128名の作家さんといっしょにつくった、minneのクリスマスCM。今回は、テーマソングを口ずさむ表情がなんとも魅力的な、佐々木希さんのイラストを書いてくださった作家・土屋みよさんにお話を伺ってきました。絵を描くとき思い出すのはいつも、友人の笑顔なんだといいます。
口ずさみたくなる印象的なシーン
土屋さんが担当してくださったのは、CMのテーマソング「世界にひとつだけの贈りもの」が大いに盛り上がる後半部分。歌にあわせ、キュートに動くヒロインの表情を水彩イラストで描いてくださいました。思わずいっしょに口ずさみたくなる印象的なシーンです。
なめらかな動きは、裏側の手間のなせる技。口と目のパーツをすこしずつ動くように書き足して、用意してくださったデータの枚数は、なんと合計45枚です。
土屋みよ
いつもどおり下書きをして、油性ペンで大切なところだけなぞって、水彩で色付けをしていくという工程ですすめました。いつもの静止画とちがい「動く」というのが本当にたのしみで、お話をいただいてとてもうれしかったですよ。まさか、こんなにしっかり映していただけると思わなかったのでびっくりですね。もちろん佐々木さんをイメージして制作しましたが「似顔絵」でなくても良い、とのことだったので。表情はイメージをふくらませていきました。
土屋さんはイベントで似顔絵ペイントを手がけられることも多いですが、普段作品の中で描く女性には特定のモデルはいないそう。「いつも友だちの笑顔とか、いいなって思ったクセを思い出しながら描いてるんです」。
作業されているご自宅で、じっくりお話を伺いました。
誰もが「使ったことのある」道具で
土屋さんが使う仕事道具。誰もが見覚えのある、使い覚えのあるアイテムが並んでいます。
土屋みよ
なつかしい!ってよく言われますね(笑)小学校のときに使っていたような同じものを、今もずっと使っています。
土屋みよ
線を描くのも、マッキーですから。この「マッキーケア」っていう7mmのものをずっと愛用しています。本当に描きやすくてお気に入りで。
土屋みよ
描きやすさでいうと、実はパレットはあまり洗わないほうで。ある程度、色ができあがってるほうが描きやすい、というのもありますし、そのまま使うと彩度が高すぎてしまうこともあって、このぐらい汚れている方が使いやすくていいんです。きっと大学の先生なんかに見られたら叱られちゃいますけど(笑)
イラストを描くのは恥ずかしかった
小学生のころから、「人の課題も手伝ってあげるほど」美術は得意だったという土屋さん。
土屋みよ
工作とか技術はすごく苦手なんですよ(笑)。ただ絵だけは、ずっと大好きで。そのまま美大に進学したのも、そういう流れでしたね。
しかし、今のようにイラストを描くことはなかったといいます。
土屋みよ
大学では版画学科だったんですよ。「銅版画」をやっていて。今とはまったくちがうテイストですよね。そのころ、実はイラストはあまり描けなくて。なんかちょっと、恥ずかしかったんです(笑)。
イラストに対して照れがあったんですか?
土屋みよ
まさに、そうですね。照れくさいっていう感じですかね。やっぱり美大の授業では、「芸術」を学ぶので。「芸術」って、自分と向き合うもので、理解してくれるひとが少なくて当たり前、みたいなところもあるじゃないですか。でも「イラスト」となると、世の中の誰にでも通じるというか。「似顔絵」だとなおさら、似てる・似てないということもありますし。なので、そのころは「ちょっとオシャレっぽいもの描いてみるわ」なんて、わざと宣言してからイラストを描いてましたね。そうじゃないとなんだか描けなくて(笑)。
「minne」との出会い
土屋みよ
イベントに出展して、「minne」のスタッフの方にお声がけいただいたのが、今の活動のはじまりのような出来事でしたね。そのときは、自分のイラストを描いたスマホケースをすこし販売していました。作品を見て、「minneというサービスの者なんですが」「minneで出品しませんか?」とお声がけいただいて。当時まだ大学生でしたが、やってみようかな、と思って。
スタッフからのお声がけに応えていただいたんですね。
土屋みよ
とてもありがたいきっかけでした。そこから、特集に作品を載せていただいたりしたことで、たくさん注文をいただけるようになって、本格的に活動を開始したという感じなので。今では作品の販売の他に、イベントや企業の案件に携わらせていただくようなお仕事も多くなりましたね。
忙しさもたのしみながら
とてもお忙しいですよね。
土屋みよ
たくさんお仕事をさせていただくようになりましたが、どれもすごく楽しめているので、大丈夫ですね。疲れたら、散歩したり、趣味のサックスをカラオケで吹いたり。いろいろ、たのしみながら続けるようにしています。
筆の速さは、なにか秘密があるんですか?
土屋みよ
似顔絵イベントでだいぶ鍛えられたというのはあると思いますね。でも、基本的には、私の「面倒くさがりな性格」が理由なんだと思います(笑)私、とっても面倒くさがりで、細かいことよりも、はやく全体像が見たい!って焦ってしまうタイプなんですよね。「全体がこういう感じ」というのが、なかなか見えないと落ち着かなくて。「下絵が雑」とも言えますよね(笑)。
思い出すのは、身近な人の笑顔
土屋さんが絵を描く様子は、こちらも心踊るほどたのしそうです。
とってもスピーディーに、たのしそうに、描かれるのが印象的です。
土屋みよ
本当ですか、ありがとうございます(笑)描いてるときは、やっぱりたのしいですね。特に色を載せてるときが本当にたのしくて。色付けで印象ががらりと変わってしまうので、いつもちょっとドキドキしているんですが。最初はアクリル絵の具で描いてたんですけど、水彩がにじむのがおもしろいなと、思うようになってきました。思いどおりにいっても、意外な風合いになっても、そこがおもしろいので。
女性を描かれることが多いですが、具体的なモデルがいたりしますか?
土屋みよ
実は外見のモデルはいないんですよ。「こんな子がいたらな」といった感じで描いてますが、表情はよく友だちを思い浮かべて描いてます。
おひとりですか?
土屋みよ
いえいえ、いろんな友だちですね。「あの子のあのときの表情よかったな」とか、「あの子、こういう笑い方するよな」とか。そういうのを思い出しながら描いてます。だから、友だちとたのしく話すのも、作品づくりに欠かせないことかもしれませんね。
「身近な作家」でいるために
完成したCMを見て、土屋さんは思わず叫んでしまったとか。
土屋みよ
まずは自分の作品が動いてることの感動と、何枚撮ったんだろう!!という手間も感じてしまって。思わず「いやーーすごい!!」と叫んでしまいました(笑)本当に良い経験になりました。
作品づくりでいちばんうれしいことは、なんでしょう。
土屋みよ
特にminneでは、「結婚式」や「お誕生日のプレゼント」といった、人生の節目にご注文いただけることが多くて。それがすごくうれしいですね。この前は、男性から「記念なので」とプレゼントのご注文をいただいたり、「結婚10周年の記念に」と家族の似顔絵ボードをご依頼いただいたり。みなさんのたいせつな日に、私の作品を添えていただけるというのが、すごくうれしいんです。
先日のイベントでは、三重からファンの方がいらしていましたね。
土屋みよ
そうなんですよ。似顔絵モデルとして当選された方が、三重にお住まいの方で。「いい思い出になりました」と言ってくださったのが、私にとってもいい思い出になりました。
土屋みよ
いただくお仕事の幅はたくさん広がっていますが、似顔絵を描かせていただく機会が減ったり、作品をお届けする機会が少なくなってしまうのは、どうしても避けたくて。すぐにわたしの作品と触れていただけるような「手の届く作家」でありたいので。SNSの交流も本当にたのしいですし、ファンでいてくださる方との距離はいつも「近く」がいいですね。これからも、そういう気持ちで活動を頑張りたいと思います。
土屋みよさん、素敵な作品を本当にありがとうございました!