ものづくり」があったことで、いつしか漠然と、ものづくりの道に進みたいなと思っていたのかもしれません。


「ありそうでないもの」をつくりたい

自身の作家活動に影響を受けた作品などありますか?

oriza 手芸以外でいうと、樹脂を使ってブローチなどを制作されている、中川清美さんの作品が好きで愛用していますね。ワークショップにも参加したことがあります。作品はもちろんですが、ものづくりへの姿勢そのものに対しても素敵だなって感じていて、その影響で大学時代、刺繍のほかにも樹脂でつくるアクセサリーにチャレンジしていた時期もありました。

また、写真集を眺めることも好きで、光の具合や色の組み合わせを参考にしたり。線描のイラスト集などからは、手描きならではのやさしい表情を自身の作品にも取り入れたいなって眺めていることがあります。

制作においての「こだわり」や、作品づくりにおいて「自分らしい」と感じる部分はありますか?

oriza 立体だけど平面っぽかったり、少ない色づかいだけど配色が可愛かったりと、いい意味で違和感をもつ作品が自分の好みなんです。「ありそうでない」ような、シンプルで抽象的なもの。だけど、普段の生活に溶け込みやすいような「普通」なもの。そんなブローチをつくりたいなと思っています。

ブローチって具体的なモチーフのものが多いので、なかなか普段使いのバッグや洋服にも合わせやすいものってないなあと日々感じることがあって。ディティールが細かいもの、派手で主張が強いモチーフでなくても、ブローチは主役になれるはず、と私は思っていて、白いシャツにポンとのってるだけでふしぎと主役になる、そんなブローチが素敵だなって思うんです。そういった作品を、手刺繍でしか伝わらないあたたかさや、手刺繍だからこそ伝わるぬくもりで表現していきたいなって。


刺激をうけながら続ける、ものづくり

作家をしていてよかったことはありますか?

oriza 自分がつくる作品を、家族など身近な人だけでなく、知らない人にも知ってもらえることがうれしくて楽しいです。またminneさんでは、作品を送ったあとにメッセージをいただいたり、中には手書きのお手紙を送っていただいたりすることもあります。販売するだけで終わりじゃなく、そのあとにもなにかあるって、制作側からすると楽しみでやる気につながります。

今後の活動目標や課題をおしえてください。

oriza 仕事と作家活動をうまく両立しながら続けていきたいなと思っています。両立は大変なときもありますが、いいこともたくさんあって、私の場合、編集の仕事で取材によってはさまざまな作家さんにお会いできてお話をきく機会をもらえるので、ものの考え方や取り組む姿勢などお聞きすることで、自身の作家活動にも役立てたいなって思っているんです。

また、イベントにももっと参加したいですし、違う素材をつかった作品やイラストの制作にも今後は積極的に取り組んでみたいです。作家一本でやられている方って本当にかっこいいです。でも一方で、いま自分の作家活動は両立しているからこそできている、と思うことがあります。いろんな人と会える仕事をしているからこそ、刺激をうけたり、それが作品に活かせたりできているのかなって、そう思うんです。


プロフィール

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oriza(オリザ)さん

刺繍作家。独特な配色と抽象的なかたちで表現された手刺繍作品を数多く制作する。

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